第四章「紅の堕天使・紫暗の悪魔」・4
「まったく……最近の高校生はどうしてこうも面倒事につき合いたがるんですかね……まぁ……あなたに覚悟があるなら、この件全部とは言いませんが、任せてもかまいませんよ」
「覚悟?」
「ええ、命を賭す覚悟がね」
芝居がかった口調で言い、白河は目を細めた。
「は……何を今更って感じだな。んなモン、とっくにある」
翼の言葉に白河は微苦笑を浮かべた。そして、ゆっくりと口を開く。
「それでは、捜索を分担して行いましょう。そちらにはシルフィードを同行させます。いいですか?」
「別に、かまわないさ」
「それでは交渉成立ってところですね」
差し出された白河の手を翼は握り返した。
「それで、今私たちはあまりよく事情を把握していないのですが、よければ話してもらえませんかね?」
白河は長話になると悟ったのか、縁側に腰かけた。煙草は相変わらず火が点いていない。
「わかった……」
翼は一息つくと、これまでのことを話した。
真咲との会ったこと。彼女の目的。シェイドのこと。そしてミシェルのことも。
話が終わった後も四人の間には沈黙が流れた。
「……ミシェル・ハイドフックですか。厄介なのが出てきましたね」
一ミリも減っていない煙草をぽきりと折ると、懐から取り出した携帯用灰皿に入れる。くしゃくしゃと銀髪をかくと、白河は立ち上がった。
「何者なんだ、ミシェルってのは?」
「まぁ、人間でいうところの全世界指名手配犯といったところですかね。むしろそれでも生易しいかも知れませんし。ともかく、私たちの業界で知らない者はいませんよ」
つまりは有名人ということだろう。
「なるほど……目的は?」
「それはこちらで調べたんですが、魔魂というものはご存知でしょう。それを複製できる技術があるらしく、おそらくそれが目的ではないかと思います。といってもそれはミシェルなり黒幕を捕まえるための口実にすぎませんけどね。要は捕まえられればそれでいいんですよ」
白河は苦笑してみせた。
「魔魂てのが増えるってことは、悪魔が無尽蔵に魔力補給をできるってか?」
「その通り。察しがいいですね。まぁ、魔魂所持者の近くにいるだけでも徐々に補給できるんですが、直接取り込んだ方が何にしても早いわけで」
「なら、さっさと探しに行かないとまずいな……」
翼は話を切り上げると、縁側から腰を上げた。
「どうやって真咲んとこまで行けばいいんだ?」
この章はどうも一回分が長くなってしまいがちですが(汗)ここからラストまで一気にいきたいと思っているので、よろしくお願いします(笑)