第三章「独りの騎士・孤独の姫」・21
不機嫌そうな真咲の舌打ちと斬撃の再開は同じタイミングだった。
二重に迫る鎌の刃に二振りの刀。片方を防御できたとしても、瞬き一つ後には違う方向からの刃が迫りくる。
攻防一体とはこのことだろう。むしろ、攻撃こそ最大の防御といった感じか。
はさみのようにもなった鎌は真咲の衣服を裂く。
「それにコレ、使うのは二回目だよ?」
「……っ!」
なるほど……前回はこいつの仕業だったということか。
先日の屋上での戦いを思い出す。一瞬の間にかまいたちにでもあったかのようにボロボロになったのは、この鎌が分裂したからなのだ。
だが……それが何だというのだ?
「二回目?……同じ手が二回も通じると思っているの?」
小さく唸るようなシェイドの声が聞こえた。それに続くようにして、漆黒の刃が空気を裂く。右わき腹を狙った攻撃。
そう判断した途端、左から刃を伸ばし防御。だが弾かれることはない。そのまま続く第二撃も防ぐ。
いくら二つ刃があろうとも、軌道が変わらなければ防ぐのは容易だ。
もちろん防ぐだけではない。逆手に持ち替えていた右手の刃をたった今防いだ二撃目の刃――その根元に突き立てる。
ぴしり……ひび割れるのがはっきりとわかる。しかしそう簡単に死神と称される者の得物が壊れるわけはない。
「はぁっ……」
とどめとばかりに、剣先から魔力を注ぎ込む。
「ちぃっ……」
第二の刃が光とともに四散し、シェイドは思わず顔をかばう。
その隙を見逃す真咲ではない。
詰めた距離を一旦離す。近すぎても決定打は入れることはできない、そう思ったからだ。
案の定、シェイドは刃が砕けるのと同時に防壁を張っていたようだった。微かに彼のまわりが赤紫に発光している。