第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・1
第二章の幕開けです。ついに姿を現わす翼を狙う悪魔の正体とは……
第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」
――ぐるぅ……ぺぎゃ、みきゃ……ぐしゅ――
この世のものとは思えない音。奇音。
漂うは濃い血の匂い。むせ返るような……。
――ぐぎゃ……べごっ……ぐぅきゃ、ぎゃべ――
まだ続く。まだ、まだ、まだ。
吹き出るは血、そして闇。
――ぐじゅる……ぶじょ……ごじゅ、ぞじょ――
それは誰も知らない世界の闇。日常の影。
闇は立ち上がった。長身で細身。足元と思われる場所にはどす黒い血溜まり。闇の根源は人形で顔に当たる部分からは血が滴っている。もちろん本人のものではないだろう。
「――――」
その口から紡がれるのは人外の言葉。真咲やシルフィードが発するものとはまた違った響きがある。ゆっくりとした、まるで一度聞いたら忘れられないような心の底にまとわりつくような言葉。
「――――」
言葉はさらに続く。
突然、血溜まりが光を帯びだした。緑色と黄色の中間のような色。黄緑とはまた違う。それも薄っすらとしたものだ。
「――――」
言葉に呼応するようにして光は増す、もしくは減る。人の形をしたものは手を挙げ、オーケストラの指揮者とまではいかないが、リズムを取るように動かした。
「――――――――――――――――――――――!」
紡がれる言葉の調子が激しさを増す。
光は血溜まりを抜け、人影の口元へ吸い込まれる。
一瞬、光の量が爆発的に増えた。
それきりだった。
光はなくなり、人影は消えた。血溜まりだけが残った。