⑦
棘のケガから数日がたった。
あのあと、リトラン公爵とともに屋敷に帰ってきたお父様にわたしは
「しばらく庭園に行くのは禁止だ!!」
と、青ざめた顔で宣言されてしまった。
…悪いことなんてしてないのに。
ただ薔薇の花に少し触れようとしただけなのに。
そういえばお父様はわたしが薔薇を育てたいと言った時も、困ったように笑いながら
「薔薇じゃないとだめなのかい?
ほかの花に…ほかの花を育ててみるのは?」
なんて言ってたっけ?
あれもどうしてだったんだろう。薔薇になにかあるんだろうか。棘があるから危ないってこと?
あの時できた傷はそんなにひどいものではなかった。
手当してくれたメイド頭も、出血量に比べて傷は小さなものだと首を傾げていた。
大げさに包帯なんて巻くからお父様がとんでもなく心配したのよ!痛みだって…
………セルジュが近づかなければひどくならなかった。
あのあと、お兄様とセルジュと3人で話をした。
昔はよくこの屋敷に遊びにきていたこと。小さな頃の記憶だからほとんど曖昧だけど、たしかにほんの少しだけ覚えがある。
…よく抱っこしてくれた気がする。
…なんだろう、なにかよく言ってた気がする。
なんだっけ、なにか言ってた。
まるで《呪文》みたいに……
「マルー様?」
部屋にいたリタに声をかけられ、ハッとする。
「どうかされましたか?顔色が少し悪いような気がしますけども…。」
「ううん、大丈夫!なんともないよ。」
《呪文》なんて言われるわけないか。
ただの日常会話をそんなふうに記憶するなんて、わたしの記憶力も大したことないや、と頭を振る。
「いかがしますか?
本日は書庫に行きたいとおっしゃっていましたが…。」
「そう、そうなの!
書庫に行って調べたいことがあるの!」
あの日咲いた大輪の薔薇。
もしかしたら知らないだけでそういう品種だったのかもしれない。
庭園禁止令が出ているからダリオになかなか会えないし、詳しいことが聞けないんだもの。それなら書庫に行って調べてみようと思ったのだ。
「よしっ!書庫に行ってくるわ!」
1人で大丈夫!書庫にしか行かないから!とリタに宣言して、マルーは小走りで書庫に向かったのだった。




