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第一章「紅い眼・黒い瞳」・2


 朝のHRが終わり、一時間目の授業が開始するまで真咲は案の定質問攻めにあっていた。リーダーはもちろん新明。真咲を中心に集まっているのは男女問わず、ほぼクラスの全員。

 遠巻きに眺めていた翼もいつの間にか集団に連れてこられていた。

「それで、何部に入るつもり? 出来れば陸上部に――」

「おいおい、バスケ部だろ?」

「何いってんだ。ここは我が弓道部に」

 王道通りの質問だ。そこへ翼を連れて来た新明が割って入る。

「待て待て、真咲ちゃんが困っているだろ? 質問は一人一つまでだ」

 いきなり入って来た新明に「ちゃん」づけで呼ばれた真咲は困ったような笑顔を浮かべている。当然だろう、翼は心の中でつっこんだ。

「何でお前が仕切るんだ」

 翼が冷静にこちらは声に出してつっこむ。

「そうだ。何でだ」

「いつもお前はそうやって」

「それに慣れ慣れしいぞ」

 質問攻めをしていた生徒たちも一斉に新明を非難する。

 普段なら新明の提案に従うのだが、今回は別のようだった。美少女転校生の前だからなのだろうか。

「な、何を言ってるんだ」

「さては天城さんと梓ちゃんで二股かけようとしてるな?」

「ば、ばかな!」

 あわてふためく新明。

「怪しいな」

「手前ェ! 贅沢だぞ。せめておすそわけ……じゃない、そういうことはやめろ」

「そうだ!」

 あっという間に男子の非難の的になった。

「おいおい、翼なんとかしてくれよ」

「やだ。それに梓も怒っているぞ」

 翼が指差した先には一時間目の教科のノートを長く丸めた梓が仁王立ちしている。

「和貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃ」

 普段のかわいげのある表情からは想像できないかのような怒りようだ。

「ふむ。後ろにオーラが見えないこともないな。これはなかなか……」

 慣れた口調で翼が言う。

「な、なんとかしてくれ、翼。ホントに」

「無理だ。前に止めようとして死ぬ思いをしたからな。これも宿命だと思って、殺られて来い」

 とんっと新明の背中を押す。

「あっ……」

 新明と梓の距離、わずか五センチ。

 フォン……!

 空気を切るような音がした。

 ゴッッツ!

 鈍い、木材同士、聞こえ方によっては金属がぶつかるような音。

「――げばらッ!」

 新明の悲鳴。というよりかは衝撃によって意識せずに吐き出された息だろう。

 ずざぁぁぁぁぁ。

 床と新明の擦れる音。これほどにもかというくらいの大きさだった。

「今だ!」

 新明反対派の生徒のかけ声。団結力は普段の何倍に高まっていることだろうか。

「うわっ」

 新明逃走。

「待ちなさい!」

 梓追走。手には丸められたノート。スタートダッシュは完璧。音速を超えた?

「まったく。何やってんだか」

 翼は呆れて額を押さえた。そこで真咲の視線が向いていることに気づく。質問攻めをしていた生徒たちも全員新明狩りに行ったため教室には二人だけだ。

「ああ、ごめん。自己紹介が遅れた。折笠翼です。部活は……特に入っていない。え〜、とりあえず、よろしく」

 翼は何気なく手を差し出した。

 真咲はにっこりと微笑むと、

「こちらこそ、よろしくね。……翼」

 真咲の手が翼の手を取った瞬間、翼は自分の頭の中を電流が走ったような衝撃に襲われた。手のひんやりとした感覚だけが鮮明に真咲の手を握っていることを知らせる。手を離そうとしても真咲の掴んだ手は離れない。

「なっ……」

 急激に意識が遠のいていくのを感じた。

「天……城、お前……」

 翼は視界が暗転していくのがはっきりとわかった。


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