第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・24
第二章最終話です。果たして、シェイドの裏に潜む黒幕とは……?
その二人を見ている人影が一つ。
シェイドだ。
反対側のビルの屋上から見下ろしていた。
「…………どうやら、協力は望めない……か。期限が来たら殺す?」
彼は背後の闇に問う。何もない、どこまでも続いていそうな闇に。
『それはお前の好きにしろ。あいつはいらん。他のやつを見つけた……』
くぐもった声が帰ってきた。まるで機械で声を変えたような声だ。
「?……ああ、彼女」
そう言い先ほどまでいたビルの入り口にシェイドは目を向ける。
『ククク……この日本という国は素晴らしいな。あそこまでの逸材がこれほど近くにいるとは』
「……そうですね。それで、いつに?」
『期限切れと同時だ。傷一つつけるな。まぁ、お前が可能なら両方とも確保してもいいかもな。予備がいればその分、楽だ』
「御意」
くぐもった声の主の気配が消えた。
「……翼、もう後悔しても遅いよ。でも仕方ないね、それは君が決めた道なんだから。この五日間は人間として君がすごすことのできる最後の五日間だ。せいぜい楽しむといいね。そして不運な少女。いや、幸運の《神の御子》とでも言うのかな?」
シェイドの視線の先には、ビルから出て来た真咲と翼と合流する少女の姿があった。
「翼と居合わせてしまったこと……そして天城真咲の傍にいていしまったこと、知ってしまったこと。これはすべて運命だ。だから、その先に何が待っていようともしっかり受け止めてもらうよ?」
倉本梓。
それが彼女の名前。
おそらく、今この世界で最も幸運でいて、一番不運に近い人間。