第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・12
「……わかった? あなたも魔力がわかるはずよ」
真咲がそう言い指差す先――――
確かに翼の目にも魔力の強い場所がわかった。それは真咲と契約をしたせいか、もともと素質があるのかは定かではないが、ただ『何か』がその場所からはっきりと感じ取れた。
「やはり使徒……かしらね」
「使徒……?」
聞き慣れない単語に翼は首を傾げる。
「ええ、魔魂を狙う『化け物』の使い魔よ。それも、もしかしたら本体かも……。これまでに強いなんて……とにかくあそこまで行って確認してみないといけないわね」
真咲が駅ビルに入ろうと歩を進めた。
ゴゥン―――――
そのとき、突如頭上高くで輝いていたネオンが音をたてて落下してきた。
落下先には梓がいる。
絶対に避けられないタイミング、そして位置。
「――あぶねえ!」
翼が叫ぶより早く、真咲が跳んだ。
「きゃあ!」
状況を把握しきっていない梓は真咲に抱きかかえられる形でネオンの落下を回避した。
ゴッッッッッ…………!!
一拍おいて火花を散らすネオンが地上に叩きつけられる。
すさまじい爆音に通行人も振り返る。
真咲は手近な場所に梓を降ろす。
「梓、お前はそこにいてくれ」
翼は、口元を押さえたまま近くの街灯に身を預ける梓にそう言い残すと駅ビルに駆け込んだ。微かに梓が頷いたのが確認できた。
塊の周りには徐々に人が集まりつつあった。カメラつき携帯を取り出す者。顔を背ける者。反応はそれぞれだった。
その中で梓は何かを確かめるように屋上を見詰めた。