第四章「紅の堕天使・紫暗の悪魔」・1
ついに最終章開幕!真咲とミシェルの決着は……?そのとき梓は……?
薄い紫色に染まり始めた街を眼下に眺め、風に乗る。そればかりか風になる。
郊外にあった倉本家から中心地であるビル街まで十分とかからなかった。
微かに残る梓の気配をたどり街の上空まで来たのはいいが、肝心の建物の位置まではわからない。さすがにそう簡単に見つかるようなヘマをする相手とは思えない。
だが、幾重にも重なるかのようにして点在するビルをしらみつぶしに探す時間はない。ただしもう少し近付く必要はあるかも知れない。
「下から見えなきゃいいけどね」
隠蔽効果のある防壁を展開してはいるが、それは人間の目に対する魔術であり、カメラなどの機械的なものには写ってしまうのだ。警備用やお天気カメラなどに写ってニュースにでもなったら問題なので、一応心配しておく。
ビルの谷間を抜ける風を利用し、器用に滑空する。短くなった黒髪が疾風になびいた。
「……?」
微かな違和感。人間より数段優れた五感が違和感の正体を探る。いや、五感以上のものも使い、魔力を感じようとする。
(左……右? いや、両方ってわけね)
カッと目を見開くと、左右に風と表現するには生易しすぎる暴風が生まれる。
〈グゲッ?〉
両側のビル屋上に現れた怪異を容易に屠る。
「所詮、雑魚」
小さく吐き捨てると、怪異のいた屋上に着地する。胴体を両断された怪異はうめき声を上げ、消えていく。
「さて……ここは囮? それとも本命?」
フェンスの向こう、空調機の陰、屋上への入り口……それらから現れる人間とも悪魔ともつかないわからないモノ。
「時間がないのよ……こっちは」
最終章はそれぞれの心境メインになると思いますが、最後までよろしくお願いします!