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漆黒の闇から  作者: 一宮 沙耶


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11話 彼氏

気づくと、私は、26歳になっている。

私は、就職しても自分の部屋に閉じこもり、人から遠ざかっていた。

それを救い上げてくれた四人の同期の仲間達。


琴葉には本当にお世話になった。

あそこまで強引に声をかけてくれなければ、私の頑なな心が開くことはなかった。

いつも相談にのってくれて、不安に包まれる私に的確なアドバイスをくれた。


でも、何でもストレートに言っていたことが仇となって殺されてしまう。

私たち4人がどれだけ悲しんだことか。

琴葉、あの世で幸せに過ごして欲しい。私たちは、琴葉の分も幸せになるから。


芽衣も、柚月も、朱音も、いっぱい私のことを助けて、応援してくれた。

この4人のおかげで、私は明るく生活できるようになっている。本当に感謝しかない。


そして、今、私は心が踊る日々を過ごしている。

社内で付き合っていた彼がいたから。田澤 竜也という、私の2年上の先輩。


紬のことは、悪いけど、いつのまにか忘れていた。

そして、心が明るいせいか、この世のものではない邪悪な物を目にしない日々を過ごす。


また、アクセサリーは女性を華やかに演出してくれることに、今更ながら気づいた。

部屋に閉じこもって生活していた時は、そんなこと考えたこともなかった。

ネックレスひとつで首元、胸元を輝かせてくれる。指輪一つで上品さを醸し出してくれる。


竜也に背伸びしたくて、この1ヶ月でいくつものアクセサリーを買っている。

竜也が褒めてくれる姿を思い浮かべる時間があるだけで、毎日が楽しい。


竜也は、こんなブラックな会社で激務なのに、淡々と仕事をこなしている。

上司からもとても評判がよく、30歳のときに課長に昇進していた。

見た目もイケメンで、あんな人と付き合いたいと、大勢の女性社員の憧れの的だった。


子供の頃、暗くて気持ちが悪いと言われたことがトラウマになって男性に近づけなかった。

でも、私は、心が落ち着いてきてから、男性に守ってもらいたい気持ちは高まっている。

女性に生まれた以上、男性に愛され、心を満たされたい。


そんな私に、竜也が声をかけてくれて、私は、舞い上がってしまう。

過去の黒歴史が塗り替えられるかもと期待している私がいた。

会社からの帰り道で、竜也とばったり会うことから始まる。


「今日も遅いんだね、一緒に飲みに行かないか。」

「え、でも・・・。」

「なにか予定はあるの?」

「別にないんですけど。先輩と行ったら、他の女性から睨まれそうだし。」

「そんなことはないと思うけど、そうなったら僕が守ってあげるから。」

「先輩って、強引なんですね。」

「強引なのは、桜井さんが、あまりに可愛いからさ。強引なのは嫌かい?」

「そうでもないけど。」

「じゃあ、行こう。」


爽やかな笑顔で誘われる。

でも、あの、みんなの憧れの先輩が私を誘ってくれるなんて信じられなかった。

なんか恥ずかしくて、あまり話せない。


でも、それから、よく会うようになり、朝まで一緒にいるなんてことも増えた。

同じ会社の人で素性も分かっているし、騙されることはないと思う。

やっと、私にも幸せが訪れたのだと明るい日々を過ごす。

今日、カフェでランチを一緒にとっているときに、先輩を笑顔で見上げ、話しかけてみた。


「私のどこが気に入って、声をかけてくれたんですか?」

「どこって、可愛くて、桜井さんと一緒だと楽しくなれるところかな。まずは、桜井さんの目がどこまでも澄んでいて、僕の心が吸い込まれてしまいそうで、一目惚れかな。」

「嬉しいな。そんなこと言ってくれると。」

「それと、僕の周りには、なんか自分のことばかりアピールしてくる女性が多いんだけど、桜井さんは、何をすれば僕が喜ぶかということを一番に考えてくれる。それが心地よくて。」

「もちろん、私には田澤さんしかいないから、田澤さんに喜んでもらいたい。」

「僕も、桜井さんを大切にするよ。」


これまで、そんなこと言ってくれる男性なんていなかったから、天にも登る気持ちだった。

最初、誘ってもらってから3ヶ月が経つ。

竜也の優しさは変わることはなく、仕事の悩みも相談にのってもらっていた。


「ねえ、最近、毎日のように酒井さんという御局さんからいびられるの。おばさんって嫌ね。」

「酒井さんか。少し怖い人だよね。まあ、もう魅力がない年齢になって、澪のことをひがんでいるんだよ。はいはいと笑顔で接しておけばいいって。」

「そうね。でも、ちゃんと仕事しているのに、叱られてばかりだと気が滅入っちゃうの。」

「だから僕がいるんだろう。僕に、何でも相談すればいい。僕ができることがあれば、何でもするからさ。ところで、今朝は土曜日だから、もう1回しよう。」

「くすぐったいってば。」


私は、朝から竜也の腕に包まれた。竜也は私の体の扱いがうまい。

それとも体の相性がいいって、こういうことを言うのかしら。

もう、竜也なしでは生きられない。


でも、同じころ、実は、同期の斉藤くんが、私に近づいてきていた。本当に困っている。

斉藤くんが近づいてきたのは、職場の飲み会で、横に座ったのがきっかけ。

同期だし、お酒をついだり、斉藤くんの話しに大笑いとかして、その場は楽しく過ごした。

それに勘違いをしたのだと思う。


「僕らは気が合うね。みんなに内緒なんだけど、今度、一緒に映画に行こうよ。」

「いつなの?」

「今週末とか、来週末とか。」

「今週末、来週末、どうだったかな。あ、両方とも埋まっているからだめだ。」

「じゃあ、今月末とかどう?」

「今月末もだめ。」

「じゃあ、桜井がいい日でいいや。」

「半年ぐらいだめかな。また、半年後に考えてみようか。」

「じゃあ、ランチとかどう?」

「ランチ、友達といつも一緒だからだめかな。」

「たまには、友達とのランチを断って、僕とさ。」

「女どうしの付き合いとかあるのよ。」


そんな感じで、すべて断っているのに、いつも誘ってくる。

用事があるとか言って断っても、じゃあ今度ねってしつこい。


何回も断れば、その気がないって分かるじゃない。

私は、あなたのことは興味がないなんて言いたくないの。

みんなから嫌われたくない。だって、みんなが大好きな澪でいたいでしょう。


本当は、付き合っている人がいると言いたかった。

でも、社内恋愛で公表できない。そんなことをすれば、竜也にも迷惑をかけてしまう。

だからか、斉藤くんは、私が内向的で、本当は好きなのに、言えないと信じていたみたい。


私も、良くなかったかもしれない。

この前、夜遅くなって、お腹が空いていたので、久しぶりにサイゼリアに入った。

そしたら、斉藤くんが相席をしてくる。


「おや、桜井じゃないか。今夜は空いているんだ。一緒に飲もう。」

「いや、今夜、女友達と約束していたんだけど、病気でキャンセルになっちゃって。だから、1人ごはんなの。」

「そうなんだ。でも僕にとってはラッキーだったな。桜井と飲めるのだから。今日は、とことん飲もうよ。」

「今日は、親戚が来ていて、早く帰らないといけないの。あと15分ぐらいで出るけど。」

「じゃあ、15分でいいや。桜井って、どんな男性が好きなの?」

「う〜ん。仕事ができて、私に優しい人かな。」

「それって、僕のことじゃん。ねえ、付き合おうよ。」


斉藤くんじゃないと思って言ったんだけど、通じなかったみたい。


「今は、そんな気持ちになれないかな。」

「どうして。」

「まだ1人前じゃないから、仕事に専念しないとだし。」

「僕と一緒でも、仕事に専念できるさ。いや、僕が仕事を教えてあげるし。」


断るのも角が立つと思い、少しだけお酒に付き合うことにした。

それなのに、もう会いたくないなんて言う勇気がなくて、笑いながら30分を過ごす。

ただ、そろそろ察して欲しい。


なんとか、気づいてもらいたいけど、そろそろ、はっきりと言わないとダメなのかしら。

それからも斉藤くんは何回も誘ってきた。

もう、中途半端じゃダメだと思って、会社の廊下で会った時に、はっきり断る。


「斉藤くん、これまで言わなかったんだけど、私には彼がいるの。」

「それって、最近なのか。僕と付き合っているときに浮気をしたとか。」

「私たち、付き合っていないでしょう。しかも、その人とは斉藤くんと会う前から付き合っているの。」

「いや、一緒に夕食もとったじゃないか。しっかりと付き合っていただろう。それって、その人に不満があって、僕に乗り換えたということじゃないの。」

「なんで、そうなるの? いずれにしても、私には、ずっと昔から好きな人がいるの。そして、それは斉藤くんじゃない。もう、つきまとわないで。」

「何を言っているんだ。桜井は騙されているんだ。その男は誰だ? 僕が文句を言ってきてやる。」

「もう、やめて。私は、斉藤くんのこと嫌いなの。もう顔も見たくない。」

「桜井、冷静になろう。今日は帰ってあげる。もう少し、時間が経てば、僕と付き合う方がいいと思うさ。」

「そんな日は来ない。さようなら。」


人を傷つけることになると思い、かなり勇気が必要だった。

でも、なんとか伝えると、斉藤くんは、黙って去っていく。

これで、良かったのだと思う。


でも、その後すぐに、竜也は行方不明になって、連絡がとれなくなってしまう。

会社にも出勤していなくて、大騒ぎになっている。何があったのかしら?

竜也に連絡しても、ブロックされているのか既読にもならない。

私には、竜也しかいなかったから、目の前は真っ暗となる。


竜也の失踪と関係があるのか、最近、気づいたことがある。

会社からの帰り道で、暗い道に入ると突き刺すような視線を感じる。

恨みを持ったような強い視線。でも、振り向いても誰もいない。


私を鋭く見つめる2つの目だけが浮いて、着いてくるっていう感じ。

でも、邪悪な霊とかは見えない。


それとは別に、最近、見えるはずがないものが私の周りに現れ始める。

そんな時、同期の仲間である朱音がとんでもないことを言い出した。

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