第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・17
「こっちとしてはもちろん抵抗するわよ。あなたをもう一度殺してでもね」
「やれるものなら……」
「――消えろ」
そう言い切る前に真咲は跳んでいた。
しゅっという風を切る音。
――り、りりーりん。
今度の鈴の音は乱れ鳴いた。
シェイドも跳んだのだ。屋上の縁に腰をかけた状態から一気に。
彼が今までいた場所に魔力を溜め込んだ真咲の拳がめり込む。
「ホントに外見じゃねえな」
翼は人外の戦闘に物陰に隠れつつも身をかがめる。
シェイドは座っていた場所から屋上の貯水タンクの上まで跳んでいた。手には長い棒が握られている。否、棒の先端には三日月型の刃がある。鎌だ。死神が持っている、イメージ通りの巨大な鎌。ただその刃はどす黒く、光も反射しない。刃と柄の境目にも金色の鈴がついている。
――り、りり、りぃーん――
耳のものと音が二重奏を奏でる。
「まったく、相変わらずのバカ力だね」
コートを翻し、シェイドはタンクから飛び降りる。音もなく着地。
「あなたに言われたくないわね」
真咲は両手をシェイドに向けて差し出した。手の周りが輝き、左手、右手の順に自動拳銃が顕現する。
「この距離で当たるかな?」
「その目で確かめたら?」
ダゥゥゥゥン!
音速を超える弾丸。一マガジン分使い切るほどに連射した。もともと真咲の使う銃の弾に制限があるのかすら謎であるが。
シェイドは大鎌を振るうと弾丸を弾き落とす。
その高速の戦闘で翼がかろうじて見えたのがシェイドの口の笑みと取れる歪みだった。
「あははははははは……」
ついに声まで上げて笑い出した。
「変わってないよ。口より手が先ってやつかい?」
茶化すような調子でそう言うシェイドに真咲は言い返す。
「性分なの」
さらに真咲は銃を捨てると、片刃の剣を出す。
接近。上段から振り下ろされる刃をシェイドは軽々と受けとめる。あまつさえ弾き返した。