表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Soyuz_Nocturne~ ’’全’’世界が敵~   作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅵ. もう一つの異世界「脅威」
82/95

Chapter81. Spoil field

タイトル【揺らぐ日常】


偵察分隊として選ばれた勇者三人は一旦転移してきた多摩川周辺に戻り、情報を共有。

市街地ではなく大河に掛けられた橋へと向かうことに。


ファルケンシュタインの兵にすれば物資搬入橋と思うだろうが、現実世界に住む人間からすれば別の名前であることは知っての通り。


国道246号線。

総延長123.5km、東京から沼津まで一本でつなぐ大動脈の1つである。


———



——国道246号線


眠らない街が何も東京中心だけとは限らない。

日夜物流の要として機能する大道路もまた眠ることはない、眠ってはいけないのだ。


Goooomm………


目まぐるしく走る乗用車にトラック。特大貨物を抱えた車両が通るたびに、ぐわりと揺れる。


これまでファルケンシュタイン帝国では見なかった代物だが、諜報によって輸送や移動に使われる乗り物だと言うことは分かっていた。


一応、彼らは馬車を進化させたものだと解釈している。



「空気がひどい、ゲンツーかそれ以上か……?」



橋上の空気の悪さにレインズは口元を隠さざるを得なかった。


それだけ多くの自動車が走っているという事であり、ここからSOYUZの増援がやって来る可能性は高い。


増援を抑えるためには大橋と向こう側にある大橋を破壊しなければならないだろう。

しかし、これだけの大負荷に耐えられる建造物の破壊は困難。


むしろ封鎖するだけなら、走っている車を片っ端からテツクズにして封鎖した方が手っ取り早いかもしれない。



「しかし…この橋は破壊なり封鎖した方が良いですね、こういう時にドラゴンナイトがいれば……」



兵の言う通り、竜騎兵が送ってこられなかったのが手痛過ぎた。


吐き出す炎は並大抵の人間を焼き、馬以上の武器が乗るだけではなくライフル弾を大量に浴びせられない限り倒れない。


おまけに行動半径が広く、航空偵察が可能。


3騎でも居れば十分だが転送する際の要領を喰うと言うことで却下された。

悪態を吐く部下をレインズはたしなめる。



「送り込める体積の限界と言っていたではないか。仕方がない」



何らかの思惑を感じないでもないが、無いモノをねだっても仕方がないだろう。

すると見張り役の勇者が、車でもトラックでもない異形の接近を知らせる。



「レインズ曹長、向こうから何か来ます」


「散開せよ」



体調の鶴の一声で、三人の勇者は足元を光らせて跳躍。

街頭の上に飛び乗ると、体制を低くして様子を伺う。


暫くすると乗用車の列が途切れると共に奴らがやって来た。


QRAQRAQRAQRA………


紛れもない戦車ではないか!

それも1つや2つではない。10や20の群れとなって二子玉川に向かっている。


レインズは思考を巡らせた。


時間帯が遅いこともあって騒ぎになっていないハズ。

それに治安維持組織の装備は貧弱で、あんなものを持っているのは自ずと絞られてくる。



SOYUZだ。



待ち伏せされた可能性を考えたが、民間人があれだけ多いと兵器を隠しているとは考えにくい。

敵は明らかにこちらに居ると知っている。


装甲車両の群れが、まぐれやたまたまであって堪るか。風になびく様に部下が進言する。



「曹長、火力支援要請を。ここで奴らをやらなければ……!」



向こうは視野が限られるのか、こちらの存在に気が付いていない。

散々蹂躙してきた装甲兵器群を止められるのは今しかないのは確か。



【状況は把握しています。高火力魔導 ギドゥールによる狙撃を提案】



ヴィーレからも敵を討てと催促が飛んできた。

確かにここで破壊して数を減らさなければ、味方が襲われるのは確実だろう。


数を減らしておきたい、というのが軍人的な考えではある。

ゲリラ戦を挑むことが既に決定しかかっている以上、警戒度は低いままでいた方が良い。



つけ入るスキは多いに越したことは無いのだから。



ここで攻撃するのは容易い、しかし向こうもゲリラ対策としてまた別の何か(BMPT)を持ってこられたら御終いだ。


偵察に徹し、敵を倒せる絶好の機会を不意にするか。

あるいは攻撃して強力な増援を許すのか。


レインズの下した決断は如何に。




—————





「———数、20。我々の役割はここまでだ。これより撤退する」



彼はSOYUZの恐ろしさを文面ながら良く知っている。

対策をしなければ、徹底的に蹂躙される、と。


数は殺人的なものではないにせよ、決して楽観視できたものではない。



「……り、了解」


【非合理的な決断ですが止むを得ません】


闇夜に偵察部隊たちは消えていくのだった……。



—————




——午前0時43分

——SOYUZ第64装甲師団


今更ながら、二子玉川はセレブなベッドタウンとして知られている。


都心や更なる郊外へと繋がる国道や高速道路、殺人路線と名高い田園都市線が血管の如く張り巡らされていた。


重要参考人 空の居る玉川4丁目付近にも同じことが言える。


そんな現代の象徴に、似つかわしくないファンタジー世界の軍団が転移してきたのは周知の通り。

だが彼らを追う機械で出来た軍団も、忍び寄りつつあることも忘れてはならないだろう。


街中は比較的小回りが利く5式中戦車でぐるりと囲むが、同師団に配属されていた戦車小隊も合流。


よりにもよって配備されていたのはレオパルド2A7+

二次大戦から時が止まった中戦車とは違い、2020年代という遙か未来で生を受けた主力戦車だ。


如何せん日本の住宅街を火の海にするには図体が大き過ぎると言うことで、専ら封鎖の役割に徹することになるだろう。



電波上を冷たい声が駆け抜ける。


——国道246号線

川崎側


——GRRRRR………



【こちらGravity06、08 。各車降車完了。R246川崎側、封鎖】


申し訳程度に設置された「有毒化学物質除去中」の看板と、明らかに使わないであろう戦車がどっしりと腰を据えていた。

エンジンは怒れる狼のように唸っており、照準は揺らぐことは無い。


戦車小隊に与えられた命令はただ一つ、対象を見つけたら即座に撃て。

たったそれだけである。


どのみち、重要参考人に逃げられている時点で確保作戦は失敗しているのだから。



【LONGWAVE了解】


本部拠点に居る唐津中佐が現場の声を元に、紙地図に記しを付けた。

続いて、他方面からの連絡が飛んでくる。




—————



——国道246号線

東京側



【こちらGravity04、07。R246 東京側封鎖完了】


上と下の封鎖完了、道路網には蓋がされた。包囲網が順調に揃い始めているのは言うまでもない。

戦車では細い路地はカバーできないだろうが、そう言った場所で歩兵が活躍する。



【LONGWAVE了解】



【こちらGravity01。Gravity05共に玉川IC封鎖完了】



東京都内に逃げ込まれることのないように、環8方面もレオパルト2がにらみを利かす。

あえて2両置いているのには訳があった。


どういう訳かメンゲレが送って来たもので、学術旅団のガリーシア軍曹のデータを参照したからに過ぎない。


プロフィールなどはどうでも良く、唐津中佐が注目した所は普段の姿。


どうやらアディダスのジャージを着ているらしく、その姿はドン・キホーテにいそうなガラの悪い輩にしか見えない。


むしろ異世界人にも関わらず、その程度の印象しか持つことができない、と言うべきか。


即ち。

万が一、変装されて逃げ込まれた場合に区別が極めて難しい可能性もある。



人が多い東京都心にでも紛れ込まれたら最後、砂漠で砂の一粒を探さねばならないだろう。

それに都心は高級住宅街とは違い、トー横といった出入りの激しい流れ者の吹き溜まりがあるため厄介極まりない。



更には全国に抜けられるネットワーク「新幹線」がある品川にでも逃げ込まれれば状況はより悪化する。


現代人と共に居ると言う事実が確定しかけている以上、何らかの入れ知恵されていないほうが不自然か。


追跡できないことはないにしても、即座に逮捕できなくなってしまう。

何としてでも二子玉川で起きた事案は、このエリアで食い止めねばならないのだ。



【LONGWAVE了解。02・03は東名高速側に回れ】



それは付近にある中部・関西地方へと接続する東名高速道路にも同じことが言える。


江戸時代、徒歩で一週間かかっていた場所への移動も、たかだか4から5時間で移動することができるようになった。


文明やテクノロジーの進化は好ましい一面だけを進化させるとは限らない。

こと、21世紀の世界においては猶更である。



【Gravity02了解】


【Gravity03了解、急行します】



陸路の方は着実に封鎖できつつあり、あとは作戦を進めるだけになった。


ファルケンシュタイン帝国軍に逃げ場はない。





——————






そんな矢先、唐津中佐の一番耳にしたくない報告が届いた。



【こちらRoundabout。多摩川河川敷に敵影確認。データと合致】



どういうことなのか理解に苦しむ。

頭を整理してようやく答えを出すことができた。


一番恐れていた本隊が来てしまった、ということを。


仮説という虚構が真実となって牙を剥いてくる程、恐ろしいものはない。



【……了解。河川敷上空を高度維持しつつ旋回。随時動向を報告せよ】


【Roundabout了解】



高高度を飛ぶRQ-4の情報は何よりも信用できる。

この無人機は発見もされず、一方的に情報を寄越してくる機械のスパイ。


しかし発見されないこともまた短所とも言える。

見つからないがために、帝国軍の行動を制限する「抑止力」にならないからだ。


目に見える銃を怖がる人間はいくらでもいるが、見えない銃を怖がるような人間はいない。

だからこそ、ブラフは必要とされるのだ。



【LONGWAVEからBind各機。座標を送る、多摩川河川敷を低空旋回せよ。】


【BIND01了解、急行します】



ファルケンシュタインの連中も、航空戦力の恐ろしさは身に染みて分かっているハズ。

上空を旋回しておけば作戦行動を取りづらいだろう。


いわば、こめかみに銃を突き付けられた事に等しいのだから。


そして。



【こちらSuppression 各車。配置につきました】



【LONGWAVE了解、指示あるまで待機。待機・交戦中は絶対に車外に出るな。】


コールサインSuppression を持つのは一番現場に近い5式中戦車たち。

砲撃しようと思えばいつでも出来る。


だがあくまでこれは最終手段。


基本的には確保・収容・隔離の3原則に徹しなくてはならない。



【了解】


そして最後のピースを埋める存在がたった今、出発した。



【こちらMarunouchi 現在急行中。所要時間30分】


重参と主要人物を抑えるためには兵員がいる。


ハインドにも対NBC装備をつけた歩兵は積載されているが、いささか狭い二子玉川ではそう上手くはいかないだろう。

道路網が発達している日本では装甲車で乗りつけたほうが早い。



出撃するのに時間を要しているのも仕方がない、彼らの出番は今回キリであってほしいものだ。



【こちらLONGWAVEから各員。これより40分後に突入開始。

何が起きてもおかしくはない。目標を必ず確保しろ。失敗は許されない】



二人だけの閉じられた世界に、異世界の番人が迫る。


この度不手際が発生したため更新が遅れましてお詫び申し上げます。

次回Chapter82は11月15日10時からの公開となります。


・Spoil

甘やかすといった意味をもつ動詞。スラング的な意味で「台無し」にするといったニュアンスの意味も併せ持つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ