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Soyuz_Nocturne~ ’’全’’世界が敵~   作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅵ. もう一つの異世界「脅威」
88/95

Chapter87. Declassified_Operation: Execution

タイトル【機密解除:処刑作戦】


端末ことヴィーレの収容されている区画にやって来た唐津とテーヴァ少将。



苦肉の策として酸素供給タイプのガスマスクを着けての緊急来訪のため、酸素が続く間しかいる事ができない。

そのため、端末にかけられた厳重な鍵を解いたら帰ってしまうという。


扉を前にした時、唐津中佐は今更になって気になった事を問う。



「厳重にロックがかけられているならば、どうやってその鍵を解くんです」



鍵というのは外敵から大事なものを守るために必要だが、同時に開けられなければ意味を持たない。


泥棒に入られたくなければ家の出入口を鉄板で溶接すれば良いかもしれない。

だが家主が入れなくなっては本末転倒だ。


少将は手短に答える。



「私自身が発する、特定のフレーズだ。前に言った通り、マヤカシを見破る能力がある以上強固な錠前となってくれる。録音や幻術の類では突破できないよう、設定した」



そこは最低限、開けられる作りになっているらしい。



「機密保持のため、自己判断による自爆機能を付けられれば良かったが……何分開発期間が長いとは言えない状況だった」


少将の人に対する決定的な価値観の違いに唐津は背筋を凍らせつつ、収容室に足を踏み入れた。




—————






——SOYUZ本部拠点

NBC隔離区画



管理者権限を持つテーヴァが現れても、やはり端末と言われるだけあってヴィーレの反応は極めて薄い。



「さて、始めようか」


送り込まれる酸素を深く吸い込み息を整えると、彼は早速 銀の鍵を錠前にちらつかせる。



「端末、管理指令受付要請」


「合言葉を出力してください」



目の前で繰り広げられたのは、およそ人間に対する会話。


普段使うパソコンを起動させ、デスクトップ画面を開くまでのやり取りを音声起こしするならばこうなるか。



端末と呼ばれた理由が、ここに詰まっていた。

機械でありながら人間であり、人間でありながら機械である。


人工知能では決して真似のできないファルケンシュタインらしい芸当だ。


そして少将はパスワードを入力する。



「常に秘密」


「認証完了」



鍵を開けてしまえば、中身はどう使うかは盗人次第。そう言いたげな素振りでテーヴァは足早に立ち去ってしまった。

曖昧なものより正確な情報を渡したいのだろう、諜報組織の人間らしい。



機械には機械らしく唐津は冷たい口調で問い直す。



「作戦内容を開示せよ」



「承知いたしました。作戦名:処刑(Execution)()に関する情報を開示します」






———————






「本作戦はSOYUZの中核だと推定される次元に転移し、内乱を起こし陽動することにあります。

第一段階は情報工作員として潜入している士官と端末名:ヴィーレが接触・回収」



「得られた敵地理・規模・現地治安組織ないし部隊の装備などを加味し、実行される予定となっていましたが管理者権限により一時停止しました」



概要を語る端末。

あくまで序章と言うことで、ざっくりとした流れであることから唐津は詳細を聞き出そうとする。



「第一と第二段階の詳細は」



「はい。先に潜入していた情報工作員は現地住民を懐柔または拷問し、情報を獲得する予定となっていました。以後は先ほどの通りです」


「第二段階に関しては、無差別に殺傷するように設定されています。これは混乱を生じさせることを目的としています」



早い話がテロを起こそうとしていたのである。



世田谷区玉川の住人は当然ながら、彼らに手も足も出ない。

ナイフを持った男すら鎮圧することが出来ない一般市民相手には過剰もいいところ。


誇張でも何でもなく、SOYUZが存在せずに作戦が成功してしまった場合、二子玉川には住民だったものが辺り一面に散らばるだろう。



だからといって、ファルケンシュタインの正規軍を相手にするには日本の警察は弱小過ぎ、自衛隊では腰が非常に重い。


仮に治安出動したとしても、相応の損害は出るのは必須だ。


情報を出していないのが仇となって。



更には世論にも影響する。


日本人は自分に手が下りそうになると、想像以上に凶暴化する愚かな集団である。

逆鱗を殴りつけるような真似をすれば、憲法9条など突き破って異世界に攻め込むかもしれない。


いくら安芸の極道じみた首相 広海でも、暴徒と化した人間には太刀打ちできるか怪しい所。



少し、ここで引っ掛かる事がある。

第六感でもなく、一人の将校として疑問に思った事柄だ。



()()()()()()()()()、と。



それゆえに唐津は意図を変えた質問をする。



「作戦目標を達成した後はどうする予定だった。帰投することもできまい」



本当にマシンやプログラムならば、これ以上は答えられないはず。


人間が口にするならば想定していない。

Excel風に言うならば「参照する領域が存在しない」のだから。



本当に端末が電子媒体じみたものと軍人の良い所取りならば、答えられると踏んだのだ。



「あくまで推測に過ぎませんが、住民や治安組織を処理した後の残渣を利用するものと考えられます」



酷く機械的な答えが返ってくる。

処理した残渣、というモノ言いが唐津に確固たる殺意をにじませた。



民間人のことを一体何だと思っているのか。

国際法は一切通用しないとはいえ、人間として最低限やってはいけない事くらい理解できるだろう。



「しかし、防げて正解だった……」



「誠に遺憾です」





——————





その後、SOYUZによって徹底的な隠ぺいが実施された。



主に情報統制とカバーストーリーの流布であり、この衝撃的過ぎるスクープをテレビ・新聞・メディアと言った、ありとあらゆるメディアは報道しようとしない。



仮に一個人がSNSで戦車群などの写真をアップロードしたとしよう。

SOYUZは抜かりなくカバーストーリーの1つ「毒ガスの流出」と言い張る。



もっとも、NBC兵器に対抗する車両が出てきた事を利用した言い訳だ。

それに最新鋭の戦車はNBC対策が施されており、万が一何かあった時の対策だと説明すれば良い。



それに新宿を歩けば多砲塔戦車T-35が闊歩し、立てこもり事件が起きれば容赦なく徹甲弾で犯人だけを建物ごと撃ち抜くのが当たり前の世界なのを忘れてはならない。



何時もの事だと忘れ去られるだろう。


画面の向こうのあなたのように。



もう一つ、この事案で分かったことがある。

何も現実世界の大国が異世界に関して干渉してくることもあれば、その逆も当然あり得るということ。



今のファルケンシュタインそのものは脅威ではなくとも、U.Uそのものが現実世界に牙を剥くことがある。

あくまでも可能性の段階ではあるが、ここで言っておく必要のあることが一つある。


異世界が完全に無害だと、本当に言い切れるのか。


そして、新たな脅威が目を覚ます……

次回Chapter88は12月27日10時からの公開となります。

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