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2025年、大日本帝国は異世界へと飛ばされた  作者: ガーレ
第3章:帝国による大戦争
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合同参謀本部

 連合王国に従属する4つの対岸大公国——「ホーロンド」、「ゲーデン」、「フロンドレ」、「ワロニスク」。これらは、()()と名につく通り、連合王国の中枢であるバルバリア島の対岸、中央大陸に存在する領土である。これは凡そ200年前の「護国卿戦争」時に連合王国が帝国から奪った土地であり、帝国からしてみればこの地は失地であった。同時期に奪われたセーネス王国のリーン川西岸地域と合わせて、帝国では西()()()()と呼ばれている。


 2026年5月。帝国軍は凡そ200年ぶりに連合王国領に足を踏み入れた。彼らの主力は驚くべき事に皇帝直属の帝国中央航空艦隊であった。ここで帝国の最強戦力を連合王国に向けて投入してきたのだ。

 帝国軍は脆弱な国境守備隊の上空を悠々突破し、連合王国はゲーデン、ワロニスク両国への侵入を許してしまう。


「もう突破されたのか! 早すぎるぞ!」


 連合王国王立陸軍は慌てて対岸大公国への増派を決定。本土に4個あるうちの2個航空艦隊に出撃を命じた。

 これより始まるは地獄の大空戦である。


「航空艦を守れ! 絶対に撃ち落とされるな!」

「帝国の竜どもを撃ち落とせ! 術式展開、発射!」


 次々と迫ってくる帝国軍の竜騎士に対して、連合王国軍は3人1組のチームで対抗する。竜と妖精の魔導戦というのは、日本人が見ればまるでファンタジーの世界に見えるだろう。しかし、現実には生死をかけた血みどろの戦場である。


 連合王国軍は奮闘を続けるも、決死の総攻撃とも言うべき帝国軍に対してジリジリと押され続ける。そして、連合王国は戦線の北側で突破を許してしまった。


「まずい、このままでは大きく包囲されるぞ」


 連合王国軍上層部は戦線を立て直すべくホーロンド、ゲーデンの北部から撤退を決意。しかし、この撤退の際にも帝国軍の追撃にあい、大きな損害を出してしまう。帝国軍の奇襲に対して連合王国軍は明らかに劣勢であった。


 この状況に焦ったのはセーネス王国だ。このまま連合王国が中央世界大陸から撤退してしまえば、帝国軍は連合王国領を経由して北側からセーネス王国になだれ込んでくることになる。


「ウィリングハム卿、同じ帝国に対峙する者として腹を割って話しましょう。連合王国領にセーネス軍を入れてください」


 セーネス大使及びセーネス軍の高官達は連合王国外務省を訪れ、外務卿、参謀総長に共同戦線を張ることを提案する。


「いや、それは受け入れられない」


 連合王国側はその提案を当初拒否していた。国境北部は劣勢とはいえ国境南部では守り切れている。この状況でもし仮想敵であったセーネス軍を入れてしまえば、現場の士気に影響しかねなかった。


 しかし、戦況は刻々と変化している。

 2026年6月、ホーロンドの首都「ハーレム」、ゲーデンの首都「アーンヘム」がほぼ同時期に陥落。連合王国の劣勢はほぼ決定的となった。ここで、帝国の北部攻勢は停止する。次に狙われたのは南部、連合王国とセーネスの国境部に広がる森林地帯——「アルデネン」であった。


「く、クソッ。地上からの支援が無いと帝国軍の航空艦隊が止められない」


 帝国軍は今度はアルデネンの森上空に航空艦隊を集中投入してきた。森林地帯に地上の魔導砲を持ち込むのは難しく、こちらも航空艦隊で対処するしか無いが、連合王国の主力航空艦隊は本土侵攻に備えて待機しており、また対岸にいた2個航空艦隊も北部での反攻作戦に投入されていた為援軍は期待できなかった。


 もし、ここでセーネス第3軍の航空艦隊を受け入れて共闘できていれば戦局は何か変わっていたかもしれないが、戦争にIFは存在しない。


 アルデネンの森において、連合王国の現地飛行兵部隊は最後の1名まで懸命に戦った。それはそれは凄惨な戦いであり、帝国軍の竜騎士にも犠牲を強いることになったが、肝心の航空艦隊本体に大きな損害を与える事は叶わなかった。


 帝国中央艦隊は未だ負け知らずのまま、連合王国領を抜けてセーネス領に突入する。待ち構えているのはセーネス第3軍だ。が……


「帝国艦隊が、西へ転進していきます」

「なんだと……もしや!」


 帝国軍は連合王国とセーネスの国境を縫う様に移動し始めたのだ。明らかに分断の意図があった。

 しかし、それはセーネスにとってチャンスでもある。


「突出した帝国軍を分断包囲するチャンスだ」

「し、しかし、我々は連合王国領に入れません」

「ぬ、ぬぅ」


 このチャンスを活かせるかは、連合王国、セーネス両上層部に託された。




——————————


「今や一刻を争います。面子なんて気にしている場合ではありません。即座に我が軍の入域許可を!!」


 セーネス軍の高官は声を荒らげる。連合王国側もこれがこの戦争の分水嶺になる事は理解していた。しかし、中々首を縦に振ることはできない。時間は迫っている。会議室で悩んでいる暇はない。

 連合王国は譲歩案を提案した。


「連合王国=セーネス合同参謀本部を設置しましょう。そこで立案された作戦であれば、両軍が両国を自由に行き来できる。これで、どうでしょうか」


 セーネス側は即座には応じず、これに条件を加える。


「合同参謀本部の人員は中央大陸に展開する陸軍規模に応じて8:2。これでならこの案に賛成です」


 これに連合王国は苦い顔をする。8:2という極端な比率に不満を持ったのだ。


「我が国としては5:5が理想と考えます。ですが陸軍規模に差があるのは事実……6:4ではいかがですか」


 駆け引きの結果、最終的に人員比は6:4で決着がついた。しかし、その頃には既に帝国軍中央艦隊は海岸付近まで進出してきていた。もはや時間は無かった。


「帝国軍を! 分断せよ!」


 合同参謀本部では急いで連合王国軍とセーネス軍で帝国軍突出部を分断包囲する作戦が立案された。しかし、この命令が出るには既に遅すぎた……。

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