賢者たちの考えは
魔王が現れた折に王様は賢者たちを招集した。
端的に言えば魔王にどう対処すべきかの意見を求めたのだ。
東の賢者が魔王の勢力を語る。
「魔王の勢力は日に日に増しており、今や国土の三分の一を奪われました」
西の賢者が魔王の恐怖を語る。
「魔王の恐ろしさは徹底的な人間の憎悪です。侵略された地では人間は弄ばれるようにして殺されています」
南の賢者が魔王の影響を語る。
「勢いを増す魔王の力に反逆者共は遂に我が軍への抵抗をやめました。それどころか我が軍への帰順を願い出ております」
北の賢者が魔王の戦力を語る。
「圧倒的な魔力を持っております。それこそ歴代最強と呼ばれた者でさえ比較として軽すぎるほどに」
四賢者の話を聞いた王様は僅かに停滞する。
自身の考えをまとめる時間が欲しかったのだ。
そして、考えがまとまった。
王様は東の賢者へ問う。
「失われた国土は反逆者達が自らの土地と主張していた箇所であったな」
「左様でございます」
王様は西の賢者へ問う。
「弄ばれ殺された者達に我が国民は含まれているか?」
「反逆者を国民と数えないのであれば皆無です」
王様は南の賢者へ問う。
「反逆者達は我が軍への帰順を望んでいるようだが、その顔ぶれに目ぼしい者はいるか?」
「いいえ。全て魔王軍との戦いで殺されております。ほとんどが力なき者でしょう」
王様は北の賢者へ問う。
「圧倒的な魔力と言うが、我が国は既に科学を取り入れ始めている。それを考慮すればどうなる?」
「先日、量産体制の目処が出た爆弾があれば恐るる足りません。無論、まだ不確定要素はありますが」
王様は再び沈黙した。
自身の考えを決意する時間が必要だったから。
しかし、四賢者達はこの時間がすぐに終わることを理解していた。
王は告げる。
「反逆者達を受け入れよ」
王は加える。
「土地勘を理由に反逆者達を最前線に配置し防衛へ回せ。しばらくは攻勢に回らず守勢に徹せよ」
王は命じる。
「負傷した者がいたならば魔法でなく科学で救え。選ばれた者しか使えぬと言う馬鹿げた考えを捨てさせる良い機会だ」
そして、王は呟く。
「魔王を徹底的に利用してやる」
四賢者は皆、頷いた。
そう。
戦争とは所詮は政治の一つでしかない。
相手が人間から魔王に変わろうともその本質から外れるはずもなし。
故に王様は揺るがない。
故に王様は既に見据えている。
反逆者達が存在しない『戦後の』我が国を。
魔王との戦いは王様の計画通りの期間続き、計画通りの結末を迎えた……などとわざわざ語るまでもない。




