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フォノン・ラボ

芹沢「この間、玲の話を教授にしたら物凄く興味持ってた。是非、連れて来いと(笑)」

  「量子感応機構研究室(通称:フォノン・ラボ)」湯川教授って言うんだ。」

  「会ってみる?玲の不思議な能力も何かわかるかも知れないよ」


玲「“湯川教授”って、絶対アレだよね。“実に興味深い”って言いながら難事件を論破するあの感じ……」


芹沢「あ…、まあそれは会ってからのお楽しみって事で。」


玲 「(え?違うの?気になるし調査がてら会ってみよう)」




夕方、玲の携帯が鳴る。芹沢からだ。


芹沢「今からでもいいからすぐ連れて来い!ってw 行ってみる?」


玲 「え!いきなり湯川先生に会えるの?行く!」


芹沢「じゃあ、先端科学総合研究棟まで来て!N11だよ。下で待ってるから。」


玲 「了解!」


(研究室のドアをノック) > 「失礼しま……うわっ⁉︎」」


湯川「おお、君が噂の響くんかね?よしよし、さっそくだが君の脳波を測らせてくれたまえ!ささっ、電極は清潔だぞ!」


玲 「(え?湯川教授と言うか阿笠博士じゃん…)」


(玲・小声) > 「実に興味深い……って言ってくれるかと思ってたのに……」


芹沢「おい…」


湯川「ん?言って欲しいのかね?ほっほっ……では改めて——実に、興味深いっ!」


(玲、吹き出しながら) > 「……言ってくれるんだ(笑)」


湯川「まあ散らかってるがそこらに座ってくれ。」


部屋の中にはアンテナ類や、見た事もない頑丈そうな計測器と思われるものが山積みになっている。


湯川「すまないね。座る所が無いだろ。その計測器の上なら大丈夫だから。あ、待ってくれ、座布団代わりにアースマットだけ敷かせてくれ。」


玲 「はい…」


芹沢は玲の反応を楽しそうに見ている。


湯川「でだ」


唐突に湯川教授の話が始まる。


湯川「君は見えたり聞こえちゃったりする系女子だって?」


玲「まあ、はい。昔は母も同じように見えたり聞こえたりしたらしいのですが、妊娠してから私にその能力が移ったみたいなんです。今の母は何も感じなくなったらしいです。」


「母も祖母から、その能力を受け継いだみたいで、どうやら女系しか受け継げないみたいですね。」


湯川「実に興味深い!」


玲「(あ、無意識に言ってる)」


玲「母には兄がいたのですが、兄にはその能力は受け継がれなかったらしいですよ」


湯川「なるほど。これは私の推論なんだが、この見えたり聞こえたりする能力は、昔は誰しもが持っていた能力だと思うんだ。

ほら、「空気を読む」とか「あの人とは波長が合う」とか言うだろ?

あと、「魂を込めて作る」なんて言葉や、子供の頃に大切にしていたぬいぐるみ、指輪なんかにも念がこもるなんて言う。

鈍感な人でも分かりやすい例えは臓器移植だ。

あれなんて正にドナーの好物だったものが、何故か食べたくなる。なんて言うだろ?

脳の神経量子場が臓器に記憶を書き込んでいるんだと思う。

要するに、念というものは時間や場所を越えて保持される“感情エネルギー付きのデータ”であると考えられる」


玲「確かに。私もそう思います。同じ場所で見えたり聞こえたりするものの、同じ事がずっとループされている感覚です。」


湯川「やはりそうか。「記録は“脳”だけでなく、“臓器”や“土地”にまで宿る」と私は思ってる。

昔は皆が持っていた能力だが、時代の進化に伴う利便性向上などで、能力が退化したり休眠してきたんだろうな。

君の家系だけじゃない。他の人も持っているが眠っているだけかも知れない。

まあ私は協調性があまりないので偉そうな事は言えないが、見える人と一緒に肝試しに行くと、普段見えない人の中から見える人が出てくる。

これっておかしいと思わないか?“空気を読んで合わせてる”とは思えないくらい、本気で驚いてるんだよな、あれ。

精神的に限界状態になって怖がってると言うのも考えられるが、見える人がレピーター(中継装置)になってるんじゃないかと。“見えるとか聞こえる”その記録が基地局、君がレピーター、そして突然見えるようになった人達が受信端末。でもね、ただの端末じゃない。“観測の資格を得た者”なんだよ」


玲「それ、心当たりがあります。以前、肝試しに付き合わされて、確かにそういう事がありました。私が原因だったのかな?

普段なら見えても驚かないのですが、その日は恋バナしながら歩いていて、油断してたらいきなり目の前に出てきて私も驚いてしまいました…」

「そこから5人中3人が見えるようになっちゃって・・・残りの2人は急に3人が見えるとか言い出したのでパニックになって、結局、全員でパニックになってましたね」


湯川「うむ。その君の驚きが友人に干渉・同調・共鳴して、その友人にも見えてしまったんだろう…」


芹沢「げっ、迷惑…」


湯川「まあ君は、いろんな波長を感知できる……いわば“スペアナ女子”というところかな」


芹沢「教授、“女子”を付けときゃ何とかなるって発想、そろそろやめた方が……」


玲「……え? スペアナって何んですか?」


湯川「今、ちょうど君が座ってる、それだよ」


芹沢「ちょっ、教授!?まさか玲ちゃんをスペアナの上に座らせたんですか!?」


湯川「問題ない。アースマットを敷いてあるし、ちゃんと接地してある」


芹沢「いや、そういう問題じゃないですから…… 玲、それ、たぶん2000万円くらいする“椅子”だよ……」


玲「えっ!? ええええええーーーーっ!!」

(※このあと、玲はその“超高級椅子”に二度と座れず、芹沢が向かいの研究室から普通の椅子を調達してきた)


湯川「スペアナ——正式には“スペクトラムアナライザ”といってね。 簡単に言うと、電波や信号に含まれる“波長成分”を可視化する機械だ」

湯川「君の感覚もそうだ。記録に書き込まれた“感情のピーク波長”を読み取る能力がある」

湯川「記録の書き込み波長は、人によって違う。だからまず、“どんな感情で刻まれたか”を把握しなきゃいけない」

湯川「つまり……波長=感情の指紋、というわけだ」

湯川「そして、読み取るときは“その感情”と同期しないと、記録はノイズとして再生されるだけだよ」


玲「……ふむ……なるほど……」 玲「……さっぱりわからん……」


(夕方、記録研究室。玲の前に静かに佇むスペクトラムアナライザ)

湯川「……今から君が記録を読み取るときの波形を、 スペアナで計測してみたい気もあるが……」

(機器のスイッチをちらりと見て)

湯川「……電源を入れてから安定動作に入るまで、 30分以上は掛けたいところなんだよ。うん。今日はやめておこうか、次の機会にしよう」


玲「……家電みたいにすぐ使えるもんじゃないんですね」


湯川「ふふ、まあな。これは“観測の儀式”みたいなもんだよ」

湯川「——というわけで、今日はお開き。また明日、頼むよ」



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