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Chapter4. Looming Threat: China

タイトル【迫りくる脅威 中国】



世界中を揺るがした異世界をめぐる騒動。



ある国は叫び、ある国は喚く。

しかしそれでも、異様なまでに沈黙を保っていた場所が1つだけあった。




日本に近い外国で、貪欲な瓶こと中華人民共和国である。



興味がないから黙り込んでいたという訳ではなく、むしろその逆。



喉から手が出る程に欲しくて欲しくて堪らないからこそであり、あえて仏頂面のようにふるまうことで、中国は脅威にならないと油断させるためだ。




借りてきた虎という言葉が最もふさわしい。



世界規模の劇団的な演技をしてまで欲しがる理由は極めて簡単。



中国の目まぐるしい発展に陰りが出始め、それどころか坂を転げ始めている状態に他ならない。



祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

盛者必衰の理を現してしまった、ならば焦るのだって無理はないだろう。



その本部である共産党本部では密会談が行われていた。






—————————




——中国共産党本部




国の中枢で話し合われていた議題は異世界の入り口は一体どこにあるのか、いうこと。

非公開情報ではあるが、自分たちの国の近くにあったら利益を独占できるのは言うまでもない。



「それで。我々の軍部がついに入り口を見つけた、と?」



「ええ、偵察衛星で発見しました。確定ではありませんが。かなりきな臭い箇所ではあります」



21世紀が過ぎた今、中国のような大国が偵察衛星を持っているは当たり前となっている。

なんせSoyuzも保有している位であり、持っていない方が不自然か。



「これが以前までの写真。2019年頃の北極海ですが、まだ何も設置されていません」



「ほう」



これだけ極寒で資源調査も手付かずだった。



かつては。



資源の有無があるか分からないような場所を、悪戯小僧よろしく採掘するほどの余裕がある国も組織もいない。



だからこそ自然が保持されていた訳だが、ここで様子が一変する。



「……こちらが2020年になってからの写真になります」



「何か建造されているな……それに軍艦もいるようだ」



説明する男が提示した新たな写真。

そこには何か洋上プラントのようなものが建てられており、周りにはちらほらと軍艦がいるではないか。



こんな何もない極地の海に、何故5隻も寄ってたかる必要があるのだろうか。



不自然極まりない。



「映っている艦ですがまずはロシア船籍のものはウダロイⅡ級駆逐艦、ゴルシコフ級フリゲート。

Soyuz所属の艦はアラスカ級大型巡洋艦 サウスパーク。大和型戦艦 赤穂」




「それに加え、信濃型空母 北海まで確認されています」



戦艦1・駆逐2・フリゲートが2。空母に関しては2隻もおり、どこかと艦隊戦でもはじめと言う布陣だ。



そんな強大な戦力がどういう訳か「価値がない洋上に」配置されている。



「Soyuzとロシアとの関係は蜜月というが、ここは資源があるわけでもあるまい。

あったとしても過剰すぎる。確かに怪しい。一体ここまでして防衛したいものは何か……」



資源を守るのであれば軽い武装を積んだような巡視艇などで十分であるし、もうどこかと戦争を始めるような船は必要ない。



男の言う通り、そのような戦力を投下してまでも守りたいものがある、これは確かだろう。



Soyuzが本腰を入れて守るべきもの。

そんなの一つしかなかった。



「……我々はこれを異次元の入り口だと睨んでおります」



つい最近発見されたという異世界への入り口。



非公開にしているというからには、当然相応の価値があるということ。

取り合いにならないために目隠しをしているのだろう。




しかし憎きSoyuzに利益を独占される訳にはいかない、なぜなら中国こそ世界の中心に相応しいからだ。

どこかの傭兵崩れが集まった組織ではなく、統治されるのはわが国が相応しい、と。



だが目先にニンジンを出されても、この男はひたすら冷徹に徹する。



「根拠を出してもらいたい」



軍事機密だったにせよ、ポータルへの入り口というのには相応の根拠が必要。

大国はスナック感覚で動けるほど腰は軽くないのだ。



「調べたところ、此処はロシアの採掘プラントとなっていました。設備はありますが、稼働しているとは言い難く。さらにこの海域は氷で覆われるため砕氷船が頻繁に往来しているのですが……」



「ロシア原子力砕氷船アトムフロートではないのです」



海も凍てつく極寒の北極海では、船を進めるためには氷を砕かなくてはならない。

分かりやすいものと言えば、南極探査船のアレである。



いわば誰も使わないような辺境の道路を常に雪かきしているようなもの。



一体なんのために。



「画像で確認されたのはSoyuz保有の同じく原子力砕氷船 サヴィエツキー・パベードゥイとレヴァリューツィアの二隻。周囲の海氷状況から最低一隻以上が航路を維持している模様です」



ますます不可思議な要素が積み重ねられていく。



普段航行するロシアではない、いわばよそ者が何故ここまで躍起になるのか。



「例の異次元に通じる場所にせよ、そうでないにせよ。Soyuzの数少ない弱みを握ることができる。『調査』の必要性を認めよう」



自分の言う事を聞かないような軍事組織。

見返りを貰えるならば国家転覆ですらいとわない集団は紛れもない脅威だ。



これでも厄介だが、世界中に根を張らせ自分たちが排斥されないようにされている。

中国からすれば畑一面に生える、除草剤も効かない毒のある雑草か。



「ありがとうございます、ではこちらの方で広報の方も打たせていただいてもよろしいでしょうか」



「うむ」



思惑は誰も見聞きすることができない、深いヴェールに覆われつつ確実に動き始めていているのだった……

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