第三章「独りの騎士・孤独の姫」・4
それと同じ頃……
彼自身、ここに来るのははじめてではなかった。
だがいつにない緊張感が彼から発せられていたことも事実だった。
「シルフィード……」
「はい」
彼女は、白河の隣に控えていた。今回は音もなく現れるのではなく、しっかりと最初から隣にいた。二人の着ているものは白を基調とした聖警察の制服である。ただ白河はいつものコートを着ていない。
「今回ばかりは、お前に頼ります」
「了解しています」
シルフィードは静かに頷いた。長い髪が肩を滑る。
私は……彼を守る。それが私の存在意義であり、一番の願いだ。白河大輔。自らの契約者であり、彼を幼少より知る者は私だけ。どこか独占的な感情があるのだろう、自覚している。
しかし、それでいいのだ。
それが私を強くする。彼を守る力を与える。より強固なものへと。断固としたものへと。
「……必ずお守りいたします」
小さくつぶやいた。それは横にいる白河の耳にすら届かない。それでもかまわない。互いに求めているものは違うのだから。すれ違うようだったら、いっそ知らない方がいいのだ。たとえそれが心に秘めた想いだとしても。
彼ら二人が真咲と翼を追跡できなかった理由はあることを調べていたからだ。それも、この先彼らにとっても、また人間にとっても重要なこと。
「……行きます」
白河は目の前にある木製のドアをノックする。どうということはない。ただそれだけだ。
「誰だ?」
中からはどこか高圧的な口調がした。
「白河です」
「……そうか、入れ」
難なく許可は出た。問題はこれからだ。