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侵攻(連想ゲーム)

〈豆の花踏んで猫たち闊歩する 涙次〉



【ⅰ】


 村川佐武の「ギャレエヂM」。店頭品は、トヨタコロナ1990年モデル、モスグリーン、ルーフキャリア付き。先日の雪川正述の一件で懐が潤つたじろさん、セカンドカーにいゝな、と、しげしげ眺めてゐる。

 遊び心が感じられるクルマだ。これ、佐武ちやんが手を加へたものかと思ひきや、フルオリジナルだと云ふ。バイアスタイアを履いてゐる。そこで、じろさん、仲本尭佳にばつたり會つた。

「これ、いゝよね」「さうだね、値段も安いし」佐武ちやんが店の奥から出てきた。

「あら、あんたたち、お揃ひね。仲本ちやん、こないだのNM4-02はだう?」「調子いゝよ。ガンガン乘つてるよ」「このコロナもいゝでせう」「まあね」「好みが重なつたやうだつたら、じやんけんで決めたら?」「じやんけん? 俺弱いんだよね」「ぢやじろさんに譲る?」「さうするわ」


 仲本は、バイク屋で、トライアンフのアドヴェンチャーモデル、タイガースポーツ660を購入したさうだ。で、今日は余りお小遣ひを持つてゐない。すつかりバイクの人に戻つた仲本であつた。

 

 コロナ-と云ふと禍々しいイメージがある。じゃんけんと云へば、「最初はグー」つて云ふのを考案した、志村けんさんは、コロナでこの世を去つた。



【ⅱ】


 三人は店で、若い者が出した珈琲を飲み、歓談した。

「コロナつて云へば、こないだ、不氣味なお客が來て」じろ「不氣味?」佐「さうなのよ、やたらでつかいマスクしてゝさ。マスクを取つたら、まるで鰐革を(なめ)したみたいな、肌をしてゐるのよ。あれ、じろさんの専門の【魔】ぢやない?」じ「鰐革男だろ。全く、假死狀態に入るとか云つて置いて、その實人間界をうろついてゐる。【魔】だから仕方ないが、云ふ事が信用出來ないんだよな」仲「鰐革男?」じ「最近、魔界の新盟主になつた、卑劣な奴さ」


「お腹の大きな、でも綺麗な女の人連れてたわよ」と佐武ちやん。「人間の女囲つてるつて譯ね。スカGのブルメタ、キャッシュで買つて行つたわ」

 こゝで、じろさん、「蕩らし【魔】」と「をばさん」の子、【魔】と人間のハーフの笹雨雪次郎を思ひ出した。仲「魔界も産めよ増やせよ、つて譯かい?」じ「一子相傳、で、後継者を造らうとしてるんだらう。或ひはその女、黑ミサの『祭壇』にするのかもな」仲「あんたの話を聞くと、専門用語が頻出して、着いて行けないよ」



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈マスクする心に大きなマスク掛け我が身ばかりが大事でもなく 平手みき〉



【ⅳ】


 じろさんも現金決濟でコロナをゲット、「每度有難うござい-」佐武ちやんの聲をバックに、その儘三人は別れた。

 じろさんがコロナに乘り、事務所に帰つてくると、カンテラはカンテラ外殻に籠もり、何事か思案中。

「おい、カンさん。出ておいでよ、鰐革の話でもしやうや」-「何か新しい情報でも?」-「いや、佐武ちやんが云ふには、人間界をうろついてゐるらしい。クルマ買つたり、人間の女連れてたり。しかもその女、妊娠してゐるさうだ」


「南無Flame out!!」呪文と共に、カンテラ實體化した。「『シュー・シャイン』に探らせるのも一興だが、奴には流石に休養を與へてゐる。こないだ蘇生させたばかりで、奴も疲勞が溜まつてるんだ」-「鰐革、そろそろ黑ミサを始めるらしいぜ」‐「魔界の盟主は、黑ミサやらないと、示しがつかないからね」


 魔女の群れ、がゐながら、人間の女を撰ぶ。【魔】の男は、誠に以て、人間の女贔屓だ。「祭壇」には必ず、人間界から拐帯した女を使ふ。


 カン「後継者造り、つてのは、多分ビンゴだよ。長期政権を、鰐革は目指してゐるからな」じろ「さう云へば、ハーフの方が人間界に顔が利く、つてカンさん云つてたな」カン「まあ、放つて置かう。直に尻尾を現はす」じろ「鰐革の場合は、剣一本でだうかう出來る奴ぢやないつてのが、難點だなあ」カン「全く以てその通り」



【ⅴ】


 その頃テオは、SNSに、鰐革の情婦のアカウントを見付けた。「貴女も鰐革男のハーレムに參加してみない?」-(全くこの世はだうにかしてゐるよ...)テオ嘆く事頻り。


 このやうに、じはりじはりと、鰐革は人間界に進出の機会を狙つてゐる。それは不氣味で、不可解な蠢動であつた。テオは「東京制覇、案外鰐革は為し遂げてしまふかもなあ」-彼は慌てゝ、その考へを抹消した。「僕たちが頑張つて、食ひ止めるより、他に道はない」



【ⅵ】


 そして、魔界。久々の黑ミサ、と云ふ事で、皆浮き足立つてゐた。以前、これは書いた事だが、【魔】たちは刺激に飢ゑてゐて、そんな彼らには黑ミサは、恰好の娯楽なのだ。


 鰐革「お集まりの皆よ、これよりミサの時間だ」-わあつと歓聲が響き、今や遅しと、【魔】たちの目はぎらつく。失敗ばかりであつたが、鰐革はそのカリスマを、何とか保つてゐた...


 と云ふところで、紙幅が盡きた。と云ふより作者息切れ・笑。登場人物が多弁だと、物語の推進役は疲れるものだ。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈春圃には水鳥が浮く頃我ら人気稼業の秘訣知りたり 平手みき〉



 今回はまつたり會話中心に行つたが、次回はチャンバラ。乞ふご期待!! ぢやまた。


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