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「…………セルジュ様。」
マルーが足をとめてピタッと止まる。
「!
なに?マルー。」
やっと話しかけてくれたマルーに
セルジュは嬉しそうに返事をする。
いつもはどんなに怒らせても、
すぐに機嫌をなおして話してくれるマルーが
今日はなかなか返事をしてくれなかったから。
(…………やりすぎたかな。)
ここのところ、
セルジュはマルーに触れることがやめられないでいる。
特に脇腹をなでられた時のマルーの顔は
セルジュの加虐心に火をつけるから。
(……………あの顔はたまらない。)
マルーに言ったら怒るであろうそれを
セルジュは心の中で溜め込んでいる。
…………あの男も同じ。
相手の苦しそうに悶える姿を見て喜ぶ嗜好。
そして、その対象をマルーに定めたこと。
だからセルジュは聞かせたのだ、
マルーの甘美で小さな叫び声を………
自分が『出させている』と見せつけるために。
「…………30分だけ、1人にしてください。」
違うことを考えていたセルジュに
マルーの突拍子もないお願いが聞こえ
おもわず「は?」と短い返事をする。
「30分だけでいいんです!
そうしたら……機嫌なおしますから。」
お願いだから、と懇願の目をするマルー。
……………そうきたか。
「…………それなら、
マルーも俺のお願い聞いてくれる?」
「!」
「聞いてくれるならいいよ、いっておいで。」
マルーにそう伝えると
セルジュは近くにあったベンチに座った。
「っ………
わかりました………!」
そう言うとマルーはセルジュに背を向け歩き出した。
どこに行くのか知らないが、
ここは以前に迷子になったような路地裏はない、
大通りが続く商店街だ。
そうそうに迷子になることはないだろう。
…………バカだね、マルー。
俺のお願いが何かも聞かないで。
くっくっと笑ってセルジュは、
おとなしくマルーを待つことにした。




