第三章「独りの騎士・孤独の姫」・3
そう思ったのは、翼と真咲が下校しているときだった。
「期限、明日でしょ?」
不意に真咲からそう訊かれたのが最初だった。
「ん、ああ」
「どうするの?」
「どうするもこうするも、俺はあいつには協力しない」
「そういうことじゃなくて。具体的に」
「う〜ん。何も考えてないんだよな」
真咲はがっくりと肩を落とし、
「それで大丈夫なの?」
「?」
翼は疑問符を浮かべると、
「なんでだ? こっちには真咲がいるだろ?」
「な――」
照れたように顔を朱に染める真咲。少し不意打ち気味だっただろうか、と考える。
ま、こいつに不意打ちすると心なしか気分がいい。会ってからずっと驚かされっぱなしだったからだろう。
「あなた頭おかしくなった?」
「おい。どういう言いがかりだ、コラ」
「いや、翼のキャラが違って見えたから」
「なんだ、それ」
真咲の言葉を翼は鼻で笑って受け流した。
夕日が傾いていた。空を橙色に染め、天頂付近は赤紫色がかかっている。
二人が歩いている道は普段から人通りが少ない下校路で、今もそれは同じだった。
「そいうや、今日、梓休みだったな」
「そうね」
「……めずらしいことなんだ、あいつが休むなんて」
「心配?」
真咲は意地悪そうな目をした。こういうことだけは梓や他の仲のよい知り合いの女子と変わらない。実際年齢から考えると、むしろガキっぽい。そもそも何故そんな顔をするのか。そこが理解できないところでもある。
「ん〜多少はな」
「多少?」
「そう、多・少」
言い切る。
「なら、お見舞いでも行こうか?」
いいとこで切り出す、と翼は思った。
彼もどこかでは思っていたのか、いつの間にか梓の家に行く方の道を歩いていたりする。
「ほら、翼もそうしたかったんでしょ?」
随分と痛いところを突く。無意識とはいえ。
翼は観念したように頭をかいた。
「ああ、わかったよ。ちょうど、偶然にも、梓の家に近いからな」
「偶然?」
「そう、偶・然」
断固として言い張る翼だった。