第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・21
「五日間、あげるよ。真咲から話を聞いて考えるといい。こちらに協力するか、警察に身を託すか、真咲と死ぬか。まぁ、選択肢はいろいろある。ただどれも全部、君が決めることだ。きっと結構長いよ、この五日間は……」
翼はシェイドの視線を真っ向から受けた。
自分について来なければ殺す、そう言いたいのだろう。おそらく今挙げられた三つの中で一番翼が生き残れる確立が高いのは、シェイドに協力することだ。
そんなことは分かり切っている……分かり切っているのだ。
「わかった。五日間だな?」
あくまで淡々と言い返した。
「そう。いい返事を期待しているよ」
一言言い残すと、シェイドは跳躍した。その姿が夜空の闇に溶けるようにして消える。
「…………ッ?」
見送るように空を見上げていると、翼は胸倉を掴まれた。
視線を掴んだ彼女の方へと向ける。
「なんで返事をしたッ! あと少し時間を稼げば私がなんとかしていたのにッ!」
真咲の真っ赤な目は怒りでいっぱいだった。
だがそんな彼女に返ってきたのは翼の冷ややかな視線。
「それで、か?」
翼は血の滴る真咲の左腕を見下ろす。見るからに痛々しい傷だった。制服が真っ赤に染まっている。左腕だけでなく全身に切り傷が見られる。そこから溢れた血が微かにでも赤く、彼女の身を染めていた。
「あなた、私をなめているの? 人間とは治癒能力が違うわ。この程度……」
「治るってか? 無理だろうがっ! 少しは自分のことぐらい自分でわかれ! 現に今だって息上がってるし、血は流れてるし!」
怒鳴り返した。ほとんど反射的に。今まで溜め込んできたものをすべて。