第三章「独りの騎士・孤独の姫」・8
ギィィィィィィィッギィィッギィィィィィィンッ!
計三発の滅魔性の弾丸が拳銃から吐き出される。
「ち! ハズレですか!」
弾丸はすべて回避された。どれもありえない、重力というものを無視した回避の仕方ではあったが、すでに相手は人間ではない。その体捌きは人間の範疇を越えていた。
さらに陣内は空中で体勢を変え、突進を試みる。
「―――――――――」
シルフィードは長く術式を唱えた。
顕現するは物体ではなく、風そのもの。
机上に散らばった書類を巻き上げ、白河と自らの前に風壁を作る。
陣内の突進は不可視の風の壁に防がれた。
「この距離ではどうですか?」
白河が拳銃をほとんど零距離で放つ。
「ぐぇ……」
間の抜けた声を上げ吹き飛ぶ陣内。彼の体は壁に衝突し、ずり落ちる。
「なんか……間が抜けてますね」
ホルスターに銃をしまう。
しかし、シルフィードは緊張の糸を緩めなかった。
「どうしました?」
それによって再び警戒する白河。
「まだです」
ぐったりと倒れていた陣内が、まるで操り人形のように起き上がる。口元には笑みすらあった。気色悪いことこの上ない。
「ゾンビですか……」
白河はため息とともにそんな言葉を漏らした。
収めた銃を再び構える。
「これで終わりにしますよ?」
「了解です」
「く……ははは」
陣内はようやく、液体を口にしてからはじめて人間らしい声を上げた。
「終ワリだ。お前タチハ」
片言としか取れない、たどたどしい言葉。そこに人間らしさは微塵も感じられない。
「おや? 人間としての感覚が残ってましたか?」
白河が挑発的な視線を陣内――だったもの――に向ける。
「アノ方がクル……フ、ふ、HAHAHAHA!」
陣内は両手を挙げて狂った笑いを上げる。
「……! 白河様!」
シルフィードが驚きに目を見開かせて、白河に跳びつく。
爆発的に膨れ上がった魔力が二人を襲ったのは次の瞬間だった。
「な! シルフィード!」
「くぅぅぅぅぅぅっっ!」
魔力の元は陣内。彼の体は異様な形に膨れ上がった。
顔はぶくぶくといびつに膨らみ、手の関節でない部分が曲がり――――爆散した。
室内だけに爆発の勢いは収まらず、建物の一角をまるごと吹き飛ばした。