第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・13
第二章も中盤です。このまま一気に行っちゃいます(笑)
翼がエレベーターホールに入ると、真咲はすでにエレベーターの昇りボタンを押していた。
「真咲ッ、ここのエレベーターはなかなか来ねえぞ!」
エレベーターホールを通過しながら翼が叫ぶ。真咲もそれに続く。目指すのは地上十二階の上にある屋上。手段は非常階段。
「うおおおおおらあぁぁぁぁぁぁぁ――――――!」
気合のかけ声とともに一気に五階まで駆け上がる。そこまで来ればさすがに翼は息を切らしていた。
「ぜぇ……ぅへ……はぁ、翼! ナイスタイミング!」
真咲は非常階段の扉を開けた。エレベーターホールにちょうどエレベーターが到着していた。先ほどから真咲はこのタイミングを狙っていたのだ(かもしれない)。
滑り込みで入る。中には誰もいない。最上階のボタンを押すと窓から外を見た。ちなみに最上階はレストラン街だ。
「梓は大丈夫か?」
独り言のように翼がつぶやく。
「心配しなくても大丈夫よ。彼女なら」
「何でそう言い切れるんだ?」
「あの子も……魔と関係する力を持っているわ」
真咲がガラスに手をつきながら、翼に向き直る。翼は一瞬戸惑ったような表情を浮かべたが、
「そうなのか?」
「ええ。どうやら、あなたの周りには特殊な人が多くいるようね」
「確かに、そうかもな」
苦笑して応えた。
「お前も……その一人だろ?」
「そうね」
真咲は微苦笑した。
「それで? 『化け物』ってのは何者なんだ?」
翼の問いかけに真咲はゆっくりと口を開いた。
「この世の生と死を司る者。『死神』と称される者よ」
「漠然とし過ぎてないか?」
翼の死神のイメージはローブをかぶった骸骨で大きな鎌を持っている、といったところだ。
「仕方ないじゃない。真実なんだから」
仕方なくない、と言おうと翼はしたが、ちょうど十二階に到着した。軽い衝撃とともにエレベーターが停止する。屋上には再び非常階段を使う。