第三章「独りの騎士・孤独の姫」・20
黒塗りの刃を刀で受け流す。防御手段を弾かれ無防備となった相手の腹に反対側の刀で突く。
シェイドはバックステップで間合いの外に逃れた。真咲の攻撃はかすめてすらいない。
タンッ、と畳を真咲の足の裏が打つ。軽い音ではあったが、踏まれた畳はべこりとへこむ。対して、シェイドは軽く左足を引き、かまえる。完全に真咲の攻撃を受けるつもりだ。
接近後、左右からの斬撃を器用に鎌の刃で弾く。そのたび、火花が散った。ギンギンと硬質な音が耳に響く。まるで鎌の重さを感じさせない動作。
「…………ッ!」
両の刀を交差させての突進。当然のごとく、シェイドは鎌の刃で防いだ。
「やっぱり遅いんじゃない?」
「これで終わりと思って?」
下半身を捻ると、続けてその動きを上半身が追う。ぎゅん、と音でもしそうな捻り。刃も回転し、鎌を上方へ弾く。がら空きになったシェイドの腹部へ、不安定な着地と同時に白刃をきらめかせる。
絶体絶命の瞬間にも関わらず、シェイドは笑みを浮かべた。
弾かれた鎌は彼の手から離れることはなく、上へそれただけだった。だがもちろん防御するには絶対に間に合わない。そう、ただ防御するのであれば……
必殺の刃は次の瞬間にシェイドの腹部寸前で止められていた。止めているのは白刃と対をなす漆黒の刃。
「……くだらない小細工を」
「秘儀って言ってほしいね」
真咲の刃を防いだのは鎌から生える二つ目の刃だった。先ほどまで出ていたものの下に、まるで下あごのようにして生えている。