表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒の闇から  作者: 一宮 沙耶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

9話 ストーカー

澪に助けてもらった恐怖体験から3週間ぐらい経った時だった。

飲んで家に帰ったとき、私は、部屋で凍りつく。

ブラウスをかけているハンガーのフックが、1つだけ、いつもとは逆になっていたから。


いくら、急いで家を出る時があるとしても、私がこんなことをするはずがない。

誰かが、部屋に入ってる。


窓とか、割れているところもなく、入るとしたら玄関のドアからだと思う。

だから、次の朝、急いで鍵屋さんに来てもらって、鍵を交換した。


鍵の交換をするまで、誰かが入ってくるんじゃないかと気が気ではなかった。

だから、鍵屋さんが鍵を交換するまで一睡もできない。

そして、鍵が交換されると、疲れと安堵で、気づいたらベッドで寝ていた。


ベッドから起きると、お昼の2時過ぎになっている。

私は、今晩のご飯を作るために買い物に出かけた。


陽の光のもとで、人が多い繁華街を歩く。

さっきまでの不安は薄れ、ハンガーのフックのことは忘れかけていた。


スーパーの中では、家族や若い男女が笑顔で話しながら買い物をしている。

今晩、一緒に食べる料理は何にしようかと。

本当に平穏なひととき。私も、そんな姿を見て、自然と笑顔に戻っていた。


でも、部屋に戻り、手を洗おうとすると、再び鳥肌が立つ。

いつも左に置いてある石鹸が右にあったから。

朝はこうじゃなかった。鍵を交換したばかりなのに。


そうだ。スペアーキーは管理人さんに渡してあったんだ。

管理人さんが犯人かもしれない。


「管理人さん、今朝、鍵を交換したけど、また、誰かが入った気がするんです。スペアキーは管理人さんに渡したけど、管理人さんが入ったんじゃないですよね。」

「何、言っているんですか。入るはずないじゃないですか。鍵を交換するとか、被害妄想が強いんじゃないですか?」

「そうじゃなくて。」


管理人さんは相手にもしてくれない。でも、間違いなく、誰か入っている。

警察に相談しても、同じように相手にしてくれないかもしれない。

管理人さんと一緒で、気のせいじゃないかって。


2日後にも、再び凍りつくことが起こる。

ハンガーに吊り下げているスカートのファスナーが下がったままだった。

私は、いつもファスナーをあげて吊している。


私は几帳面だから、こんな形でハンガーにかけたりはしない。

明らかに、誰かが触っている。

これは、ストーカーみたいな人が私の部屋に入っているに違いない。


盗聴器の有無を調べる機械を買ってきて調べることにする。

そうすると、案の定、ブザーがなって、盗聴器が見つかる。


翌日、私は、怖い気持ちを抑え、会社からの帰りに、人気が少ない道を歩いていた。

犯人をおびき寄せるためとはいえ、電灯も少ない暗い道を女性1人で歩くのは怖い。


そもそも、私をストーカーするなんて、どんな人なの。

私は、普通にどこにでもいる女性でしょう。むしろ、誰からも好かれていると思う。

ストーカーされるほど、男性の心を惑わせるタイプでもない。


ただ、これまで男性に遠くから見られているとかは感じたことはない。

普通は、郵便物をあさられるとか、なにか兆候ぐらいあるものだけど。

ここ数日、急に攻撃されているような感じがする。


そんなことを考えている時だった、急に、後ろに人の気配を感じる。

しかし、振り返る余裕もなく、男性がナイフで切り付けてきた。


ブラウスは切り裂け、背中は少しだけ血で滲んでいる。

いきなり襲われたことと、鈍く光るナイフの怖さで道路にしゃがみ込んでしまった。


そして、彼は、正面から、私のお腹を蹴ってくる。

私の口からは血が出て、何が起きているかよく分らないまま、顔を上げる。

周りは真っ暗だけど、電灯でぼんやりと照らされた大学生ぐらいの男性の顔が見える。


知らない男性だったけど、物取りとか強姦のようには見えない。

目はつり上がり、すごく恨んだ顔で私を睨みつけている。

しかも、目はつり上がってるけど、口はにやけて笑っていた。


切り付けられるまで、全く気配を感じなかったので、頭の中は真っ白だった。

そして、その男性は話し始めた。


「お前は、顔が可愛いことを餌にして、多くの男を騙してきたんだろう。皮の下は醜い豚だ。俺は、そんなお前に天誅を下すんだ。」

「何のことなの。」

「何、とぼけているんだ。お前のせいで死んだ男もいるって知っているだろう。」

「もしいても、私のせいじゃない。」

「そうやって、自分を正当化するんだな。お前は、本当に醜いな。この世の中から消えてしまえばいいんだ。」


その男性が、お腹を押さえている私の上に乗っかってきた。

そして、顎に手をかけ、顔を上げる。

にたっと笑うと、もう一回ナイフを振り落とそうと、手を上げた。


その時、こんなことが起こるだろうと思い、澪が依頼していたボディーガードが駆け寄る。

男性を押さえつけた。遅いじゃないの。


「なんで、こんな性悪な女を助けるんだ。お前らも騙されているんだ。正気に戻れよ。」


男性は、大騒ぎをしたけど、プロには勝てず、両手を後ろで縛られた。

そして、ボディーガードが呼んだ警察に連行されていく。


後日、私を襲った男について警察から聞かされた。元カレの弟さんだと。

お兄さんがお風呂で自殺したのは私のせいだと思ったのだと。

私の行動を調べて、あの場所で殺そうとしたと警察に語ったらしい。


部屋に盗聴器を仕掛け、周到に調べたと言う。

どのような周期で外出するのか、友人と会ったりしているのか。

部屋では1人だけなのか、防犯グッズとか持っていないのかなど。


鍵のことは、彼の仕事が鍵屋だということで納得した。

鍵を落とした人の依頼で、鍵を開けることも仕事だと言っていた。


家での物の置き方が違うというのは、一旦動かして戻すときに間違えたらしい。

でも、知らない男性が家の中にいたなんて気持ちが悪い。

そして、それを許してしまう家の防犯レベルの限界も感じた。


そもそも、横の部屋を借りて、小さな穴を開ければいろいろなことができてしまう。

壁に耳をすませれば、いろいろなことを聞くことができる。

そんな危うい場所を安心して生きてきたことが間違っていた。


そして、今夜、この暗い道を歩いて帰宅するのが夜8時ぐらいだと分かった。

そこで襲う計画を立てたと警察から聞いた。

私の過去の行動が引き起こした事件だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ