表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年、大日本帝国は異世界へと飛ばされた  作者: ガーレ
第3章:帝国による大戦争
25/34

越境

いつか地図を用意したいですね

 2026年3月。アトゥス教世界を守護する()()——その皇帝は「失地回復戦争」を宣言し、セーネス王国に対して越境を開始した。

 最初に侵犯されたのは帝国とセーネスの国境となっているリーン川沿岸地域であった。


「帝国軍が攻めてきたぞ!」


 リーン川を越えてきた帝国軍の動向は、国境警備隊からすぐにセーネス大陸軍(グランダルメ)上層部へと伝わった。


「第1軍、第2軍は即座に国境へ。我々グランダルメはまだまだ健在だと言うことを帝国の奴らに知らしめるのだ!」


 大元帥アラン・ベルトランは咆える。

 セーネス海軍主力は大日本帝国に完膚無きまでに敗北した。主要都市も大日本帝国の謎の攻撃で焼き尽くされた。しかし、陸軍は、陸軍だけはほぼ無傷のままであったのだ。

 セーネス軍の威信にかけて、これ以上の敗北を許す訳にはいかなかった。




——————————


 セーネス、帝国両軍が最初に激突したのは国境から程近いセーネス側の都市——ステラブールであった。ステラブールの戦いは、この世界において初めての魔導武器同士の激突として歴史に刻まれることになる。


 攻撃を開始したのは帝国軍だ。魔導砲を搭載した航空艦の攻撃により、都市は瓦礫と化した。そこに地上から進出してきた魔導砲部隊も加わった。

 充分に爆撃を浴びせた後、歩兵部隊が占領にかかる。しかし、そこに集中砲火を浴びせたのがせーネス軍の砲兵部隊である。都市に迫った帝国軍の歩兵は周囲から突出しており、セーネス軍はそれを3方から叩ける形になったのである。

 こうして帝国の第一次攻勢は失敗に終わった。


 その後、航空戦力同士の激突が始まった。航空艦も竜騎兵も練度は互いに互角であるが、最近内戦を経た帝国の方が一歩上手であり、セーネス航空艦隊はジリジリと押されていく。

 しかし、越境してしまえば地上からの対空砲火に晒されることになり、空中戦で勝っていても帝国側は航空戦力をなかなか前に進めることができない。


 こうした中、セーネスによる反抗作戦が開始された。帝国軍の撤退した中央を追撃し、あわよくば突破しようと考えたのである。しかし、これは先程の帝国軍の二の舞いになる結果となった。

 突出したセーネス軍は帝国軍の砲兵陣地から浴びるような砲弾を受けた。また、空からの攻撃もフリーで受ける結果となってしまった。


 この時点で数万人規模の死傷者が出ているが、戦闘は終わらない。


 この後、帝国は3度ステラブールに攻勢を仕掛けた。しかし、都市の残骸を活かして造成されたセーネス側の防御陣地は頑強であり、その全てで失敗に終わる。

 セーネス側は先の失敗を活かすべく側面を攻撃するも、こちらも増派された帝国軍により全て食い止められた。

 互いが互いに突破することを阻止する為の塹壕陣地が南北に連続して掘られていき、ステラブール周辺では()()()の様相を呈することになる。




——————————


 一方、山岳地帯アルピーアの戦線はセーネス軍が圧倒的に優勢であった。


「帝国本軍はまだ来ないのか!」

「俺達だけでは持ち堪えるのは無理だ」


 先の日セ戦争でセーネスから独立し、帝国の傘下に加わったサヴォニア公国を始めとする現地諸侯軍がアルピーア戦線では抵抗していた。しかし彼らは旧来の魔法使い中心の軍隊であり、高度に魔導化されたセーネス軍には到底火力で及ばなかった。

 また、元々領土であったこともあり、セーネス軍が地形を熟知しているというのも順調な攻勢に拍車をかけていた。


「なんだ、帝国軍と言っても烏合の衆か」


 アルピーア戦線に投入されたセーネス第4軍は早々にサヴォニア公国領を全土占領し、再度併合する。その後もセーネス軍は止まることなく、帝国領邦スキーズ連邦領やマイラノ共和国領へと侵入を果たした。


 ここで漸く魔導化された帝国本軍がアルピーア戦線へ到着する。しかし、時既に遅し。既に山脈を超えたセーネス軍に対して、帝国軍はジワジワと押されていくことになる。


 アルピーア戦線でセーネス軍がようやく止まったのはポー川に到達した時であった。それと同時に、ネアスポリス共和国を始めとする帝国諸侯の領土であったイタロ半島は、セーネス海軍南洋艦隊に包囲されたこともあり、次々と降伏する事になる。




——————————


 状況を整理すると、帝国とセーネスの間には2つの大きな戦線がある。

 北の平地であるリーン戦線では、セーネス軍は越境こそ許すものの帝国軍の攻勢を食い止め状況は拮抗、南はアルピーア山脈から北は中立の連合王国領まで互いの塹壕が伸び、地獄の塹壕戦を展開している。

 一方の南の山岳地帯アルピーア戦線では、セーネス軍が圧倒的優勢であり、南洋に突き出た形をしているイタロ半島を完全制圧、ポー川を境に睨み合う形となった。


「まさか、この時代に列強同士の大戦争が起きてしまうとは」


 この状況を連合王国は以下のように分析していた。

・塹壕戦となってしまった以上、人的資源の消耗に耐えた方が勝つ。

・帝国は連合王国を始めとした全方位を仮想敵国に囲まれており、セーネスに戦力を集中することができない。

・また、帝国は新教戦争を終えたばかりであり、内部に患いを抱えている。

・一方のセーネスは、連合王国以外の仮想敵国を抱えておらず、ほぼ全ての戦力を帝国戦線に割く事が出来る。

・それに、国民人口は帝国の方が圧倒的に上回るも、徴兵体制はセーネスの方が盤石であり、徴兵人口はセーネスの方が上回ると推測される。

——よって、セーネス王国の勝利に終わる、と。


 ともあれ連合王国は楽観視していたのだ。これは対岸の火事であると。中央世界西側は三つ巴、そのライバル同士が潰し合ってくれればいいと。

 しかし、逃れる事のできない運命はすぐそこまで迫っていた。


「が、外務卿……宜しいでしょうか」

「如何したんだねそんなに顔を青くして」

「帝国が、我が国の大使を逮捕したそうです……おそらくは」

「まて、それ以上は聞きたくない。……参謀総長に連絡せねば」


 連合王国の大使を逮捕した翌日、帝国軍は連合王国領への越境を開始した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アトゥス帝国も、結果として考えが甘かったわけですが……。 問題は、日本がどう動くか。 セーネス王国と連合王国がアトゥス帝国に征服されてしまうと、対岸の火事とは言えなくなるし。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ