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第四章「紅の堕天使・紫暗の悪魔」・5


 まるでミニチュアのようになった街を見下ろし、シルフィードはその長髪をなびかせるようにして中空にたたずんでいた。その横には翼の姿もある。二人の足元には薄く魔方陣が浮かび上がっていた。

「先ほども説明しましたが、彼が行っているのは『魔的複製体』というものに関する理論の研究だったんです。『魔的複製体』というのは、いわば魔のクローンというそのままの意味です。まぁ、人間ですらコピーが可能な時代ですから、魔という力を使えばそのようなことは造作もないわけですが。ただ何を複製するのか……それによります。そもそも魔と呼ばれるモノを増やしたところで利益を得るのはおそらく腹黒い人間か、悪魔のみでしょう。これは止めなければいけない事実です。

 そこで、なぜ倉本梓は誘拐されたのか……それは『魔的複製体』を作るためなのです」

 普段は無口っぽい印象を受けさせるような態度をとる彼女だが、今回ばかりはやけに饒舌であった。そんなシルフィードの言葉に翼は首を縦に振った。

「そこで魔魂をってことか?」

「そうです。それも覚醒間もない強いものです。これが複製された場合、悪魔は容易に魔力の供給を行うことができます。そしてもし複製された魔魂が普通の人間に吸収された場合、その人間は人外の力を得ます」

 ふと、彼女は自らの契約者の上司であった男が、膨大な魔力に耐え切れず無残な死体になった光景を思い出した。人間があの力を取り込むことは不可能に近い。ただそれを求めてしまう者がいるのも事実だ。

「そんなものが出回ったら、質の悪い麻薬だぜ」

「ええ。それを止めなければ……」

「で……いつまでここにいるつもりだ?」

「もう少しですよ。場所がわかるはず……」

 薄っすらと開かれた目で探るのは、巨大な魔力源。また微かな魔魂の痕跡をたどる。この街で最も濃い魔力の発生源に梓と真咲はいるはずなのだ。

「この街は……やけに魔力が溢れている」

 シルフィードはそんな言葉とともに舌打ちをした。

 膨大すぎる魔力のせいで、対象となっている真咲一人見つけ出すことができない。


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