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棘のケガから数日がたった。


あのあと、リトラン公爵とともに屋敷に帰ってきたお父様にわたしは


「しばらく庭園に行くのは禁止だ!!」


と、青ざめた顔で宣言されてしまった。

…悪いことなんてしてないのに。

ただ薔薇の花に少し触れようとしただけなのに。


そういえばお父様はわたしが薔薇を育てたいと言った時も、困ったように笑いながら


「薔薇じゃないとだめなのかい?

 ほかの花に…ほかの花を育ててみるのは?」


なんて言ってたっけ?

あれもどうしてだったんだろう。薔薇になにかあるんだろうか。棘があるから危ないってこと?


あの時できた傷はそんなにひどいものではなかった。

手当してくれたメイド頭も、出血量に比べて傷は小さなものだと首を傾げていた。

大げさに包帯なんて巻くからお父様がとんでもなく心配したのよ!痛みだって…



………セルジュが近づかなければひどくならなかった。



あのあと、お兄様とセルジュと3人で話をした。

昔はよくこの屋敷に遊びにきていたこと。小さな頃の記憶だからほとんど曖昧だけど、たしかにほんの少しだけ覚えがある。

…よく抱っこしてくれた気がする。

…なんだろう、なにかよく言ってた気がする。


なんだっけ、なにか言ってた。

まるで《呪文》みたいに……


「マルー様?」


部屋にいたリタに声をかけられ、ハッとする。


「どうかされましたか?顔色が少し悪いような気がしますけども…。」

「ううん、大丈夫!なんともないよ。」


《呪文》なんて言われるわけないか。

ただの日常会話をそんなふうに記憶するなんて、わたしの記憶力も大したことないや、と頭を振る。


「いかがしますか?

 本日は書庫に行きたいとおっしゃっていましたが…。」

「そう、そうなの!

 書庫に行って調べたいことがあるの!」


あの日咲いた大輪の薔薇。

もしかしたら知らないだけでそういう品種だったのかもしれない。

庭園禁止令が出ているからダリオになかなか会えないし、詳しいことが聞けないんだもの。それなら書庫に行って調べてみようと思ったのだ。


「よしっ!書庫に行ってくるわ!」


1人で大丈夫!書庫にしか行かないから!とリタに宣言して、マルーは小走りで書庫に向かったのだった。










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