第三章「独りの騎士・孤独の姫」・15
衝撃があまりに強すぎて、意識を失っていたらしい。
目の前がゆらゆらと揺らめき、意識が朦朧とする。眉間に力を込め、なんとかしようとは思うが……
「なんともならないってか? いや……」
翼はふらつく足に無理に力を入れ、立ち上がった。
視界は白い靄がかかったようになっている。
と、その中に人影が見えた……ような気がした。彼の足元の少し前。
「って……頭っ!」
倒れていたのはこの組の頭である梓の父親だ。
翼は彼にふらつく足取りで近付くと、しゃがみ込む。
「うぅ……翼君かい?」
彼はうめくような声でそうつぶやいた。額に血がついている。しかもそれは止まっていない。今も頭部にできた裂傷から滴っている。
「はい、大丈夫ですか、頭?」
「は……この程度なら若ぇうちに経験済みってやつよぉ……」
言葉とは裏腹に声が弱くなっている。このままではまずい、そう直感的に思った翼は辺りを見回す。
一体何が起きたのか。それを理解する必要がある。まっさきにそれが考えついた。
「何が……――っ!」
部屋の一辺……縁側へと続く障子は吹き飛び、それがあった場所には見たことのある姿があった。
深い黒髪、光のない黄金の瞳。無限にも見えるその目の奥には、何かを楽しむ子どものような感情が宿っている。
りりーん……
「やぁ、翼」
冷ややかな声。そして、どこかスカした態度。翼に言わせればクソ生意気この上ない。
「……シェイド」
先日対峙したことのある死神に忌々しげに言葉をぶつける。何故ここにいるのか。何をしに来たのか。そんなことは関係ない。ただとげとげしい感情。