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新婚の夫婦のような見送りを終え、
セルジュは仕事に出かけて行った。
セルジュは自分をからかって楽しんでいる。
マルーが同じようにからかっても
それを逆手にとって
最終的に笑うのはいつもセルジュだ。
………うまくいかない。
いつも自分ばかりが顔を赤くして
セルジュの一挙一動に踊らされている。
あれが大人の余裕なんだろうか?
ただ単純に、
からかうのが楽しくてやってるだけのように見える。
「…………やーめた。
考えたってしかたない。」
それよりも
今日こそはあの本を読んでみよう。
夢にまで出てくるぐらいだから
きっと心の中で気になっていたんだろう。
「たしかトランクの中に入れてきたはずだから……。」
ベットから降りてマルーは
自分のトランクの中をゴソゴソと探してみる。
最後に見たのはいつだったかな……
分厚くはないがある程度の大きさはある本だ、
トランクの底に埋まってしまってるかもしれない。
「…………………あれ?」
そう思ってトランクの中身を全部出してみたが
あの黒い本は出てこなかった。
この旅に出てから外に出した覚えはないから
どこかに置いてきたわけでもないのに………
「…………まさか。」
セルジュが勝手にトランクの中を……?
「いやいや、まさかそこまでは。」
………とは言い切れない自分がいる。
だがそうと決まったわけではない、
婚約者を疑うなんて失礼極まりないことだ。
「持ってきたと思うんだけどなぁ……
屋敷に忘れてきたのかなぁ。」
う〜ん………
こうなると余計に続きが気になってくる。
あの夢のとおりなら
弟はお姫様のところに戻ってきた。
でも弟はなぜ戻ってきたんだろう?
やっぱり王位の座に就きたかったのか、
それとも姉が騎士と結婚すると知って
お祝いにもどってきたんだろうか?
「………気になる。」
こんなことなら子供の頃に全部読んでおけばよかった!
屋敷に手紙を出して、忘れてないか聞いてみよう……。
本の続きは気になるが、無いものは仕方ない。
マルーは汗をかいてベタベタする体をサッパリさせようと、浴室に向かったのだった。




