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野良竜賊竜掃討作戦

 「新世界」ですが、日本領新米州のある北カンブリア大陸は北アメリカ大陸に、日本領新加州のある西アンディ諸島はカリブ海地域に類似した地域と考えて頂ければと思います。

 「(ドラゴン)」——それは、航空船が開発されるまで人類が空へ飛び上がる唯一の手段であった。


 その原産地は中央世界から遠く東の東方世界。そこで暮らしていたヒト種の「Crabian(スラヴァ族)」が世界で初めて竜を飼い慣らしたことで、人類は空からの景色を知った。


 竜の存在が中央世界に伝わったのは、スラヴァ族の大軍がRomarra(ロマーラ) Enstui(帝国)に侵攻した大事件——()西()()の時である。この際、スラヴァ族の軍団で竜騎兵が大量に運用された。

 それと同時期、ロマーラ帝国では魔法の黎明期を迎えていた。()()()使()()と呼ばれる存在によって戦場においてスラヴァ族の竜は捕獲され、ロマーラ帝国でも手懐けられるようになった。


 こうしてロマーラ帝国の手に渡った竜は、空を制する強力な兵器としてのみならず、高速輸送手段としても用いられるようになり、中央世界全体に瞬く間に広まった。


 一方、実は中央世界にはもう1種、空を飛べる存在がいる。

 ヒト型だが一転、蜻蛉(トンボ)の様な大きな羽を持つことが特徴的な種族——「Sprye(妖精種)」である。

 彼らも魔力を消費する事での飛行が可能であり、100年戦争の間、海峡を超えてくるセーネス軍の竜を退け続けた歴史がある。

 閑話休題。


 そんな竜だが、勿論のことながら、「新世界」には元々存在しなかった生物である。しかし、今やただの人類にとっては大変危険なほど野良竜が繁殖している状況にある。

 中央世界からの入植者は魔法が使える為、竜を自力で追い払うことができる。しかし、魔法を使えない先住民は無惨にも竜の餌となる他無かった。

 新世界原住民が激減しているのは入植者による迫害だけでなく、野良竜による襲撃の被害にあっているのも原因である。


 元はといえば新世界に竜を持ち込んで野良に解き放ったパルサリョール人やセーネス人が悪いのだが、領土を獲得し、新世界に噛んでしまった以上、大日本帝国にとっても他人事ではない。

 そこで、大日本帝国軍は持ち込んだ電子機材と急ピッチで造成した飛行場をフル稼働させ、「野良竜賊竜掃討作戦」を実行に移すこととなった。


 作戦の第1段階として、新米州や新加州では、目立つ山や丘の上にソーラーパネルで稼働する簡易レーダー施設が大量に設置された。これにより、先ず野良竜や賊竜、他国竜に対する監視体制が整えられていった。


 次に、竜は魔法生物であるからして、その他の魔法魔導手段と同様に高度800mより高く飛ぶことはできない。その為、新世界軍統合参謀本部では、陸軍「99式攻撃ヘリ」や、空軍「84式多目的ヘリ」の空対空ミサイル、30mm機関砲による攻撃が有効とされた。


「また竜が出たらしいぞ!」

「離陸急げ!」


 こうして、竜が出現する度に代わりばんこにミサイル担いで出撃し、毎日の様に駆除に明け暮れることになる。

 これでは何本ミサイルがあっても足りないと、1週間も立つ頃には竜の機動に慣れたこともあり、機銃による駆除に早々に切り替えられた。




——————————


 新米州では出没するほぼ全てが野良竜であるのに対し、新加州サン=ドム島周辺では所属不明竜の4割が人の騎乗している賊竜であった。

 彼らは飛行船舶を襲う空賊であったり、海上船舶を襲う海賊である。この地域で経済活動を行うにあたっては看過できない存在だ。

 その為、新加州においては野良竜賊竜掃討作戦のみならず、海軍の強襲揚陸艦、陸軍の水陸機動部隊を動員した大規模な海賊討滅作戦が実行されることとなったのだ。

 これに先立ち、大日本帝国は海賊を支援する国家を「海賊国家」と定義、宣戦布告無しに攻撃しても良いとする政令を出した。


 攻撃対象の第1弾はクバン王国——パルサリョール継承事件の際にパルサリョール王国の植民地から独立した歴史の浅い国である。モノカルチャー産業の上、貿易を中央世界列強に牛耳られており国民は貧しく、海賊に手を課さなければ外貨を得る手段に乏しい小国だ。

 そんなクバン王国に対し、大日本帝国は海賊の拠点になっていると思しき村落に徹底的な爆撃を行った。また、王都を上陸部隊で強襲することで国自体を占領、新加州へ編入してしまった。


 これを皮切りに、大日本帝国は海賊退治を名目とした西アンディ諸島に点在する小国への侵略を半年ほど続けることになる。この疑わしきを皆殺しにする行為は日本国内では「海賊戦争」と呼ばれ、実際に海賊減少の成果を上げるのだった。




——————————


 ポートゥ王国は海賊を生業とする国家である。国民は人魚種100%であり、海中から木造船に穴を開けて攻撃するハンターである。

 彼らは連合王国と同盟を結んでおり、アトゥス帝国やパルサリョール王国の船舶を狙って襲っていた。

 パルサリョールには恨みもある。中央世界から居場所を失ってから100年ほど、彼らはパルサリョールに集中して海賊行為を続けてきた。


 そんな中、彼らの縄張りである大西洋の、その西部に突如として現れたのが大日本帝国であった。

 彼らは大日本帝国の船舶を警戒し、連合王国と連絡を取りながら静観することを選んだ。その選択は今、この時、実を結ぶ事になる。


「大日本帝国が海賊狩りを始めました」

「やっぱりですかー」

「彼らは無差別に海賊国家を攻撃するつもりのようですが、あなた方には我々の後ろ盾がある」

「というとー、連合王国は私達にどうして欲しいのですか?」

「大日本帝国と国交を結んでは如何でしょうか」

「えー、嫌ですよそんなの。ヒト種でしょー」

「彼らはアトゥス教徒とは違って冷静で、話の分かるヒト達ですよ。それに、早くしないと」

「私達も海賊認定されるーってことですかぁ……むぅ」


 連合王国は大西洋の情報収集に人魚種を利用してきた。日本軍に海中への攻撃手段があるかどうかは定かでは無いが、潜水艦を有してる以上は何かしらあると考えるのが妥当だろう。

 このまま手をこまて、人魚種への攻撃が始まるとまずいと考えていた。


 こうして、連合王国の計らいで大日本帝国とポートゥ王国の間にコネクションが作られることになったのだ。だが……

 日本側は会談の際、日本船舶のみならずカンブル連邦、パルサリョール共和国船舶への攻撃もやめるよう訴えた。しかし、それは人魚族の国益を大きく損なうとして受け入れてもらうことは叶わず。

 人魚族との微妙な関係が始まることになったのだ。

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