第三章「独りの騎士・孤独の姫」・17
「何でだよ。何で梓なんだよ」
「……どうやら真咲も気づいてないみたいだけど……彼女からも魔力の反応がある。おそらく、彼女も所持者ってことさ。ただ覚醒が君よりも遅かったから発見が遅れたんだよ。君が僕たちへの協力を断るようなら彼女を連れて行く。……まぁ、翼はどうやら僕たちに非協力的だからさ、もう彼女を連れて行こうかなってわけ」
そう言っているうちにもさらに一歩、シェイドたちは家の中に入って来る。
「随分、いきなりじゃないのか?」
「……しょうがないんだよ。そろそろ僕たちも尻尾が掴まれそうだからさ。それに結果がわかってるなら早くした方がいいだろ? 善は急げってね。だから……」
すっとシェイドは目を細めた。
「退け」
「うっ!」
翼の体が何かに吹き飛ばされ、壁にかけてあった掛け軸に衝突する。すぐ下にあった花瓶が倒れ、中身を畳にぶちまけた。
「くそ……」
人間の体には強すぎる衝撃で意識が暗い闇に引きずり込まれる。
「行くぞ。……上だ。お前たちで確保して来い」
背後にいた手下「その1」に声をかける。
なぜ自らで行かないのか。それは……
「『善は急げ』か……急がば回れって言葉もあるけれど……知ってた?」
シェイドたちのいる位置のちょうど反対側には廊下へと通じる障子があった。爆風でぼろぼろになっていたそれを開け放ち、真咲はシェイドたちを睨む。
その手には二挺の自動拳銃。銃口は寸分も違うことなくシェイドの額に向けられている。
「ここ。通りたいなら私を倒して行きなさい」