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21g実験

遅れて芹沢がやってきた。

芹沢「今、水野助教授とすれ違ったんですが、鬼の形相で何か呪文を唱えてましたよ…」


湯川「ああ、それな…気にするな…怒りが転写された君のお茶もあるから飲んでくれ。」


芹沢「えっ…状況はなんとなく掴めました…」


湯川はラボのホワイトボードをバンッと叩きながら、人間が最後に書き込むデータの質量についておもむろに話始めた。


湯川「“人間は死ぬと21グラム軽くなる”って話があるだろう?」


玲「はい。魂が抜けたって言われるやつですね」


湯川「アレはな、もとは1907年、マクドゥーガルって医者がたった6人で試したっていう“統計ごっこ”が起源でね。

21gって数字は、正直**“当時の天秤の精度でたまたま出た数値”**に過ぎない。

……だが。だがだ!」

(ホワイトボードに“21g = 0.206 N”と勢いよく書く)


湯川「現代の技術ならその辺で売ってる安っすい24bitADコンバーターと0-100(kg)のロードセル、サーモ・エアロ絶縁制御下で動的揺らぎの検出が可能だ!

分解能にしたらなんと6mgだ!


特定個体に対する死亡直前後の質量差と体表ガス排出・血圧揮発の影響を除外すれば——

たとえば**“再分布されない重力場応答の瞬間波形”**を抽出できる可能性は、あるッ!

なんなら、0-50(kg)のロードセルをベッド四隅に配置した“逝去台”を構築すれば、理論分解能は約3mgに達する。

各センサーのリアルタイム応答から、“頭部から抜けたのか”、“脚部から抜けたのか”、あるいは心臓付近(左胸)から抜けたのかといった重心偏移の瞬間波形まで観測可能になるだろう。

もちろん、最大の課題はセンサードリフトおよび環境ノイズの影響だが……

空調隔離された恒温室下での観測環境と統計的補正アルゴリズムさえあれば、これは十分補正が可能と見ている。」


玲「(若干引きながら)……え、やったんですか?それ」


湯川「やるわけないだろう!倫理審査が通らん!

医学部に申請した瞬間に私は即・懲戒、実験装置は“物理ではなく政治により解体”だ!」


芹沢「つまり先生、やりたくて仕方ないんですね」


湯川「できれば空調隔離室+ロードセル式“逝去台”+三軸レーザー干渉計が欲しいッ!

……だがラボにあるのは“ラジカセと自作ドローンだけ”だ!!」


ここで無意識に玲が言ってはならない発言をしてしまう。


玲「でも教授、それって死ぬときに一番近い“逝去台”に書き込まれたらプラスマイナスゼロになりませんか?」


湯川「え…?」

芹沢「え…?」

玲「え…?(私、何かマズい事言ったかな…)」


3人は顔を見合わせ暫しフリーズ。

湯川教授は例外エラー→フリーズ→シャットダウン→再起動のシーケンスに突入したようだ…。

その後、湯川は机に座り一言も発せず部屋の隅を見つめている。


芹沢「(今はデフラグ中かな…)」

玲「き…今日は無理そうなんで帰りましょうか…」

芹沢「そうだね…」



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