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第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・8

 

「あれ? 天城さん」

「名前でいいって。その代わり、私も梓って呼んでもいい?」

 梓は真咲の言葉ににっこりと微笑むと、

「いいよ。改めてよろしくね、真咲さん」

 そのときの梓の笑顔は本当に喜んでいるものだった。昔から付き合っている翼は、こういうところが彼女のかわいいところなんだなと思ったこともある。

「ん〜『さん』はいいんだけどね」

「いいじゃない。そういえばさ、お昼休み二人で何してたの?」

「「え?」」

 梓の言葉に二人は異口同音に応えた。

「あやし〜な〜」

 上目使いに意地悪そうな顔で翼を見る。こういうときに童顔は有利だ。むしろセコイ。

「そ、そんなことはねえって。ちょっと校舎を案内してただけで……」

「へえ〜。……ま、そういうことにしておいてあげるわ」

「あら?」

 まだからかわれるかと思っていた翼は肩透かしをくらった形になった。彼女にしてはやけに退くのが早い。

「今日は真咲さんの歓迎会だし。みんなの視線も気になるしね」

 教卓前でビンゴ大会をしていた参加者の面々の視線が三人に向けられている。主に男子を中心としたもの。

「あ〜、何でもないのでどーぞお続けください」

 翼は変な殺気のこもった視線を、手を振ってなだめる。

「じゃ、あたしがあっち行ってこようかな」

 梓は手に持っていたカップを翼に渡した。中身が半分ほど入っている。

「何するんだ? つーかこれどうすんだ?」

「ビンゴよ、ビンゴ。それ飲んでもいいよ」

「あ、そう」

 しれっと答えると一口飲んだ。

「あ! ホントに飲んだ」

「悪いか?」

 梓は「ほ〜っ」と意味ありげな、感嘆したような声を上げると駆けて行った。教卓前ではさっそく梓を中心として第二回ビンゴ大会が開かれている。

「何なんだ……」

 真咲は呆れ顔で翼を見ていたが、一つせき払いをすると、

「梓とはいつからの付き合い?」

「小学校からだな。三年のときに転校して来た」

「そうなの……」

 翼と話ながらも視線は梓に向けられている。

「どうした?」

「いえ、きっと気のせいね」

 そうは言ったものの彼女の視線は教卓の上に立つ梓に向けられていた。

『お〜っと、今、梓ちゃんが見事にビンゴです! では、一等商品のぬいぐるみをど〜ぞ。ちなみに佐久間が取ったもので〜す』

 新明がマイクでビンゴ大会の司会進行もする。隣では梓が縦一列にそろったカードを掲げている。見事にビンゴだ。それにトリプルリーチだった。

「わあ! さっすがサクちゃんだね。今人気のぬいぐるみじゃん? コレ」

 梓はぬいぐるみを佐久間(このクラスのクレーンゲームの自称プロ)から受け取った。クマのようなネコのような動物だ。この世のものとは思えない。


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