興味【10/3修正】
お金がない訳じゃないならなんで、修理に出すのを渋っていたのかの話になるのだけど、預けて即日出来るとは限らないから避けてきたらしい。
んで、ここは買い換えしたくなるくらい良い武器も並んでいるんだそうな。
まあ、安くはないそうだけどね。
今三人が使ってるのは、アランのスミス家お抱えの鍛冶屋の品だそうで、それらと比べても遜色ない仕上がりらしく、鉄や鋼ではほぼ最高の仕上がり具合らしい。
因みに、お抱えの人はミスリルの方が扱いが得意だとアランが宣ったが、腕のいいの判断基準が余計解らなくなるからやめてくれ。
この辺りで扱う金属ならこのドワ子さんレベルが最高の腕前で、お抱えの人が腕が更に上って事なんだろうけどさ。
「刃物の違いなんて、ホントにわかんないから勘弁して」
いや、波紋が細かいとか見た目で解ることはいいけど、すべらかな感触とか重心なんて違いわからんて。
「残念だな、この違いがわかるようになると、見た目ではわかり辛い耐久力もわかるんだが」
武器の中には、思わず溜め息が漏れるほど見事な刀身を持ちながら、実戦では数合で使い物にならなくなる武器が存在するんだそうだ。
見た目に騙され、刀身の過剰装飾にこだわりすぎて、脆くなった武器を自慢げに持ち歩く騎士様なんかもよくいるらしい。
バラの波紋や星の波紋とかあるみたいで一度みてみたいと思った。
話をしていたらドワ子さんが
「ウチにあるよ?」と倉庫に消えていった。
鍛冶屋なら誰もが一度は波紋作りにハマるらしく昔作ったのがあるのだそうだ。
「基本的に、完成品に薄い針金を叩いて馴染ませてくと出来るのよ」
星や無数の花びらが散らされた刀身やウロコのような波紋のナイフがカウンターに並んた。
一目で凄いのは解るけど、こんなの持ち歩くのか?
「混じりもので鉄の色を変える事も出来るけど、綺麗なものほど武器としては脆くなるものなのよ」
同じものを均一に叩くのが基本らしく、ミスリルと鋼を鍛造段階で合わせる事ができないんだって。
鍛造で接合できても磨耗すると刃こぼれ以外でバラけるってなんだ?
ミスリルより鋼の方が切れ味は鋭くなるらしいし、ミスリル要らなく考えちゃうよ。
でも、ミスリルやオリハルコンなどの特殊魔法鉱物は、魔法への適応力が最大の売りなんだそうだ。
ミスリルなら魔法付加の幅の広さで、オリハルコンなら魔法無効能力。
ミスリルが鉄や鋼より軽く頑丈なのは《重量軽減》や《強度上昇》などが刀身に刻まれているからだと言う。
ストック三個全部《重量軽減》にした大剣、刃渡り二メートル幅一メートルなのに、箒より軽いとか。
ただ見た目派手なのに攻撃も軽くなる弊害があるらしいけどな。
その付加も、鍛冶師の腕次第で付加できる魔法の数が増え、店売りの普及品で最低二個。
魔法剣と呼ばれる物は少なくとも三個からで、聖剣なんかは十を超えるのだと教えてくれた。
英雄の攻撃が見た目にも派手になるのは、そうした付加があるからこそなんだって。
でも、鍛冶師の腕は鋼で決まるらしいから、二人が絶賛するドワ子さんは、出会える中では最高らしいです。
なんでそんな人が、暇つぶしにクナイなんか作るのだろう。
やべ、よけい解らなくなってきた。
「大丈夫。俺にも理解できないから」
悩んでいたらライズに肩を叩かれた。
「それより昨日ナイフで捌いてたから、包丁買わない?」
「あ、包丁欲しい」
ウサギは投擲ナイフで捌けたけど、やっぱりジャガイモの皮むきは包丁じゃないと大変だよ。
「あ、これ使い易そう」
包丁の棚に飾られた、幅広い刃渡り二十センチないくらいの包丁、菜切りはもちろん肉や魚も切れるという万能包丁を手に取ってみる。
持ち手はイチョウが使われ、彫金など余計な装飾がなかった。
「コレいいねマスターが使ってたのと似てるし」
「え~、もっと変わったの買ってかない?」
ライズが幅三センチ長さ一メートルの包丁を指差していたが、そんなの使えないし、まな板の上ならこれで十分だよ。
「使えないの買ってもしょうがないじゃない?」
「でも、格好良くない?」
いや、それ包丁だから格好いいもクソもなくね?
武器ならあっちにあるんだもん包丁じゃ完全に用途が違うよ。
「えー、包丁で戦う冒険者も向こうには居たんだけどな」
「そんな人たちと一緒のグループ枠にさせないで?」
包丁を武器にするのは山姥と、旦那にキレたオバチャンとかしかいないでしょ?
わざわざオレを特殊方面の枠付けにしようとしないでください。
「仕方ないなぁ、とりあえずその包丁は追加ね」
「まいど、」
まっとうな包丁を手に入れた。
アランとマイトは、ドワ子さんが研ぎだけで大丈夫だと言うので、買い換えはせず研ぎに出して明日の朝、三人で引き取りに来るそうだ。
オレ留守番。
「一通り買い物終わったけど、どうしようか?」
「帰るか、外に要る必要はないだろう」
「う~ん、もう少し街を見て歩かないか」
「…みて歩く程の物がないのにか?」
マイトとアランの二人が観光か否か思案している。
田舎の街だから、観光名所もないし大道芸人や劇場や舞台もいないから観るものもないよね。
「サランは特にないか?」
「ないよ?」
マイトに聞かれて迷わず即答。いや、本当に用事ないからね。
「マイトがなんか行きたいなら見てきてかまわないよ。サランは帰るよね?」
「うん、寄りたい所もないから帰るよ?」
「都会の女の子なら、どこかしら寄り道したがるものなのだがな。サランは楽でいいな」
アランにポンポンと頭を叩かれる。
「そんな意識変化あっても困るし、今んとこ成るつもりもないよ」
「王都の女性パーティーと同行した時は、待ち時間が辛かったからな」
「…買い物する訳でもないのに、よく店の中で騒がしく話ができるよな」
「アクセサリー一つ手に取るだけで話題が膨らむのはなんだったんだろうな」
なるほどと思う所はあるけど、思い出話ししながら店頭で物色している女の子達を眺めても、仕方ないんだからね。
オレの周りも、わりかし美形なのばかりだから人目も集まってるから早く帰りたいよ。
「どっか寄るなら先に帰ってていい?」
今夜から夕飯は自宅でシチューだから支度しとかないとならないんだよね。
寸胴鍋一杯だと、ホワイトソースの量の調整に時間かかるだろうし。
「治安に関しては悪くないみたいだが、サランを一人にするのもいささか不安だ。
マイトも出掛けていたいなら暗くなる前に帰宅しろ」
「いや、一人じゃつまんないし僕も帰るよ」
「そうか、なら帰るぞ」
「「りょ」」
「はーい」
マイトが“そこんとこ友達甲斐がないんだよな”とかブツブツ言ってるけど、用がないのなら帰った方が無難だよ。
けどさ、三人に声をかけたそうにしてる女の子とかもわりと居たみたいだから、一人になっても一人で歩く事にはならないと思うよ?
遊びに行くなら街に詳しい女の子達の方がいいだろうし、マイトに教えてやろ。
「アソコに、マイトに話かけたそうな女の子達がいるけど?」
「…勘弁して、僕はもっとサバサバした人でないと無理だから」
はい、チラリともしないで“無理”をいただきました。
なにがそんなに嫌なんだろか。
「サランも、目立つから一人で出掛ける時は気をつけた方がいいよ」
「やたら用事なんかないから出かけないよ」
三人と一緒だと埋もれて見えないものと考えていたら、通りすがりの女の子に舌打ちされた。ビッチ言われましたよ!?
そおだね。考え方によっちゃコレも逆ハーレムの女にしか見えないのかもね。
知らんうちに恨み買ったりするかも知れないから気をつけよ。
「こら、僕達から離れるなって」
「しっかり歩け」
「…今更気にしない方がいいよ」
離れて歩こうとしたら、マイトとアランに怒られて、ライズにはポフポフと肩を叩かれて同情された。
ライズは気が付いてたなら教えといてよ。