第三章「独りの騎士・孤独の姫」11
翼が出ると、残った二人の間に沈黙が漂った。
「えっと……梓。あなたの家って翼の言ってた通り……」
「ええ、ちょっとした『組』ね。もう古いってお父さんには言ってるんだけど……」
梓は微苦笑してみせた。
再び沈黙……
「……あのさ、真咲……真咲ってその……」
妙にどもった調子になってしまう梓に、真咲は彼女が何を言いたいのかを悟った。
「……翼から聞いた?」
「うん……あの日の夜に、電話があった」
真咲はそこでため息を一つつくと、座り方を崩し、あぐらをかいた。
記憶を消すかどうか訊くときに、彼女の反応が気にはなってはいたのだが。おそらく電話で聞いたとは言っても、梓の求めたことなのだろう。
「そっか……」
髪をかき上げ、観念したような口調で言葉を続けた。
「どこまで聞いた?」
「とりあえず……悪魔ってこと」
「そう。じゃあ、もう少し深く話そうか?」
梓はこくりと頷いた。
「……悪魔ね。私の場合、正しくは堕天使。名前ぐらいはどういう意味かわかるでしょう? 何で堕天使かって言うと、最初のルシファーと同じ、私も『同族殺し』だから」
『同族殺し』という言葉に、真咲は目を細めた。自分でも思い出したくない記憶。咎人として生きる道を選んだ……選ばざるを得なかった過去。仲間を殺したとしても、護りたいものがあった。だが、護れなかった。結果が今ではどうしようもない。
梓は真剣な表情で続く言葉を待っている。
「もともと反逆者であったルシファーの末裔にして、『同族殺し』……それが私なの。天城真咲っていうのは、私がこの世界に来たときの……」
語尾になるにつれ、小さくなっていく声。