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Chapter45. Reinforcement

タイトル【増援】


4体の精鋭軍竜部隊を撃退したSoyuz。

しかしながら、あくまで彼らはブラフに過ぎなかった。




あくまでも彼らは要塞の設備を破壊ないし疲弊させることを目的としている。

仮に撃退されたとしても、役目を既に果たしている状況に他ならない。



()()()()()



そして疲弊した所にやってくるのは空挺部隊と増援の軍竜部隊「4(フォー)x(バイ)8(エイト)」。



空挺降下要員を乗せた飛竜はクレバスと要塞上空と二手に分かれ、敵地ツンダールへと迫る。


確認された数はレーダー上だけでも26。

あくまで補足されにくいクレバス内を通っている敵を含めない数であり、悪寒が止まらない。



最悪、数と質の暴力で狩られる。



パンツィリの機関砲類、T-35は砲弾などを消費させられているのは間違いない。

少しでも数を減らすべきだ。




そして敵城塞ダーノゼンを直接攻撃できる切り札。

2B1 450mm自走砲を防衛しなければならないのも事実である。



最初に動いたのは襲撃では逃げに専念していた9K330 トールMだった。

機械で出来た北欧の雷神は電波で襲い来る敵を遙か彼方、15キロ先に居ても察知。


ぐるぐると回転し続けているレーダーを尻目に、朝日で赤色に染まる空に向けてミサイルという名の柱が垂直に射出される。



———PANG!!!


発射煙など無く空中に浮いた誘導弾は一気にロケットモーターに点火。



BLaaaaaaAAAAASHHHHH!!!!!!!


明け方を彩る炎の(あかり)

弾体は爆発的な加速を受けて、みるみるうちに地上から遠ざかっていった。



まだ闇が残る空を蝋燭のように照らしながら、不規則に動きながら敵へと向かう。

まるで餌を見せられたひな鳥の如く、次々とコンテナの蓋が開いては真上へと射出されていく。


——PANG!!! PANG!!!!


搭載されている数は1コンテナ4発が2つそろって、合計8発。

いずれにしても蓋は空いたままで、次弾を撃つような素振りはない。



全て撃ちきったのだ。



「数を減らせればいいが……」



トールの指揮官の額には冷や汗が滲む。

もうこの車両は武器も何もなくなった、ただの装甲付きの自動車だ。


これがデコイでないことを祈りつつ、逃げ場のないツンダール要塞の頂で息を飲む。



—————————



——パンツィリ制御キャブ



より状況が深刻だということは、なまじ最新機器を搭載するパンツィリが察知していた。


同じ自走対空ミサイル トールに搭載されているレーダーは遮蔽物にいるような相手を発見するのに非常に苦労する。



【GAZ01。敵機発見。高度100。距離8000。数25】



欠点を克服したパンツィリの前では逃げも隠れもできない。

空中に存在するものは全て絶対的な鎧の前では生きて帰ることは不可能。



戦闘機から落下する誘導爆弾も、おもちゃのような殺戮ドローンも、ミサイルでさえ。


だが目が良いことが仇となった。



パンツィリ車長は思考を巡らせていく。

敵影が確認された高度が岩場よりも低い、つまり敵はクレバスを通っていることになる。


それはいい。

機関砲で撃墜できないとしてもミサイルで落とせば良いのだから。


数が25、搭載されているのは12発。



()()()()()()()のである。



全て撃墜することができないではないか。



トールのミサイルは全弾発射済みという報告が来ており、対空機関砲は破壊されてしまった。

30mm機関砲も残ってはいるが、弾数は1000を切ろうとしている。


毎分1000発以上を放てる半面、むしろ1分も撃ち続けたら弾切れになって死ぬ。


こうなると戦えるのはT-35だが、彼らも砲弾は完全ではない。悪くて4割、良くて6割程度しか残っていないかもしれない。



無敵ではないが強力な少数精鋭を送って敵を疲弊させる。

軍竜を使う側、自身を使徒される側。特性を生かした活用法がコレなのだろう。



待ち伏せして倒そうとしたら、敵の方が一枚上手だった。

それ以外に言いようがあるだろうか。



出張してきているSoyuzと違い、向こうが地の利を握っているということは余りにも強い。


どうするか。



車長は指示を下した。



「可能な限り、撃墜せよ」



逃げるも、死ぬのもチョイスに入っていない。




————————————






VLaaaaAASHHHH!!!!!!! VLaaaaAASHHHH!!!!!!!—————



トラックから次々と放たれる機械仕掛けのほうき星、地対空ミサイル。

ハレー彗星の如く、尾ひれを残しながら飛翔して敵を討つ。



そうして朝を迎えようとする空を、死の流星が瞬くのだ。



「敵機撃墜。敵機 数13」



全滅できれば良かったが、減らせただけ儲けもの。

12発使い切って徒労だった、そんなシナリオよりはだいぶ良いだろう。


だがドラゴンナイトや軍竜はレーダーに映りこそするが、自分からは名乗ってくれはしない。

これがファルケンシュタイン帝国を相手にするということだ。


しかし車長は諦めない。


「了解。機関砲で応戦。撃墜せよ」



残弾900。

その数字があるからこそ戦える。


さらに何も戦っているのは天面にいる車両たちだけではない。



【こちらGAZ05。地上GAZ各車、戦闘準備完了】


【SPREAD05、戦闘準備完了】



一体彼らは何者なのだろうか。


翌日引き上げることになっていた、貨物状態のままだったパンツィリやトールたちである。

騒ぎを聞きつけた各車クルーは急いでシステムを起動させて連絡を寄越した。



それに誘導弾が尽きたからといって戦意喪失するほどひ弱ではない。

ミサイル万能論の時代は終わったのだから。



すかさずレーダー手が次なる絶望を持ってきた。



「敵機補足。距離1200」


「撃て。——残弾は残しておくように」



敵の姿はまだ、見えない。




——————————



——ツンダール要塞

上空



Soyuzはドラゴンナイトを必ず叩き落してくる。前の戦争で嫌という程思い知らされたことの一つだ。


しかし、何も無限とは限らない。



撃って当たった銃弾は再利用できない、故に迎撃できるキャパシティ以上の数で殴りこんでしまえば良いのだ。


数百億円する戦闘機や爆撃機とは違い、帝国の航空戦力は恐ろしい数を用意できてしまうのだから。



兵士よりも若干高い命、それが竜騎兵。




それに残った数は30ほどで、小隊規模ではあるものの兵器を破壊しなくても作戦は務まる。

いかに強力だとしても、人間が使わねば動かないと言うことを知っているからだ。


根源的ではあるが、ゲルリッツ中佐の残した記録は最悪な形で活用されてしまった形となる。



撃墜されてしまった兵はいるものの、要塞まであと一歩まで詰め寄ったヴァンター派のドラゴンナイトたち。

もうここまで来てしまえば相手は弾切れ、そう思った矢先のことだった。



「しまった!コールがやられた!」



突如として羽を捥がれ、空中分解よろしく地面に落ちていく兵士。

爆発は一切せず、まるで強力極まりない矢にでも射抜かれたような有様ではないか。


【フレイア】


すかさず隊長騎は一気に左方向に飛竜を傾けながら降下。

機銃を警戒しつつドリフトの様な挙動を取りながら、地面に向かって火球を投射した。


もちろん射程距離外で攻撃的な意味はない。



「降下開始!」



鶴の一声で空挺部隊を投下するよう命令が下った。

ワイバーンの下腹部に固定された勇者やソーサラーが投下されていき、滑空するため脱出用グライダーを展開。



砲火に狙われないよう急降下しつつ、絶妙に着地できるよう速度を出し過ぎず。

さらには着地後の隙を産まないためにもグライダーの切り離し手順の確認を怠らない。


更には一部のドラゴンナイトも一旦失速しながら、重力に任せて恐ろしい勢いで地表へと降りていく。

目指すはツンダールの天面。


岩の迷宮に設けられた要塞に向けて、鋼鉄の雨が降る。




——————————



——パンツィリS1車内



「新たに敵機確認」


「上空、敵航空目標は無視して降下兵を狙え」



1キロ先に居た竜騎兵をあらかた叩き落しても、まだまだ片付けきれないドラゴンナイト。

加えて歩兵が空挺降下をしてきたとあれば最悪だ。


普通の兵士でも脅威だが、ファルケンシュタイン帝国軍は「()()」した兵士を送り込んでくる。


SF映画のような身体強化を施した勇者、人間砲火 ソーサラー。

それに対装甲兵器を持った竜騎兵も降りてくるだろう。


立ち向かう手段さえあれば歩兵だと一蹴できるが、奴らに太刀打ちできる武器を持っていなければ一方的に蹂躙される。



撃破することは簡単でも、消耗した後で情け容赦のない数攻め。

そんな神も見捨てかねない地獄に一報が届く。


【ツンダール各員。こちらCaimaninae01。現在急行中】


【こちらTONK01、そちらの機体は】


【Su-35だ。4機でそちらに向かう】


ようやく出撃することができたのはスクランブルしてきたSu-35。

歩兵積載可能なハインドではないということは、恐らく増員は不可能。火力支援だけになるか。


だが貴重な戦力、縋れる藁があるだけ有情である。



急げ、このままではツンダールは危うい。




—————————




——要塞司令室



一連の騒動を受けて、要塞の主であるベーンも黙ってはいなかった。

立ち向かう事が出来る軍竜を除く兵員を収容完了、だが自陣を好き勝手にされていて黙っていられるだろうか。



彼とてヴァンターがどう踏んでくるのかは知っていたし、討ち取る覚悟だって出来ている。




だが心の中の支えが無い訳ではない。

お互い、かつては1つの反政府勢力だった。


SOYUZとの戦争は終わり、かつてのように軍人は捨てられるかもしれない、そのために立ち上がったのが自分達である。



ベーン当人や部下や同僚を守るために剣先を神々に突きつけた。

残酷なことに、そんなかつての同志が襲ってきている。



しかもSoyuzのみならずベーンについてきた者全てを抹殺するために。


今のヴァンター大佐は敵だ。

テロリストにまで身を堕として、異端と手を組んでもなお付いてきた部下たちを無残に殺される訳にはいかない。



彼は司令となって、伝声管を通じて各方面に指示を出した。



「出撃可能な重装兵は直ちに出撃、展開急げ。ソーサラーは火力援護。敵迎撃と昇降機防衛に向かえ。

天面昇降機は竜騎士を優先し、8騎出撃完了時点で軍竜出撃用意」



ツンダールとダーノゼン、双方構造はよく似ている。


ならば狙うのはエレベーター。

敵司令官となってみた時に、強力な増援を出さないよう優先して破壊するからだ。



あえてここで軍竜ではなく、ドラゴンナイトを出したのには訳がある。

軍竜は待ち伏せ攻撃に非常に弱い。



とりわけ昇降機など狙い撃ってくれと言っているようなものだ。

しかし使わねば宝の持ち腐れに他ならない。



ここで出すのは対装甲兵器を持ち、軍竜に匹敵する機動力を持つ竜騎士となる。

ソーサラーの放つ火炎にも強く、勇者の剣などでは太刀打ちできない味方となってくれるだろう。



「私含む超重歩兵は昇降機防衛に向かい、陣頭指揮を執る」


「——親方様自らですか!?」


「うむ。ヴァンターはどうやら私をご指名のようだからな。——注意を引き付けている合間に敵を討て!」


「了解、昇降機始動!」



戦況は生き物だ。


刻一刻と変わっているのだから。

果たして、どうなるか。

次回Chapter46は3月1日10時からの公開となります。


登場兵器

・Su-35

SOYUZの保有する戦闘機。第四世代よりも上の、正真正銘 「本気」の機体。

ファルケンシュタインに押し入った時から、緊急時に備えて配備されていた。

現代的なアビオニクス、多用途に応える豊富な武装はファンタジーを圧倒する。

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