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Soyuz_Nocturne~ ’’全’’世界が敵~   作者: Soyuz archives制作チーム
Ⅵ. もう一つの異世界「脅威」
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Chapter78. Witch hunt

タイトル【魔女を狩る者】


———神奈川県横浜市瀬谷区

SOYUZ横浜本部基地 "ペリスコープ"偵察衛星管制センター



異世界からの来訪者はSOYUZにしっかりと捕捉されていた。

秘匿されていたのではなく、ドラマチックに来てしまったのが運の尽き。


仮にひっそりと紛れ込んでいたとしても、圧倒的情報網を前にすれば発見される事だろう。

タイムリミットが短くなるか、少し長くなるか。その程度の違いでしかない。


重大な案件ということもあり、情報将校である唐津中佐はこの管制センターへと緊急招集がかけられていた。

残業苦しむサラリーマンが解放される22時に。


眠い様子もないオペレーターが一枚の画像データを示す。



「2日前に偵察衛星が 東京都世田谷区玉川近辺で探知した不明な光源についてですが。

分析の結果、例のU案件に関係しているものと判明しました」


「先に結論だけ述べると、向こう側のU案件とリンクしていると思われます」



U案件。

SOYUZが異世界絡みの事案を纏めるために付けたカテゴリのようなもの。


世界中が違う世界の発見に湧いていることもあって、これに絡んだ戦闘や事件なども出てくると予想して設定された。


唐津は問う。



「なるほど。———詳細と、共通しているという根拠は」



「はい、光源が消えた後、我々のデータベースに無い人物が同地点に出現しています。

こちらがその人物ですが、こちらも服装や装備品が例のU案件に関係するものと確認ができています」



これらデータベースが存在するのは全て学術旅団のお陰と言っても良い。

転ばぬ先の杖、基礎研究はやっておいて損はないのである。






—————






「我々が直接介在せず、こちら側の世界に人間を送り込んできた……追跡結果はどうなってる」



こちらにやってきたのが一人ならば、必ず移動する。

フットワークが軽すぎるため、風で流れてしまうと言った方が良いか。


この事実を当たり前だと笑うかもしれないが、この業界、深く突き詰めすぎるとこの常識や当たり前の認識を欠いたまま難しく考えてしまいがちになる。



「———しかし……つくづく面倒なことになった」



唐津はどちらかと言うと厄介なことになった、という印象が大きい。

現実世界側にSOYUZ管理外の帝国、ないしガビジャバン人がいるのは非常にまずいのだ。


というのも、異次元側に人間が来たのであれば、その逆も可能だろうというロジックが曲がりなりにも通ってしまう。



日本人がいる可能性がある、というお題目を掲げれば「特別救出作戦」という言い訳で異次元への侵攻が出来てしまうのだ。



頭が大日本帝国時代ではないのがまだ救いだが、何せこの国のバックにはアメリカがいる。

在日米軍基地もあることもまた忘れてはならない。


連中が考える覆いにもならないカバーストーリーはこうだ。

日本から、突然米兵が異世界から来た人間に連れ去られた恐れあり。


ブックカバーがあろうがなかろうが、そんなことはアメリカには関係ない。

同じような理屈を押し付けた世界の警察は、中東を滅茶苦茶にした過去がある。



お題目を考えられるよりも先に、確保しなければならないだろう。



「光源の出現から、当該人物を追跡した結果……現在継続中ではありますが、座標は此処です」



表示された座標、もとい住所は

東京都世田谷区玉川三丁目アスコロビン-3 。学生向け高級志向ワンルームマンション リバーフェスタ。



「現時点で、部屋番号までの特定はできているのか?」



無理は承知で唐津は確認する。

SOYUZの保有する偵察衛星ペリスコープは極めて高性能。



宇宙から人間の顔、ひいては転がっている空き缶の銘柄まで解読することが可能とするが出来ないことが2つだけあった。



建物内の透視や上以外の視点から監視すること。



都合の良い妄想の様に透けてみる事が出来ないのは良いとして、航空写真と同じ「真上」からの視点に限られる。

マンションの部屋番号を解読することは出来ないのだ。


ただし、直接読み取ることは出来なくとも間接的には可能。



「10時間以内に特定しました。周辺住民への聞き取りを行ったところ、この時間帯に出歩いているのは一人だけ」


「深夜帯、ちょうど右端だけ明かりがついていると新聞配りのアルバイトから聞き出すことに成功しました」



夏とはいえ闇が支配する深夜2時から3時に活動する新聞配りにしてみれば、明かりがついている身なりの良いマンションは印象に残ったのだろう。


夜中に愛と新聞を運ぶスクーターのナイスガイが、最後のピースを埋めてくれた。


調べ上げた優秀な諜報員を抱えている限り、SOYUZネットワークに穴はない。



「———部屋番号は305。家弓直之氏名義で貸し出されているようです」



家弓空の忌々しき父親 直之。

その名前は唐津もうろ覚えながら知っていた。



零細企業から脱却した中規模企業。

この間、欺瞞用の新聞を読んでいたこともあって、覚えがあったのである。



「家弓興産の代表取締役会長名義でワンルームマンションを借りていた……。おそらく息子の下宿先に用意したのか」



苦労した分、子供には楽をさせたいと言う親心だろう。

しかし情けは人の為ならず、となって帰って来た。


何処の誰が住んでいるか、完全に埋め合わせる形となって。

99が100になった時、SOYUZの冷酷さは一斉に牙を剥く。



「リバーフェスタを制圧、当該人物と重要参考人を確保する。私が考えるに、一人だけやって来たと考えにくい。即応部隊は」


ファルケンシュタイン帝国の軍は中世ヨーロッパのファンタジー世界軍隊と思ったら大間違い。


一人ではなく集団でやって来たのであれば猶更で、装甲車両の力を借りつつ本気で殺しにかからなければ手痛いしっぺ返しを受ける。



装甲車並みの鉄板を身にまとった兵士と、分厚い鉄板を射貫く対装甲兵器たち。


これらを揃えれば装甲車を破壊することが可能となる、と言えばどれだけ脅威なのかがわかるだろうか。


また人間一人ではとても収まらない、魔導と言う名の圧倒的火力もあることを忘れてはならない。

それに敵の中核に殴りこんできたと言うことは、精鋭部隊に違いないだろう。



警察の手で負える相手ではないのは確かだ。



「社会安全軍1個連隊および陸軍第64、128装甲師団が即応待機中です」



「了解。64装甲師団から1個戦車中隊、社会安全軍から航空制圧中隊に出発命令。他は警戒態勢を維持し待機」



動ける兵士だけでも最低100人、戦車は20両もの大群が世田谷のワンルームマンションに向けられることになる。


本来であれば数千人単位のテロリストが決起しない限り送り込まれない戦力だ。

だが、今のSOYUZはそれだけの人員を投下しなくてはならないと見ていた。



「更に、空軍のUAV部隊に言って世田谷区全域を24時間態勢で警戒監視するように伝える事。何が起こるか分からん」



全てが動き始めた。







——————







神奈川県横浜市瀬谷区 某所

——SOYUZ本部拠点



【第64装甲師団・社会安全軍 航空制圧中隊に通達。補給の済んだ者は直ちに出撃せよ】



戦火の跡が生々しく残った現場に、命令が下る。

だがそれを憂いている暇はない。


世界中そのものが敵のSOYUZにとって、襲撃を受けた後の緊急出動はよくある事なのだから。


——戦車格納庫


———GRRRRRR………


戦車の社である格納庫では煌々と白い無機質な明かりが炊かれ、ずらりと並べられた車両からエンジンの唸りが木霊する。


凄まじい数以外の何者でもない量の5式中戦車が揃っているものの、それでも出動に見合うのは20両程度。


天井から眺めても終わりが見えない程の数。

だがほとんどは補給中や整備中であり、完璧に調整が済んだものは意外に数が少ない。


なおかつ制圧に使える車種で絞るとなれば、目減りするのもやむを得ないのだろう。

一両、また一両と履帯を軋ませながら夜のとばりが降りた都会へと繰り出していく。


そんなチェス盤に置かれたナイトの1つで、クルーと車長が最後のすり合わせが行われていた。



「もう一度確認しますが目標地点まで自走なんですね?」



待機命令が出ている部隊のレオパルト2A7+のなど移動は自走せず、トレーラーに積載されることが多い。

だが積載するにも時間が必要という点があるため、作戦司令官はその時間すら惜しんでいるのは言うまでもないだろう。



「トレーラーを手配している時間もないとのことだ、広告塔のT-35もあまり動けないらしい。それに目標地点はここから40キロ以内。問題ないな。———さぁ、行くぞ!」


「了解」



また1つ、都内という闇へと戦車が往く……






———————








——新潟空港 滑走路



【SOYUZ管制、Roundabout出発許可。】



【Roundabout了解】


陸でも動きがあれば、空も黙っていない。

グライダーに巨大なエクレアを付けたようなRQ-4がジェットエンジンをたなびかせて滑走路を駆け抜けていく。


このRQ-4 コールサインRoundaboutは日本海を監視する空飛ぶカメラとしての役割を担っており、常時離発着可能だった。


さらに事故を防ぐためという目的もある。


大都市東京を名乗っている以上、空も陸も大混雑しているのだから。


深夜を跨ごうとしている時間、どんな思惑で空へと向かうのか知るものはいない。



——横浜本部拠点 滑走路



無人機はあくまでも組織の目として選ばれた役者であり、殺陣を演じるのはまた別。

キャスティングされたのは基地にずらりと並んだ10機のワニ顔ヘリコプター Mi-24(ハインド)P。


丸いキャノピーは闇に反して光を帯び、パイロットはチェックリストを済ませているのが分かる。


翼下には死を撒くロケットポッドが吊り下げられ、機首についた無慈悲な30mm機関砲が

漏れ出た光で照らされ鈍鉄色を返す。



【こちらBIND01からSOYUZ管制。エンジン始動許可】



【こちらSOYUZ管制、エンジン始動せよ】



【了解】


QRRRRRRRR………VATATATA………



ひとたびスイッチを押せば、燃料を吸い上げて燃焼させた甲高い轟音と、5枚の刃が空気を切り刻む音が入り混じったそれはアンサンブルとも言えようか。


夏でも吐き出す息は白のまま、燃料の鋭い異臭が辺りに満ちる。

10機全てに燃える命が宿り、ローターの回転数がみるみるうちに高くなって機体重量に抗い始めた。


内部コンソールに照らされ鈍く光る丸いキャノピー、そしてパイロットは何も言わない。



【こちらBIND01からSOYUZ管制。チェックリスト完了。出発許可】


【こちらBIND02———】


【こちらBIND03———】


【こちらBIND04———】



投入される10機全てから離陸準備が出来た旨の連絡が届く。



【こちらSOYUZ管制。BAIND01からBAIND10各機、1機ずつ出発せよ】


【BIND01了解】



足枷は解かれた。

一気に回転を高まらせ、機体重量に負けない揚力を得たハインドたちは1つ、またひとつと浮かび上がっていく。


闇の空を高く飛び上がると、編隊を組んで世田谷へとかけていった……


空と陸から、魔の手が迫る。



次回Chapter79は10月18日10時からの公開となります。


登場兵器

レオパルト2A7+

西側規格が出回っている地域で使用される主力戦車。市街地を想定しているモデル。

どちらかというとドイツ製。日本といった西側国家地域で使用される。

生物化学兵器対策が施されているため投下されたようだ。



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