~季節外れの冬偏~ 上
初めまして国士無双です。初投稿で至らないところもありますが、頑張って腕を上げるので応援よろしくお願いします。
「絶対これは異変だって!」
不意に声が聞こえた。その声の主は赤髪で身長は私より低い。
―――――そう、幼馴染みの魔法使いの声だ。
何か面白い話を持ってきたようだけど、さほど興味も無かったので私はそれに対して適当に返した。
「へぇ、そうなの」
さすがに演技が下手すぎたのだろう。向こうは怒って
「お前は異変を解決するのが仕事じゃないのかよ!」
と怒鳴り付けて言った。
確かにそうだ。私はこの夢幻神社の巫女であり、人々を妖怪から守る専門家なのだ。そう、建前はね。実際は神社でのんびりお茶をすすったり、昼寝をするだけで妖怪退治はほとんどしない。というより私自身妖怪退治なんて面倒なことやりたくないのだ。じゃあ何故やっているのか――――
私の今の名前は小野寺薫だ。しかし今は違う。変わったのはかなり昔だ。
―――幼少の頃
私がまだ神北 薫だった頃
両親を亡くした私は小野寺家へ引き取られた。そこで巫女としてのしきたりを学んだのだ。
しかしある日
私はまたしても家族を失う羽目になったのだ。母は病に床を伏せ、父は妖怪に殺された私はこの神社で一人暮らしを決意した.
そして現在に至るのだが、赤髪の魔法使いとの馴れ初め話は別の機会にしよう。
「おい!聞いてんのか!?」
私はその声を聞いて我に返った。我に返ったと言っても実際はほんの一瞬だけだし、そう考えたら、それで怒るあいつは短気でしかたがない奴だなと思った。
ちなみに彼女は八代魔那。一応私の幼馴染みだ。今日はよってたかって私に突っ掛かってくる。それもそうだ。暦上は初夏を迎えているのに冬の寒さだし、里の人々は精神に異常をきたしている。これは誰の目にもあきらかだろう。しかし、私は面倒だ。だから行きたくない。
―――八代魔那はそんなことを考えた私を察してか、またもや口を開く。
「もしかして、今回も面倒だの何だの言って行かないつもりなんだろ!」
「そんなことないわよ」
と私は言い返した。さすがにあそこまで言われると腹が立っても仕方がない。
「さあ、どうだかね。何せ前例があるからね。たとえば1年前のあのときだっ―――」
「と、とにかく私は行かないわよ!行くならあんたが――――」
そのときだった、襖を開ける音がしたのは。
そこに立っていたのは女死神の不知火 渚であった。
「よう!お前さんたち!元気がいいねぇ」
「っていうかあんた仕事サボっていいわけ!?」
「今は休憩してるんだ」
ウソつけ。死神の仕事は詳しくは知らないけど、確か、幽霊を閻魔の下へ連れていく、だったはず。そんな役目を担っている者が居なくなったら幽霊が滞って、地獄側も困るはず。・・・まあ今は気にしなくれもいいか。それよりも―――――――――― 「何しに来たの?」
「ちょっと休憩がてら薫と将棋でもさそうかなと思ってさ」
「あんたの場合、年がら年中さぼってるでしょ」
「私もそう思うぜ」
「2人心外だなぁ」
「だって・・・ねぇ?」
「だな。」
「お前さんたち2人でもったいぶって気持ち悪いな」
「言わせてもらうけどな。人里でも目撃者がいるんだぞ?」
「ははは、参ったな」
「ところでお前さんたち、何か揉めていたけど、どうかしたのか?」
「あっ、そうだった。すっかり忘れてたぜ。いいか薫、これは絶対異変だからな」
そう言い残し、魔那は箒に乗って飛んでいった。
「いやー、速いね。で?おまえさんは行かないのかい?」
「行かないわよ。面倒だし・・・それよりもあんた将棋指しに来たんでしょ?」
「ああ、そうだったな」
「あんた、先手でいいわよ」
「じゃあお言葉に甘えて」
と言い2人は駒を並べた。
魔那は現在、人里に向かっている。
「何なんだよあいつは、まったくもう・・・」
(昔からあいつは異変を解決する身でありながら、それをまともにしないし、異変を解決したら、何故か事の火種である妖怪と仲良くなってしまうし・・・)
「まあ今さらどうでもいいけどな。とりあえず人里へ言って情報収集だな」
―――数分後、魔那は人里の入り口へ着いた。
「よし着いた、っと。まずはあの男の人に聞いてみようかな。おーい、そこのお前さん」
魔那は目の前にいた男の人を呼んだ。
「あっ、君は魔那ちゃんかい?」
「私を知ってるのかい?」
「まあね。というより里のほとんどの人が君を知ってるよ。ところで何の用だい?今、里が異変のせいで大変なことになってるんで忙しいんだ」
「私もそのことでここに来たんだ」
「どういうことだい?」
「この里で異変について詳しい者は誰だ?」
「んー、瓦版屋かな」
「わかった。ありがとう、じゃあな」
「あっ、おいちょっと待て」
「なんだ?」
私は呼び止められた。なので振り返ると、その男の人は私に瓦版屋の特徴を教えてくれた。
「ありがとうな」
「気をつけて行けよな」
「ああ、分かったぜ」
私は箒に乗って目的の人物のいるところに向かうことにした。
この小説を読んでいただきありがとうございます。この「夢幻郷」という小説は1つの話を、上・中・下の3つに分けて投稿してますのでこの小説を読んだ人は中と下を首を長くして待ってください。