セーネス=パルサリョール王国
Senes Kustui。中央世界最西端に位置する中央集権の進んだ君主制国家である。国家元首の位は「王」であるが、Atuthy Enstui皇帝には隷属しない独立王国であり、自身はPelsarol kustuiを始めとする様々な属国や植民地を従えている。5大列強の1つ。
国教はAtuthra。Atuthy Morと密接に関わる一神教である。遥か昔、Romarra Enstuiの属州であった頃に広まり、現在でも強く信仰されている。魔法使いを特権階級として扱い、アトゥス魔法を使えない種を奴隷階級とする文化はこの宗教からくるものである。
この国の歴史はヒト種Senesianの歴史である。
ロマーラ帝国が滅亡した後、混沌とした時代を経た後に中央世界はアトゥス教の宗教権力により再び統一の道を進んだ。それを主導したのがセーネス族と共にロマーラを滅亡させたDominianであったのだが、彼らは文化的に相容れることはなく、衝突を繰り返した。
中央世界の中心から次第に追いやられていったセーネス族は、大陸西部に暮らしていた妖精種を迫害しながら西進し、大陸最西端の地に安住の地を得る。この際に妖精種を不毛の土地Barbaia島に放逐したことで、今まで続く連合王国とセーネス王国の確執が生まれた。
長らく首都Pharus周辺のみを治めていたセーネス王権は皇帝に忠誠を誓う諸侯王国であった。しかし、周辺のセーネス族諸侯を征服し、独立戦争に勝利したことによって皇帝に支配されない独立王国となった。これにより、セーネス族はドミニ族の支配から脱却した。
ここからセーネスは覇権国家としての道を歩み始める。帝国や連合王国、歴史に残らぬ数多の小国と幾度と無く戦争を繰り返しながら版図を広げていったのである。
歴史の授業はもう少しである。お付き合い頂きたい。
ロマーラ帝国の滅亡後、ロマーラ族の生き残りはドミニ族、セーネス族、Izmilra勢力、人魚種に迫害され、散り散りとなった。
そんな中、一部の生き残りが中央世界南端に打ち立てた王国がパルサリョール王国である。彼らは帝国の力を借りて人魚種やイズミル教の勢力版図に再征服を繰り返すことで勢力を拡大し、繁栄した。
人魚種を追って新世界を発見し、次々と新世界文明を征服していったのもパルサリョールである。
パルサリョール王国は帝国諸侯でありながら、国境を接しているセーネス王国とは対連合王国、対人魚種という点で歴史的な友好関係にあった。
そんな中、事件が起こる。パルサリョール国王が跡継ぎを残さず亡くなったのである。パルサリョール王冠は家族ぐるみで付き合いのあったセーネス貴族の手に渡り、じきにセーネス国王の息子に渡る。
パルサリョール継承事件が発生した。今から20年程前のことである。セーネス=パルサリョール王国という最強国家の誕生に連合王国、帝国共に激震が走るが、どちらも戦争に動く事はなかった。国がひっくり返るような大戦争になることは確実だったからである。
こうしてパルサリョール王国は帝国諸侯としての緩い独立を喪い、セーネスに隷属することとなったのである。
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「パルサリョール議会は、本日を以て国王の全権限を停止する」
「大日本帝国に対し、白旗を掲げよ」
パルサリョールは日本に対して単独で降伏した。港からセーネス艦隊を追い出し、日本艦隊を受け入れた。
全ての教会、役場、その他公共機関からセーネス旗が降ろされ、パルサリョール旗と白旗がはためいた。
それと同時、パルサリョール領内にいたセーネス軍は行動を開始する。
「反乱だ! 反乱が起きた!!」
「鎮圧しろ!」
行動を開始しようとするセーネス軍を取り囲むのはパルサリョールの魔法使い、民兵たちだ。
「何をする! どけ」
「何があっても退かない! 今しか無いんだ」
「パルサリョール万歳」
セーネス軍の中でも反乱が起きた。
「もうセーネス人になんか従ってられるか!」
パルサリョールに駐留するセーネス軍の兵士のうち6割がパルサリョール人だ。彼らはセーネス人の上官に従う者、反抗する者、様々であったが、1つ言えるのは、もはや衝突は避けられないということだ。
パルサリョール議会の決断から1日と経たずに、全土で火の手が上がった。
反乱が起きたのはパルサリョールだけではない。セーネスの属国、属州となっていた、抑圧されていた殆どの地域で息を合わせたかのように動乱が発生した。
日本が巻いたビラは、セーネス勢力圏内で燻っていた反乱の芽を呼び覚ましたのだ。
「パルサリョール万歳!」
「ネアスポリス万歳!」
「サヴォニア万歳!」
属国では旗が焼かれ、属州では旗と総督が焼かれた。
彼らは強制されたセーネス語を忘れ、皆それぞれの言語で叫んだ。
「万歳! 万歳! 万歳!」
日本軍がパルサリョール王国……いや、パルサリョール臨時共和国の首都マドゥリアに盛大に入城したのはビラを巻いてから5日後の事であった。
この頃には既に再編されたパルサリョール軍により域内のセーネス軍は放逐されており、国境ではセーネスの大陸軍との睨み合いが始まっていた。
「ようこそお越し下さいました。日本軍の皆様」
「大層な歓迎、どうもありがとうございます。私はセーネス派遣軍の大将を務めております、山田 翔一であります」
「山田大将、私はパルサリョール臨時共和国副議長、ルーカス・カヌート・フィガロで御座います。ささ、お話は中で」
山田がカヌートに案内された建物は、精巧な細工の施された豪華な宮殿であった。そこは元はロマーラ総督の邸宅であり、パルサリョール王宮殿となった後に、迎賓館に改装された歴史を持つ。独立したてのパルサリョールは民族の自由を守るため、日本に近づくのであった。
「まずは、我が国で捕虜となっている貴国の艦隊について、話し合いましょうか」
「ええ、いいですとも」




