第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・7
日は西に落ちかけ、雲も空もだいだいで染まっていた。その様子はうつくしく見入ってしまいそうであった。
クラスの窓は西側についているため日差しがもろに入り込む。中では生徒が歓迎会の下準備をしていた。
どうやら真咲が来る前から話は進められていたようで、飲食物はもちろんのこと部屋の装飾もなかなかのものだ。机を部屋の真ん中に集めて、生徒はそれを取り囲むようにしている。一応希望者のみの参加だったのだが、クラスのほとんどが出ていた。
「えぇ、こほん。では、みなさん、コップを手に取ってください」
幹事兼司会を務めるのは新明である。参加したクラスメートにはプラスチックのコップが渡されている。
「まずは最初に本日の主役である天城真咲さんに乾杯の音頭をお願いします」
新明はどこから持って来たのか、おもちゃのマイクを真咲に手渡した。あの声に変なエコーがかかるやつ。
「あ、はい。えぇと、今回は私のために集まってもらってありがとうございます。それでは……かんぱ〜い!」
『かんぱ〜い!』
乾杯の掛け声を終えると真咲は全員の質問の標的にされていた。
翼は全員の輪からは少し離れた場所にいた。窓を背にしている。横には梓もいた。
「朝の生徒会ってのはこのことだったのか?」
「そうよ。でも生徒会ってのもうそ。ただの打ち合わせと下準備。ごめんね」
「いや、謝る必要はないよ。ただうちのクラスはこういうことが好きだなって思ってな」
「それって翼が言えないよ」
「はは、そうかもな」
翼は苦笑するとコップに口をつけた。梓も飲み物を一口飲む。
「……和貴ってああいうこと得意だよね」
梓はコップを持った手で、教卓前を陣取る新明を指差した。身振り手振りを加えて何やら熱心に話している。
「昔から人前に立つのが好きだったからな。それに天性ってものがあるのかもな。結構積極的なところあるし、あいつ」
「え? それってどういうこと?」
「浮気されないようにってこと」
そう言う翼に梓は声を上げて笑った。
「あははは、翼にそんなこと言われるなんて思わなかったな。そうだね、気をつけないとね。今日も天城さんに声かけてたし……」
「真咲でいいわよ」
突然、梓が声をかけられた。いつの間にか集団を抜け出していたらしい。