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Soyuz_Nocturne~ ’’全’’世界が敵~   作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅵ. もう一つの異世界「脅威」
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Chapter85. The Labyrinth of Interrogation

タイトル【尋問と言う名の迷宮】


尋問官メンゲレから、情報将校である唐津中佐にバトンタッチ。

質問内容を検疫に関するものだったのが、3個小隊の目的を聞き出すことにシフトした。


——NBC隔離区画

——レインズ曹長の場合


真っ先に指揮官ではない下士官から始めたのにも訳がある。

単刀直入に言うと揺さぶりを入れるため。


今の情勢を整理すると、SOYUZと帝国の戦争が終結。部隊は一度解体され再編成される下りに。

向こう側で反政府組織が出始めたとはいえ新体制に移行し始めている。


それにも関わらず作戦行動を実施していたということは。

ある2つの可能性を示唆する。


残留日本兵のように負けたと知っていても戦っているか、あるいは過去から来て敗戦を知らず軍務についているか。


前者の方は報告が上がっておらず、情勢も安定していることから可能性は薄い。

だが後者はどうだろう。

消去法になってしまうものの、魔法というトンチキなものがある以上相対的に信憑性が増してくる。


あくまでも仮説には過ぎないのだが。


更に報告によれば、部隊はおおむね士気が高い様子が見て取れたという。

ならば、真実を突き出して揺さぶりを掛けられる。


特にこの手の、思想に燃える人間にはひどく効果的だ。

そうして狡猾な唐津は尋問室の席に着く。




——————




「尋問を担当させていただくことになりました、唐津と申します。階級は中佐。どうぞよろしく」


向かい合わせに居るのはレインズ曹長。如何にも剣と魔法の世界から出てきたような人間だった。

だが子供のころに遊んだRPGの勇者とは装備がまるで違う。



肩パッドには階級章や部隊マーキングが施されており、まるで戦闘機のペイントを思わせる。

それが異世界は幻想ではなく、実際にあるのだという説得力を産むのか。


先に名乗った方が尋問を潜り抜けやすいと思ったのか、曹長はあらかたの情報を小出しにする。



「指揮官よりも目上の将校と話すことになるとは。レインズ・フラム、階級は曹長。ただの小隊長だ」



ただの小隊長、唐津はその言葉にとっかかりを覚えた。やはりと言うべきかボカシが入っているのは否めない。


はっきり言って直感だ。


何か言いたくはない事を遠回しに、オブラートに包んでいるようなニュアンスで言われると「コイツは嘘をついている」と第六感で感じ取ることができる。


まったくもって確証はないので、尋問の参考程度にしているが。



「ただの小隊長。その言葉は正しくない」


「何故だ」



中佐は暗黒に一石を投じた。

レインズは何も知らないように装っているが、白々しくて仕方がない。


何せ唐津は一級の情報将校。

彼に向かって隠し事をするならば大掛かりな用意が居る。


自分自身をマインドコントロールし、なおかつ逆行催眠でなければ出てこないレベルの鍵を付けなければ無意味。


並大抵の嘘など、あってもなくても同じなのだ。



「あなたはファルケンシュタイン帝国軍第43・42・41小隊のいずれかに所属している。もっとも、3個1中隊として運用されていたので、区切りはあってないようなものでしょう」



レインズの背筋が凍り付く。何故この男は秘匿されている部隊の素性を知っているのか。

確実に抹消したハズなのにも関わらず、こうも正確に当てられるのか。


その表情を見るや否や、唐津は詰め寄る。



「図星のようで」



「隠していても意味がない。……その通り、私は第41小隊に所属し部下を率いていた」


認めた。

しかし、そこで終わりとは誰も言っていない。



「その部隊は我々SOYUZ管轄になる前に()()()()()()


「どういうことか」



唐津の耳を疑うような言葉に曹長は食って掛かる。


当たり前だろう、自分の軍隊が敵軍の管轄になったということは戦争に負けた、ということを如実に物語っているのだから。

さながら軍門に下るという言葉があるように。



例えるなら、1942年の日本でアメリカに負けますと軍人へ突き付けているようなものに近い。


明らかに動揺している曹長に向け、唐津はドスの入った語気でにじり寄る。



「それはこちらの台詞だ。一体何の目的で此処に来たのか、答えてもらう」




——————





「異端軍の本拠地にて陽動ないし占領することを目的だった。転移後に端末を使って接触、指示を受けて動く予定で———」



「違うな」


まだだ。

レインズはまだ嘘をついている。


だいぶ具体的ではあるが、オブラートが完全に外れていない。


それ故に、虚偽のソムリエである唐津は彼が証言をしているにも関わらず話を一刀両断してみせた。



「それ以外知らされていない」



帰って来たのは別の意味でフカシのない真実。


兵隊というのは悲しいもので、下士官や兵を動かすために上層部の思惑が邪魔になることがある。

特に、非人道的な作戦の場合などは際立つ。


だからこそ意図的に作戦内容を明確に伝えず、命令を下す時もあるのだ。

一見して袋小路に陥ってしまっているかもしれないが、こういう時こそ証言を思い返す。


端末。


ファルケンシュタイン帝国は魔導という要素がある、が逆にこのような冷たい文言にどこか、とっかかりを感じた。



聞きなれないからである。

これも経験が生む勘や第六感に過ぎないが、何も学術論文のように根拠が求められる訳ではない。


たまには脈略から少し外れた事を聞いても良かろう。


「ならば……質問を変えよう。その端末は一体なんだ」


「まるで物体のようなソーサラー……ヴィーレのことだ。

作戦が決行される前に「配備」された。軍籍は作戦遂行のために与えられたに過ぎない」



「もうこの際ハッキリ言わせてもらうが、軍属の人間とはとても思えなかった」




——————




レインズの証言にあった端末という扱いと、人間とは思えなかったという事実。

確保されたヴィーレなるソーサラーは確かに人間で兵士だ。


だがそこまで言わしめるものとは何なのか。

唐津はもう一人の下士官 ソードアーマーのアルドに対して尋問を行うことにした。



——NBC隔離区画

——アルド曹長の場合



「尋問を担当させていただくことになりました、唐津と申します。階級は中佐。どうぞよろしく」


挨拶が一言一句変わらないが、相手だけは目まぐるしく変化する。


筋肉質。

それどころか筋肉そのものとしか言いようのない大男がパイプ椅子に収まっていた。


なんでも、現地でこの手合いと戦った人間から言わせれば装甲を纏った人間装甲車だと言っていたことを思い出す。

25mmの鉄板を纏ってアスリート並みに動くためにはこれ程までの筋肉が居るのか。


異世界というのはつくづく恐ろしいものである。



「俺から情報を引き出そうとするのは止めた方がいい。お(かみ)がすっとぼけたせいで、俺達は具体的なものは知らない」



見た目に反して理性的な答えが返ってきた。やはり指揮官を揺さぶらなくて正解らしい。


今までの情報を整理しよう。

司令官である少尉は女に免疫がない高校生とはいえ、現地人を篭絡した挙句に情報源にしていた。


そんなこともあり、唐津はショールに対して同業者ではないか、と感じ取っていたのである。


女性に対する完全免疫がある唐津に言わせれば、一人称が「ぼく」の時点で凄まじくきな臭い。

それが素だろうと、何かしてやろうと言う思惑を感じてしまうのだ。



「でしたら。聞きたいことは作戦や部隊についてではなく……ヴィーレと呼ばれているソーサラーについて。端末と呼ばれているのは本当ですか?」



「事実だ。俺たちが付けている蔑称でも何でもなく、アイツは端末として隊に編入された」



訳が分からなかった。

兵士は人間性をある程度削ぐ、といっても完全に失わせるほどではない。


だがそれがあの端末には施されている。


「どういうことですか?」


「むしろ俺が聞きたい。本当にいきなりやって来た、お上の仕業でもないらしい。聞いたら知らないと言っていた…ような気がする。少し遠い記憶だ、思い違いをしているかもしれない」


謎の兵士、ヴィーレ。

懸念事項の1つに入れておくとして、中佐は話を深掘りしていく。



「では…その端末の役割をご存じですか?」


先に飛んでいたショールとの接触に使われる、とレインズ曹長は証言していた。


つまり伝令か何かだと推測されるが、唐津はどこかズレているような気がしてならない。

本質はそこではない、と言うべきか。



「正確には分からない。が、しかし……」


「ヤツは他人の心を読んで、遠くの人間と心の中で話ができる。異能者(サイキッカー)と呼んでいる。魔導とは全くの別口だ」





——————





ファルケンシュタイン帝国にはごくごく稀に、魔導とは全く別の「力」を持つ人間が存在するという。

意思を破壊して占領、人形のように操る力やテレパシーのようなものまで多種多様だ。



深く思考に入る唐津だが、アルドはこんなことを口添えする。



「何かを知っている司令と接触する以上、俺達以上に情報を知っているかもしれない。

ただ、そう簡単に拾えないようにしてあるだろう。俺ならそうする」


情報漏洩を防ぐのは何処も同じらしい。



「でしょうな。私も見られないように細工はします。……そんな細工が人間に出来ると?」


機械ならば可能だとしても、複雑極まりない感情を持つ人間をそこまで調整することができるのか。



「その手の事は本当に知らない。何せ俺の全ては筋肉だからな。ただ、軍はそんなことはしないのは確かだ。捨て駒にするが、人間性をここまで削いだりしない」



「あと情報を引き出すんなら少尉よりも端末の方がいい。あんの……いや。すっとぼけるの得意だからな、ほんと」


「国軍を除いて……そんなことができる集団がいるというのか……?」



ファルケンシュタイン帝国にありながら、軍とは別にこのような残虐非道な行いが「機械的に」出来る組織がいるのか。


SOYUZが集めたデータの中に、たった一つだけ該当する項目がある。


国家保安委員省 実働部隊 通称:深淵の槍。


何も見えない暗黒から情報を引き出せ。

次回Chapter86は12月13日10時からの公開となります

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