第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・22
いきなりの大声に真咲はびくっと体を震わせた。
「ったく……さっきから聞いてりゃ、悪魔ってのは随分と手前ェの講釈たれんのが好きらしいな? 長いんだよ、話が。長すぎて理解できやしねぇ。ふざけやがって、くそが! あと少しだ? どこからその自信が湧くんだ? あ? ぼろぼろじゃねぇかよ。まだ弱いんだろ? なのに、なんで無理したがるんだ、手前ぇは!」
翼は今日この十数分の間に起きたこと――すべてわけのわからないことだった――の混乱を吐き出すように言葉を続けた。
「そもそもなんなんだよ。お前が殺そうとしているやつは? いい加減はっきりしろよ! こっちは全部わけがわからねえんだよ! 死神とか言うのは出てくるし、見た目ガキのクセに人に説教か? ふざけてる。今度あったらぜってー泣かす。ああ! 泣かしますとも。あのクソ生意気なツラ一発殴ったる。なにが、命がどーのこーのだ。俺の知ったことかよ! あぁ! もう混乱して来た。だいたい人に説教たれんのも苦手なんだぞ、俺。無駄に話させんな!」
ほとんど自暴自棄でこっちこそわけのわからないことを散々言った挙句、自爆した。
(あ〜、くそ! これじゃなに言いたいのか訳わからねぇよ)
翼は頭をかきむしった。金髪が彼の心を反映させたかのように乱れる。
「……だったら……だったら、どうすればいいのよ……そもそも私が弱いせいじゃない、全部……私がどうにかしなきゃいけないのに。これじゃぁ何にもできないじゃない……」
そんな翼に対し、真咲は泣いていた。
普段の(人間で見れば)大人っぽい雰囲気が嘘のような顔。真紅だった瞳は黒いそれに戻っている。