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探偵演技  作者: トカゲ
2/7

探偵への道筋2

「だから、女性の部屋には空き巣に入るな、と忠告したじゃないのさ」

「俺が入らなければ、あの女は殺されていた」

 前回のミスから二日後。功刀は『空き巣紳士』・(ざらし)と共に、喫茶店でクダを巻いていた。『空き巣』と『紳士』は矛盾しないのか? と功刀は常々思うが、今の所はその事を尋ねずにいる。

「まぁ、そりゃあ、そうだね。しかし、悪い男もいるもんだね。全く、許しがたい」

 曝は、新聞を片手に憤慨している。見出しは、こうだ。『連続婦女暴行殺人鬼逮捕』。それこそ正に、功刀が二日前に遭遇した中年男だった。功刀がハンガーで吊るそうとした男、でもある。結果的には、無理だった訳だが。

「連続で、婦女暴行で、殺人なんだから。酷いよね。これ以上無い、って感じ。こういう奴が、犯罪者の品位を落としてるんだ」

「犯罪者に品位もクソもない」

 功刀の一言を、曝は無視する。

「しかし、お手柄だったねぇ。どう? 感謝状とか、貰った?」

「感謝状どころか、あの場から逃げ出すのでやっとだったよ」



 探偵。

 功刀は鍵の掛かった部屋に侵入した事に、そう説明付けた。もちろん、大嘘なのだが、言い出したからには途中で止める訳にもいかず、架空の探偵事務所を作り、架空の依頼者を作り、嘘に嘘を塗り固める事にした。

 我ながら強引で、苦し紛れだ。とは思いながらも、他に手が無かった。

「この男の動向を見張っていて欲しいと、ある人物から頼まれてね」

 言いながら、ベッドの下でのびている中年男を踏みつける。

「ある……人物?」

「探偵には守秘義務というものがある。依頼人の名を明かす事は出来ない」

 と、本で読んだ気がする。「とはいえ、踏み込むタイミングが遅れた事には謝罪する。申し訳なかった」

「あ、い、いえ」

 女性は納得した、と言うよりは、困惑している様子だった。それならそれで好都合だ、と功刀は思う。警察が来る前に逃げなくてはならない。

「それでは、貴方も何かご依頼があれば、是非にも我が功刀探偵事務所に」

 最後の一言は、余計だったかもしれない。

 なにはともあれ、功刀はその場を脱する事には成功した。



「探偵かぁ」

 功刀の話を聞いた曝は感心している様だった。「よくもまぁ、って感じ」

「他に手が無かった」

「っていうかさ。探偵って、実在するの?」

「サンタやメイドよりは実在する可能性は高い」

「探偵もメイドも見た事無いけど、サンタなら見た事あるよ」

「それは多分、お父さんだ」

「うんにゃ、つい最近、アーケード街でさ。真夏だってのに、サンタが居たんだよ、あれは多分本物だね。捕まってたけど」

 よくもまぁ、そんな下手な嘘をべらべら並べられるものだ、と功刀は半ば呆れながら、感心もしていた。


「――探偵さん!」

 そう声を掛けられたのは、コーヒーも飲み終え、話す事も無くなり、そろそろ出て行こうか、と席を立ちかけた時だ。

 始めは、誰の事を呼んでいるのか、全く判らなかった。探偵がいるのか、と辺りを探ってしまった程だ。探偵というからには、目出し帽に、パイプがさぞ似合う様な人物だろうな、と勝手に想像する。

「探偵さん。こんな所で会えるなんて」

「え?」

 と、功刀は声を上げる。それから、後ろを見ると、そこには二日前に出会った女性が立っていた。

「貴方は……」

 女性は、丁寧に頭を下げた。反射的に、功刀も頭を下げる。

「あの……あの時は、本当にごめんなさい。私、怖くて」

 二日前に会った人物と、本当に同一人物なのかが疑わしくなるほど、しおらしい態度を見せる。どうやら、探偵の話を本気で信じてしまったらしく、その眼にはもう怪訝の色は浮かんでいなかった。むしろ、ヒーローを見る子供の様に眩しい。

 功刀は偶然の再会に困惑しながらも、「ああ」と短く首肯した。「酷い目にあったな」

「探偵さんがいきなり逃げ出すから、警察の方に説明するのも大変でした」

 そう言う彼女は、こちらを非難する様子でもない。

「だけど、探偵さんにも事情があったんですよね」

 繰り返される『探偵』という陳腐な響きが、こそばゆかった。が、今更否定する訳にもいかず、探偵のフリを続ける。

「そうだな。探偵というのは、様々な事情がある」

 探偵のなんたるかも判らないが、そう言う他無い。いかにも怪しい返事だったが、彼女は疑う事もなかった。

「とにかく、お礼が言いたくて」

「礼は要らない」

 功刀は淡白に答える。「あれが俺の仕事だった」そう言う事にしておく。だから、勘弁してくれ。と、正直に言うと、そんな気分だった。探偵だなんて、馬鹿げている。

 そもそも、『探偵』と『泥棒』は、敵対関係に無いか? とそんな事を思った。


 ジャンルが「推理」になりました。

 「探偵」と銘打っているのにも関わらず、「推理」じゃないというのが、書いている内に違和感になってきましたのがその理由です。お騒がせしました。


 さて、新しく「カテゴリ」機能が付いた様ですが、中々曲者ですね。思わず「感動」とか入れちゃいましたが、大丈夫なのか? とか思っています。

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