㉓
「か、かたづけてっ……!!
その薔薇をどこかにやって!!」
目が覚めて自分の視界に入った真っ赤な薔薇を、マルーは恐ろしいと感じ、母に訴えた。
あの夢で見た血の色と同じだ。
あの夢はなんだったの?
あの女の人は、自分を抱きしめる男の人を弟と言った。
……でも、男の人は言った。
愛していると。
弟なのだから、抱きしめられたその人はきっと姉だ。
家族ならば愛しているだろう。
でもあの男の人の目は、家族への愛を語る目じゃない。
お父様たちがわたしに向ける目じゃなった。
………あの目を、見たことがある。
「マルー?どうしたの?
あなたが大好きな薔薇の花じゃない。
心配したセルジュが持ってきてくれたのよ?」
「…………セ。」
セルジュ………
あの日、セルジュに脇腹を触れられた瞬間、
世界が真っ暗になったような感覚に襲われた。
何かが体中に巻き付くような感覚。
脇腹だけだったあのチクチクした痛みが、全身に巻き付いたようだった。
あの痛み、あの感覚、味わったことがある。
「………薔薇の、棘。」
そう気づいた時、マルーの体から血の気が引いた。
あの脇腹の痛みは、薔薇の棘が刺さった時の痛みと同じだ。
ならばあの時全身に感じた痛みは、
「!!!」
そう気づいた瞬間、マルーは服を捲し上げて脇腹のあざを確認した。
何をしてるの!!と、そばにいた母は驚いてマルーの手首を掴む。
「…………な、い。」
薔薇の形に似たあざが、きれいさっぱり無くなっていた。




