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Soyuz_Nocturne~ ’’全’’世界が敵~   作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅵ. もう一つの異世界「脅威」
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Chapter83. A.P.C Encirclement

タイトル【装甲化包囲網】



【Marunouchi-ArmyからLONGWAVE。目標確保。回収します】


【LONGWAVE了解】



全てが、終わった。


次元を超えた陽動・占拠作戦も、そして芽生えたラブストーリーも。

ドラマチックな物語の主演二人とて、SOYUZの前では回収目標に過ぎない。


だがここからがむしろ本番。

司令官の配下である3個小隊90人余りを確保、もしくは殲滅しなくてはならないのだから。



【LONGWAVEからBIND各機。現在、社会安全軍と警察が急行中。座標を送信する】


【BIND01了解】



送られてきた情報は多摩川河川敷を指し示していた。


今までは二子玉川駅中心を旋回しろとだけ命令が出ていたのだが、攻撃させないために具体的な位置は伝えなかったのだろう。

また、河川敷も偶然通りかかると言うことを見越したことでもある。


ローターの音はご近所迷惑どころかエリア全体での騒音。

ヘリの眼下に居なくとも存在自体はアピールできる。


さながらスポットライトの下に居るかのように。


そこで執拗に旋回しているなら寝首をかいて叩き落してやろう、と思うかもしれない。

しかし偶然、空の死神が顔を出したらどうだろうか。



間違いなく動けなくなる。

絶対的な捕食者がうろついている所に出たくなるネズミなどこの世には存在しないからだ。



それに正確な情報が伝えられたことの意味は重い。

固まって動けない奴らを一網打尽にするのだ。


まだまだ、事態収拾は終わらない。




———————




——玉川24パトカー内


SOYUZのような力を持つ存在ならば、自由が利くだろう。

だが中途半端な武力しか持たない集団はどうだろうか。


現場急行中の警察官を載せたパトカーなどは特に。

座標に向けてヘリが急行する傍ら、警察車両が多摩川河川敷に向けてエンジンを吹かしていた。



「ありったけの応援を呼んだのは良いとして、ほんとに俺達でどうにかなるんすか?だってG案件じゃないですか。こんなの端っこに載ってるようなこと……」



ゲリラ相手に警官数人でどうにかなるような事案ではないため、応援は可能な限り呼びつけた。

だが相手になるのは剣や槍を持っているとはいえ武装した人間、それも100人弱。


ナイフを持った通り魔一人でも大騒ぎになるのだ、警官が弱音を吐くのも無理ない。



「どうにかなるじゃなくて、するんだ。それにこれからG案件は端っこじゃなくて大々的に載るようになる」



社会安全軍が居た所で、警察もとい国家権力が不必要な時代は来ないだろう。


今までも、()()()()()()()()


結局のところお巡りさんは、健全な市民を犯罪という不条理から守らねばならないのだ。



「あとお前、忘れてないか?」


「何がです?」



「玉川124だよ、俺達のどうしようもないニューナンブでダメでもアイツがいる。

社会安全軍の管轄だから、やろうと思えば砲をぶっぱなしていいんだと」


「それに、だ。俺達は囲んで棒で叩くのが仕事よ。どんなに弱くとも、数がいようともここにはどれだけの数の警官がいる?」



何せこのパトカー、玉川24はダイムラー装甲車と共に急行している。

旧式かつ火力や装甲は戦車と比べて月と鼈かそれ以上。

それでも機関銃と()があるのは大きい。



「それもそうですね。……何がG案件だ、馬鹿らしい。国民の税金を思い知らせてやる!」



パトカーは大軍の船頭となり河川敷に向かう。






———————







——多摩川河川敷


VATATATA………


この音は遠くにいるようなものでも、ましてや幻聴でもない。


ロケット弾・機関砲・対戦車ミサイルと積載歩兵で完全武装したヘリコプターの確固たる存在を誇示するのだ。


GTAM!!GATAM!!!!


サーチライトが灯され、スポットが血に飢えた猛獣の瞳よろしく河川敷の地を這う。

そして獲物を見つけると片時も動かない。


Mi-24Pの群れが、そこにいた。


仮に殺しに適した自動小銃を向けた所で、分厚い装甲が全てを無に帰す。

そして敵を笑いながら皆殺しにする様は悪魔そのもの。


対空兵器を持たない歩兵は抗うことすら許されない捕食者の群れが、河川敷を包囲している。


それが攻撃ヘリ(ガンシップ)だ。


現代文明の波状攻撃は続く。


Wooooooo!!!!!!!!!!


けたたましくなるサイレン、赤く光る桜の紋章を付けた車の大群。

それぞれ罪と罰を司る、白と黒で塗られているそれは。



何も武力を持つのはSOYUZだけではない、誰もが知る国家権力。

基本的に国民の味方。



東京の治安維持組織 ()()()()()()()()()である。


軍用車両であるダイムラーは兎も角、雪崩のようになって押し寄せるパトカー。

塵も積もれば山となり、車そのものがバリケードとなって退路を塞ぐ。


そして普段スピード違反をする愚か者に呼びかけるためのスピーカーからこう呼びかけられた。



【えぇー……武装集団たちに告ぐ!武器を捨て、ただちに解散しなさい!】



陸路は全て警察が封じている。

仮に装甲がなくとも、たとえ銃弾に対しての防御力が半紙同然だとしても残骸は残り続けるだろう。


追い打ちをかけるべく、ハインドは多摩川を超低空ホバリング。


そして機首を下げながら器用に水平移動してみせる。

サーチライトの木漏れ日で機関砲見せつけるだけで十分。



この一撃に何十、何百と言う帝国軍の兵士が屠られてきたことか。



並大抵の銃弾を弾くアーマーナイトでさえ蜂の巣にされ、装甲を持たぬ存在はロケット弾の雨で跡形もなく吹き飛ばす。


ワニにでも睨まれた恐怖は威嚇射撃をするまでもなく、確実に伝わる。


続いて、ヘリのスピーカーから大音量で勧告が発せられた。



【所属不明の武装集団に告ぐ。直ちに武装解除し、投降せよ。投降したものは後続が回収する。

また、交戦意思が認められた場合、即座に攻撃する。———繰り返す】



勧告をしているのとは別のハインドが隠れている兵に向け、ゆっくりと旋回して敵に機関砲の照準を据える。


目と目が、合ってしまった。


翼下にぶら下げられた夥しい武装。

何より印象的なのは表情を感じられない、丸い不気味なキャノピー。


目の良いファルケンシュタインの人間ならその一挙手一投足を見逃さないのを見越して機体を動かしたのである。


小隊に対し、パトカーから更に冷たい通告が投げかけられていく。



【お前たちは完全に包囲されている!直ちに武器を捨て、出てきなさい!】



何もかも、事実だ。


映画やドラマで何千回と使われたフレーズだが、陸は完全封鎖の上に無数の警察官とM8装甲車。


しかも更にまだまだ応援はやって来る。

川に逃げようとすれば完全武装の死神が襲ってくるだろう。


それに警察は融通が利くだろうが、SOYUZは冷酷で無慈悲だ。


どれだけの戦力差があっても、攻撃するならば問答無用で「撃つ」

それも何千倍に返して。


ガンシップから最終通告が突きつけられる。



【直ちに武装解除し投降せよ】



ただ、抑揚のない大音量が響く。





—————





残念なことに、転移してきたファルケンシュタイン帝国軍41・42・43小隊にハインドを倒せる武器は何も持ち合わせていない。


たしかに帝国にはヘリの天敵、地対空ミサイルのようなもの(ヘンダー)はある。

無常なことに誰一人として持ち合わせていなかった。


対抗できる兵種であるドラゴンナイトはハナから転送されてきていない。


今更何をしても、無駄だった。



「敵は油断しています。撃破可能です」


「待て、待つんだ」



杖を構えようとするヴィーレをアルドは止める。


撃とうとしているのは装甲車さえテツクズにする隕石魔導ギドゥールや、迫撃砲の直撃にも匹敵する威力の爆発魔導ヴァドムだというのは想像に難くない。


たとえガンシップでも、地対空ミサイルや運悪く対空砲何発も喰らったら流石に墜落する。


ヴィーレの腕前からすればこれらのヘリを撃退することは不可能では、ないのかもしれない。

敵が温情をくれている間は。


問題なのは敵のテリトリーであること。


なおかつ地の利もあり、無限のように弾を使っても即座に補填される。

あの治安維持組織が良い例だ。


1つ2つを撃墜した所で、次やそのまた次が出てくるに違いない。

雑魚とはいえ、隊の人数を超える有象無象は立派な脅威。


ヘリが無敵ではないのと同じように、小隊もまた完全無欠の無敵とは縁遠いこともまた忘れてはならないだろう。


今度こそ確実に「掃討」される。



「撤退するのが先決だ、————しかし……!」



レインズは骨の髄までしみ込んだ判断を下そうとするも、端末が割って入った。



「どこに後退されるおつもりですか」


現実世界に来るために使った次元転送装置は既に抹消した、それも跡形もなく。


それにファゴットにしか作れない装置を現実世界で用意できるはずもない。

何せ21世紀のテクノロジーでさえ実現できなかったのだから。


誰も戻ることは出来ないし、誰も来ることは無い。

現実世界と、異世界。

小隊の逃げる場所はどこにも残されてはいなかった。


だからこそヴィーレは全てを込めて、そう言ったのである。

作戦状況を伝える「端末」として。


部隊長を失った今、二人は決断を迫られる。


重い口を開いたのは他でもない、部隊で唯一現実的思考が出来るアルドからだった。



「————総員、武装解除。降伏する」



これでようやく、全ての作戦は未遂に終わり幕を閉じた。


本当に、そうだろうか。


ファルケンシュタイン帝国から現実世界の東京世田谷へと送り込んだ全ての根源。

次元転送装置はある一人の男によって作られたことを決して忘れてはいけない。


製作者の名前はファゴット、刻まれた「IMI」のマーク


この男はまだ生きていると言う事を……


更には

小隊を送り込んだのはあくまでデモンストレーションに過ぎず、次元跳躍を可能とする技術は決して死に絶えていないと言う事を。

次回Chapter84は11月29日10時からの公開となります。


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