「霊研」
今日は、幽霊研究会——通称「霊研」の活動日だ。
SNSに散らばる心霊現象の噂を収集し、実地調査を通じて検証するという、ややスリリングな研究会である。
扉を開けると、そこには青白い顔の“小鹿のような女性”がいた。 彼女こそ、霊研の会長「橋爪 柚」、通称ゆず会長。大学4回生。
ビビりなのに、なぜか会長。 いつもこう言っている。
「霊?霊とか全然信じてないし……!……し、信じたら寄ってくるって言うし!!」
「……ってか、なんであたしが会長なんだろ!?も、もうやだぁぁ……!」
自ら立ち上げたわけでもなく、気づけば最古参になっていて、自然と“霊研の顔”を引き受ける羽目になったらしい。
「ゆず会長、うち岩国なんですけど、近所の大楠に“男性の霊”が出るって噂が上がってました。週末帰省するんで、一緒に行ってみません?」
「だ……男性の霊!? い、いいでしょう!やってやるわよ!!」 (何を“やる”つもりなんだ……)
「その大楠、けっこう並木になってて、未調査の個体も多いと思います。男性の霊って、私もそこで見たことないですし……」
実家の近くには、推定樹齢300年を超える楠が15本。 うち数本は、地元でも“曰く付きの楠”として囁かれている。
「15本!?うそでしょ……週末までに“戦えるように”お守り買っとくわ!!」 (……だから何と戦うつもりなんだろう)