第三章「独りの騎士・孤独の姫」・7
「おかしいとは思っていたんですよ。突然、魔魂について調べろなどと言われたときから。確かに情報の少ないものではありますが、何故、今急遽必要になったのか? それはあなた自身が必要だったからなんですね? この『魔的複製体』を作るために」
「く…………ふ……ふ……ははははは!!!」
「……?」
まるで半狂乱になったように、突如として笑い出す陣内。
普段は表情を崩さないシルフィードまでもが訝しげな顔をした。
「くはははははは!」
「…………! シルフィード!」
白河が叫ぶと同時に陣内は動いた。
陣内は机から、机の一番上の引き出しから小瓶を取り出した。それを口に運ぶ。中身は薄い緑色の液体で、容量にすると五ミリリッルもないだろう。
途中で命を受けたシルフィードが弾き飛ばそうとするが、それより早く嚥下する。
「何を?」
二人が見る中、陣内は……笑った。声を上げずに、不気味に。
「……!」
シルフィードが動揺しているのがわかった。現に彼女は自らの背中を冷たい汗が落ちるのがわかった。
それは陣内からの魔力が膨れ上がっているせいだ。彼の姿にさらに二回りも三回りも巨大な影がかぶって見えた。あまりにも巨大な『それ』は部屋の壁を覆うように進む。
膨大に膨れ上がる魔力。
「こ、これは……」
「白河様、危険です」
「でしょうね……ただ、退かせてももらえそうにないですが」
「GUUUUUUUUUUUUUUUUU!」
その声はすでに人間のものではなくなっていた。
「声と言うか、唸りですね」
白河はつぶやくと、腰のホルスターから自動拳銃を引き抜く。中の弾丸は対魔用の特性炸薬だ。完全に効くとは思わないが、使わないよりははるかにましだろう。
「……来ます」
「GUWEEEEEEEEEEEEE!」
人間とは思えない跳躍力で陣内が迫る。