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漆黒の闇から  作者: 一宮 沙耶


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8話 元カレ

柚月から、今度は自分のことで霊の仕業じゃないかと相談される。

最近、芽衣等から霊の相談が多く、そのために私に近づいたのではと邪推することもある。

まあ、優しい仲間達だから、そんなことは考えるだけでもダメだと反省する。


「この前、玉ねぎを切っていると、右手を誰かにつかまれたの。そして、玉ねぎを押さえている左手の指を包丁が切りつけてきたのよ。指をすぐに離したので怪我には至らなかったけど、誰かが見たら、自分の指を切り付けているようにしか見えなかったと思う。」

「怖いわね。」

「ええ、自分の指なんて切らないでしょう。右手が誰かに握られ、勝手に動いていたの。でも、右手を握っているものが見えない。これは、人間の仕業じゃない。なんとかしないと思って、澪に相談にきた。」

「なにか、心当たりはあるの?」

「分からない。でも、元カレじゃないかと思う。見えないけど、なんとなく感覚が同じ気がする。」

「柚月って、男運が悪いわよね。」

「本当にそうなのよ。何とかならないかしら。でも、彼がいない澪からは言われたくないかな。あはは。」


私は、柚月の家を訪問する。

周りを見渡すと、私は凍りついた。男性の霊がいる。

これまで気づかなかったけど、柚月を見ると、背中にピッタリ付いていた。

柚月の部屋に縛り付けられている霊なのだと思う。


でも、これまで見てきた霊と違い、柚月を優しい顔で見守っている。

柚月を攻撃しようというよりも、柚月をずっと自分のものにしておきたいと感じる。

今も、柚月を抱きしめ、口を重ねようとする。


まだ、死んでいることに気づいていないのかもしれない。

でも、柚月の指を切りつけようとしたのだから気を抜くことはできない。

些細なことで怒りに我を忘れて、襲いかかってくるかもしれない。


「背が高くて痩せていて、かっこいい感じの人が柚月の後ろにいる。背広を着ていて、胸に黄色いポケットチーフをしている人。」

「やっぱり。元カレ、でも、彼は死んでいたんだ。知らなかった。」

「体は水でビチョビチョだから、水死したんだと思う。いえ、よく見ると、赤い水で、少しねっとりしている液体のようね。右腕の手首にカミソリで切ったような跡があって、血が流れ出ているから、お風呂で自殺したのかしら。」

「そうだったんだ。彼とは、4ヶ月ぐらい前、女友達から紹介された出会い系サイトで知り合ったの。中堅のIT会社に勤めてるエンジニアで、イケメンだったから、すぐに仲良くなったわ。」


柚月は、昔を思い出しながら、穏やかに話し始める。

男性の霊は、柚月を優しく見つめ、静かに柚月を見つめている。


「写真通りイケメンで、会話も爽やかだった。なによりも、私への接し方がとてもスマートだったので、この人だと思ったわ。会ってすぐにピーンときたの。だから、お寿司屋の帰りに、すぐに手を握って、付き合い始めた。でも、彼は思っている人とは全く違う人だった。」


落胆して肩を落とし、柚月は話し続ける。


「1ヶ月ぐらい経った頃、私のSNSとか、常にチェックしていることに気づいたの。この日は、誘ったけど都合が悪いって言ったじゃないか、ここに誰と行ったんだと責め始めたの。SNSに投稿したカフェの写真には、横の椅子に男物のカバンが置いてあるって怒鳴り込んできたこともあった。仕事のお得意様とカフェで打ち合わせをすることぐらいあるでしょう。」


そんな心の狭い男性なんて嫌。いつも淡々と仕事をこなす柚月も苦労している。 

異性と話すと、その人に気があると思うのは偏見。

誰だって、異性の同僚や、お客様、委託先の人と話すことだってあるでしょう。


そんなに、彼とだけずっと一緒にいたら息苦しくなる。

女友達と一緒に飲みにいくこともある。

大学の時のサークルの友人と一緒に飲みにいくこともある。

もちろん、そんな中に男性だっていることもある。


「そのうち、LINEで彼から1日20通ぐらいメッセージがくるようになったの。1分以内に返事しないと、浮気しているのだろうとか責められるようになった。ひどくない。そんなに私のこと信用できないんだったら、別れてよと思っちゃった。」

「当然よね。」

「もう耐えられなくなって、彼に別れ話しをしたの。私達は付き合っているけど、それぞれの生活もあるんだから。これ以上、拘束されるのは耐えられないって。」


怒りを思い出したのか、柚月の手には力が入る。


「そうしたら、やっぱり男がいたんだな、浮気だ、慰謝料払えとか言ってくるのよ。私には、今、好きな人なんていないと言い続けるしかなかった。本当だし。最後には、彼は涙を流しながら、別れたくないってもめちゃった。好きなんだから仕方がないと。」


とんでもない男性もいる。


「結婚しているわけじゃないんだから、私が別れると言えば、それで終わりなのよと言った。あなたには飽き飽きしたのよとも言ったわ。でも、全く理解してもらえなかったので、彼とは距離を置いたの。それでも、毎日のように、LINEで電話やメッセージが頻繁にきたから、最終的に、彼との連絡は全てブロックすることにした。スマホ自体が他の人と利用できないぐらいになっちゃったから。出会い系サイトにもトラブルになっていると通報しておいた。」


今は、彼への愛情は何一つないに違いない。


「彼に、私の家を伝えなくて良かったと、その時は思ったわ。彼からみると、私に連絡する全ての手段がなくなっちゃった。それ以来、全く連絡はなくなって、別れることができたの。ホッとした。」 


その言葉に彼が怒ったのか、琴葉にガラスのコップがすごい勢いで飛んできた。

さっきまで暖かい顔つきだった彼の顔は歪み、地面が揺れ、大きな地震が起きた。

自然の地震ではない。窓の外は何も変わらず、子供の笑い声が聞こえてくる。


フローリングの板が裂け、柚月も異変に気づいた。

このままでは、この家が崩落してしまう。

同時に、部屋の中は暴風が吹き荒れる。


柚月には当たらなかったけど、ガラスの破片が床に飛び散った。

逃げる時に足に目をやると、裏から血が滲んでいる。

お皿も飛んできてたから、ガラスや陶器の破片のせい。


「柚月は、あなたと別れたでしょう。もう、柚月に付き纏わないで。」

「俺は、何も悪いことしていないし、柚月はまだ俺の彼女だ。」

「あなた、もう死んでること気づいていないの。」

「俺は、生きている。だから、お前は俺と話しているんだろう。コップを投げたのも、お前、見てたじゃないか。」

「私は、霊を見れるし、霊と話せるの。」

「そんなこと、あり得ない。お前は、俺に嘘をついて、柚月と別れさせようとしているんだな。柚月に、他に男ができて、頼まれたのか。」

「柚月は、他に男はいないけど、あなたとは別れたのよ。」


私は、いきなり、両手を開かされた状態でテーブルの上に押しつけられた。

怒りに満ちた風が部屋を突き抜け、部屋は嵐のようになった。

風は強く、窓のガラスは粉々になり、道路の方に飛び散っていく。


このままだと殺される。

手が抑えられていて、抵抗ができない。

あまりに強い力。このままでは私の命も潰えてしまう。


私は、思いっきり、テーブルの脚を蹴った。

何度も蹴っていると、1つの脚が折れたのか、テーブルは傾く。

私の体が斜めになったときに手が使える瞬間ができる。


私は、塩を撒き散らし、カバンの中に隠し持っていたカミソリで切り付ける。

最近は、こんなこともあるのでカミソリは常に携帯している。


カミソリで、死んだ記憶が蘇ったのかもしれない。

しばらくすると、部屋の中を吹き荒れていた風は治まっていく。

部屋にあったものが飛び回る現象も。


「柚月が悪いんだ。俺は何も悪くない。」

「気づかずに人を傷つけていることもあるのよ。ゆっくり、お休みなさい。」


それから、しばらく、柚月は平穏の日々を過ごすことができた。

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