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ある夜に見た夢

作者: よもや

気がつくと私は夢の中にいた。

普段夢を見るとき、私はそれが「夢だ」ということに滅多に気が付かないけれど、その日ばかりは何故か自分が夢の中にいることが解ったような気がした。

夢の中での私は淡い黄色のワンピースの裾を翻し、風に吹かれていた。一昨日染め直したばかりの髪が栗色に広がっていた。ふと足下に目をやると、音もない川のせせらぎが、むき出しにされた私の指の間を通り抜けると、微かに赤らんだくるぶしをくすぐって、後方へと流れて行った。私の立っている透明な大地を透かした遥か下方では、おおきな桃色の魚が、ゆったりと、それでいて確実にうごめいているのが見えた。


下まで何米位あるんだろう。私は不意に透明な吊り橋を渡るような危うさを覚えた。それでも足下のせせらぎは、美しい氷の表面をなぞるように流れるので、そんな不安もいつしか温かさの中に忘れてしまった。

左右に生い茂る草花は、私の背タケを優にこえていて、かしげた葉の先にはちいさな露が丸く光っていた。静かにそれに口づけをすると、流れ込んできた柔らかな気持ちに、私の胸はすぐにいっぱいになった。まだ爽やかなままの喉の奥に、キラキラと光る雫が触れるのを感じた。


遠く爪先の向く方に、何か建物のような影を見た。うすぼんやりと揺れてしまってはいるけれど、私には洋館のように見えた。

そうか、あれは「朝」だ。おもむろにそう思った私は「朝」に向かって透明な流れを遡って歩き始めた。不思議と苦にはならなかった。むしろ透明なせせらぎが細かなしぶきとなってはじけ、私の足下を飾っているかのようにすら思えた。

あそこに辿り着く頃、私はきっと目覚める。

初投稿です。

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