第三章「独りの騎士・孤独の姫」・13
「実はね、私、女の子の友達って呼べる人少ないんだ……と言うか友達自体が少ないの。こんな家だから、なんとなく他の子の家族から避けられてね……だから、真咲は私に一番近づいてくれた……そんな、人――いや堕天使だっけ――だったの。だからこれ以上、離れないで……」
と、梓の手が真咲の膝に置かれた彼女の手に重なる。小さな暖かい手。優しい心の持ち主の手。
離れないで……
梓は、本当に心からそう思っていた。
家のことを隠すようになったのは高校になってからだった。中学まで一緒だった生徒が少なくなり、彼女としても気にしていたことがなくなっていた。
けれど……
翼と新明だけは別だった。
同じ中学から出た女友達や事情を知る人たち――自分が勝手にそう思っていただけかもしれないが――は明かに避けるようにしていたのに。
なぜ?
それは今でもわからない。
聞こうと思ったことは一度ではないが、そうしてみたことはない。どうせ翼や和貴はあやふやにしてしまう……
でもきっとそれは、二人が本当に彼女のことを想っているからなのだろう。
「梓……」
「ね?」
哀願するような目。
真咲は、いつも明るく振舞っている彼女もこんな目をするのだ、と思った。
意外といえば、意外だった。
いつも、彼女は覆っていたのだ。自らの本当の顔を。本当は脆く、崩れやすい本心を、笑顔とその明るいと言われる性格で上塗りして。無理して。
真咲は彼女の手をぎゅっと握り返した。
はっとして梓が目を見開いた。